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『吉田松陰、令和を動かす』  作者: 長州萩人
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プロローグ:時を超える鼓動

萩の街を覆う闇は、いつもより深かった。


山口操は古びた木造校舎の職員室で、ノートパソコンの青白い光に照らされながら、明日の授業準備に没頭していた。歴史の教師として十五年、彼女は常々思っていた。現代の若者たちに、かつての志士たちの生き様をどう伝えればいいのか、と。


「今日も遅くまでお疲れさまです」

守衛の佐々木さんが声をかけてきた。操は時計を見て驚いた。すでに午後十時を回っている。


「ああ、ありがとうございます。もう少しで終わりますので」


送り出した今年の卒業生たちの言葉が、まだ耳に残っていた。

「先生、僕たち、これからどうすればいいんですか?」

「日本って、このままでいいんでしょうか?」


答えを持ち合わせない自分が、もどかしかった。


パソコンを閉じ、操は松下村塾跡地まで寄り道することにした。いつもの習慣だった。塾跡地には不思議と心が落ち着く何かがあった。特に、今夜のように月明かりに照らされる静寂の中では。



文久二年十月二十七日(1862年)、江戸・小伝馬町の牢屋敷。

早朝の薄暗がりの中、吉田松陰は静かに目を閉じていた。


「では、参るか」

松陰は穏やかな声で告げた。その表情には、奇妙な安らぎさえ浮かんでいた。


処刑の刻限が近づく。しかし、松陰の心に迷いはなかった。むしろ、まだ見ぬ未来への強い思いが、胸の内に渦巻いていた。


「志、まだ果てず...」


刑場に据えられた松陰の首に、刃が振り下ろされる─

その瞬間、突如として紫電のような光が天から降り注ぎ、大地が鳴動した。刑場にいた者たちが驚きの声を上げる中、松陰の身体が眩い光に包まれた。そして、その光と共に、何かが未来へと飛び散ったかのように─



「山口先生、これ、見てください」


萩市立図書館の司書から連絡を受けたのは、一週間前のことだった。

2024年の歴史資料調査で発見された古文書。そこには、松陰の処刑時に起きた不可解な現象の記録が残されていた。


複数の目撃者が記した同様の証言。天からの紫電、大地の震動、そして処刑直後に周辺で観測された羅針盤の異常。これらの記録は、これまで歴史家の注目を集めることはなかった。


しかし、最近の研究では、安政の大地震以降、関東地域で観測された特異な地磁気の変動が、処刑時まで継続していた可能性が指摘されていた。特に小伝馬町付近での強い磁気異常の存在が、新たな史料から明らかになってきていた。


操は古文書のコピーを手に、月明かりに照らされた塾跡を見つめた。その時、遠くで雷鳴が響き始めた。

蒼い炎 〜新しい時代へ〜

https://suno.com/song/fe63684d-8e90-43da-87bf-e6997a1f7571

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