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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺の事が嫌いな婚約者に、裏で暗躍しているのがバレてしまった件について。

作者: 蜂乃巣


俺のことが嫌いな婚約者に、裏で暗躍してる事がバレてしまいました。


「あの...こっち見ないでくれません?」


金木犀を模したかの様に、黄金色に輝く髪をかき上げて、彼女は言う。


「何で、黙ってるんですか?」


端正な顔立ちが勿体なくなる程の顰めっ面で俺を見る金色の瞳は、まるで害虫を見るかの様に冷たい。


「あっ、いや。あのっ。」


「...ちゃんと喋って下さい。」


...ぶん殴ってやりたいが、仕方がない。

これが表の俺なのだから。


何を言われても我慢しなければいけないのだ。

俺の目標のために。


「...帰りますッ。」


「あうっ、、、。」


バタンッ


ありがとうございます。

そう心の中で感謝の言葉を吐きながら、近くにあった鏡を手に取り自分の顔を見る。


「別に不細工ではないと思うんだけどなぁ。」


客観的にみて中の中といった所だろう。

話し方もモブのそれだ。

それなのに、彼女は何故あんなにも俺のことを嫌うのだろうか。


「はぁ、、、。」


「私とアンタは釣り合ってないのよっ」とでも言ってくれれば良いのだが、、、。


いつからあんなに嫌われ出したのだろうか。


「んー、あー。」


多分あの時からだ。


ーーーーーーーーーーーー


俺と彼女...セルン・ノーマは、12歳の時に婚約者になった。

12歳という歳で婚約関係になった、というのは貴族の中でも異例の速さだ。


何故こんなにも、異例の速さで婚約を結んだのかというと、公爵家の俺の父と伯爵家のセルンの父が発端だった。


2人は昔の戦争で肩を合わせて戦った戦友で有り、親友でもある。

その俺達が子供の頃からこの婚約の事は計画していた様だ。


そうして婚約関係になり、12歳の春、俺達は対面することになる。


「初めまして、ルカ・ハイル様。私、セルン・ノーマと申します。」


初めて彼女を見た時、俺の中で何かが芽生えた気がしたのだが、今はもう思い出せない。

だが、とてつもなく可愛かった、というのだけは覚えている。


それから、俺達は婚約者として一緒に時間を過ごしていった。


最初はその美貌からか、お堅いお嬢様だと思っていたが、案外ノリが良く段々と気が置けない関係になっていった。


だが、そんな関係に亀裂の入る事件が起こる。

あれは、王都へと一緒に買い物に行った時だった。


街中を2人で歩いていると、人混みの中で突然俺だけが人のいない路地裏に突き飛ばされた。


「グァッ。」


「ルカ様?!」


それをみたセルンは驚いた様子で急いで俺の方へ駆け寄るが、それ自体が敵の罠だった。


「クハァッ。良いのが釣れたな。兄貴ぃ。」


「あぁ。」


2人のイカつい男達が、俺ではなくセルンを見ながら呟く。


「貴方達!この方が誰だが分かっているの?!」


「あぁん?誰だよ、嬢ちゃん。」


「ッ!ハイル公爵家、ルカ・ハイル様よ?!」


公爵家という言葉に、一瞬男達の動きが止まる、、、が。


「んー、知らんな。」


「キャッ!」


男がセルンに向かって、拳を上げようとする。

が、俺が間一髪の所でセルンの前に出て拳を手で止める。


ふっ、決まったぜ。

と思ったのも束の間、左ハイに蹴りをくらった。


「グヘェッ。」


別に痛くはなかったが、痛いフリをしておく。

、、、本当は意識が何秒か飛んでいたが。


「ルカ様!!」


セルンが俺の所に向かって走ろうとするが、もう一人の男が腕ごとセルンの動きを拘束する。


「離してッ!」


「ッア!」


男はセルンに向かって、罵声を浴びせるが、セルンはそれに怯まず、男の手を噛んで拘束から抜け出そうとする。


「このクソ女ッ!!」


パチンッ


男の平手が、セルンの頬を赤く染める。


「アッ...。」


脳震盪を起こしたのか、セルンは地面に蹲って動こうとしない。


「や、、、め、て。」


「グヘッ」


男はそれを好機と見たのか、セルンの服を破って、上半身を露わにした。


「や、、ぁ、、、。」


「おい、兄貴。こりゃあ逸材じゃねーか。高く売れるぞォ。」


「あぁ、、、。ヒヒッ。」


このまま気絶したフリをして難を逃れようとしたが、話を聞く限りコイツらは人身売買が目的らしい。

どっちにしろ俺達は無事では済まないだろう。


「...。」


俺の目標の為に、俺が殴られて済むのなら穏便に終わらせようと思ったが、セルンも殴られたのだ。


穏便に終わらせられる程、俺の器は大きくはない。


「おい。」


「あぁ??おい、ハジ。てめぇ、ちゃんと気絶させとけや!」


「ごめん、兄さん。」


男達の言葉が耳に入らないくらい、俺の頭は怒りで埋め尽くされていた。


「...。」


男達の視線が俺を向いてない内に、俺は俺を殴ってきた男のアソコに向かって、思いっきり蹴りをかます。


「アァ"ッ?!」


男は痛みのあまり、地面に這いつくばる様に倒れ込む。


「てんめぇ!よくも弟をッ!!」


「...。」


男の大振りなパンチに、タイミングを合わせて顎にカウンターを入れる。


「アッ!」


胴体がガラ空きになった。

ゆるゆるのガードの隙間、レバーにブローを打つ。


「グァッ!」


男もまた地面に倒れ込む。

兄弟揃って同じ倒れ方とは、クズ同士、良い倒れ方をする。


「おい、大丈夫か!セルンッ!」


「ルカ様...。」


良かった、意識が戻った様だ。

、、、いや、待てよ。

あの一部始終を見られてしまったのか?

マズイ。それはマズイ。


俺の目標に支障が、、、。


「な、何故。それが...。」


「はっ?!」


セルンの意味の分からない言動に一瞬、脳がフリーズする。

見られたのか。見られてしまったのか、、、。


「な、何が。」


「そ、それ。」


セルンが怯えながら、指差したのは、俺のアレだ。

ーー息子だ。


「いや、あの。これは違ってだな?あれだ。あの、そうあれだよ。」


「、、、気持ち悪い。」


そう、ここから俺に対するセルンの態度は急変してしまった。

別に興奮していた訳ではないのに、何故だ。

息子よ。


ーーーーーーーー


と、色々あったが、今考えればあの態度は妥当だといえる。


「はぁ...俺のせいだよなぁ。」


まぁ、あの一部始終を見られていなかっただけマシだと思おう。

もしも、見られていたら、、、俺が「モブではない」という事が知られてしまう。


ダメだ、それだけは。

俺の最終的に目指すのは圧倒的な「最強モブ」なのだ。

目立たず、普通の生活を送りたい。

それがルカ・ハイルとしての目標なのだ。


公爵家という看板が邪魔で邪魔で仕方がないが、俺がもっとモブを極められればそんなのは関係...あるが、まぁ大丈夫だろう。


「ふぅ...。」


表の顔がルカ・ハイルとするなら裏の顔は何か?

最強モブというのは、最強のモブではない。

最も強いモブなのだ。


俺はベッド下の隠し床にある、衣装を取り出す。


「よし、行くか!」


これが俺の日課だ。


ーーーーーーーー


「やめてッ!!」


「やめるかよぉッ!」


女1人に、男4人。

また人身売買絡みだろうか。


この夜の王都は、犯罪が多い。

これもまた王都の日常だといえる。


それにしても、どうやら犯罪者は路地裏が好きな様だ。


「グァッ!」


「な、なんだ?!」


女性に襲い掛かろうとしていた男の顎に思い切り蹴りを喰らわす。


「はぁ?!なんだお前ッ!!」


「フッ。名はない。i.am.ノーネーム、、、だ。」


「何を言ってんだ、お前ッ!」


そう言って俺の方に向かってナイフで襲い掛かってくる男達は、全員鈍かった。


順番に襲い掛かってくる為、その順番通りに戦闘不能にしてやる。


「グハァッ!」


「グェッ!」


「グカッ!」


まるでズッコケ三銃士の様に横たわる男達を他所に襲われていた女性に話しかける。


「大丈夫...か?」


「は、はい。貴方は...。」


「私の名前は、ノーネムだッ。」


「そ、そうですか...。助けて下さりありがとうございます。そ、それでは。」


「あぁ。気をつけたまえ。」


本当にこれで良いのだろうか。

倒れ込む男達を眺めながら、頭の中で自問自答を繰り返す。


これで本当に強くなれるのか。

唯の痛い厨二病ヒーローじゃないか。


考える度に、萎えてきた。

もう帰ろう。


丁度良い所にあった椅子から立ち上がろうとした瞬間だった。


「貴方ッ!!これは犯罪ですよッ!」


見知った少女の声。

まるで鈴の音の様な声質の中にある凛とした強さ。

この声は...。


ーーセルンだ。


「ふはっはっは!我が名はノーネム。名などない!」


何を言っているのだろうか。

焦りすぎて自分が何を言っているのかすら分からない。


「何を言っているんですかっ!それよりもその人達から離れなさい!」


コイツら犯罪者ですよ?と言ってやりたかったが、この状況では俺が悪でコイツらが被害者なのだ。


「はぁ...。」


ため息を吐きながら、立ち上がった瞬間だった。

男の服に足を取られて、視界が一気に地面と近くなる。


「グヘェッ」


恥ずかしい。

あれだけカッコつけたのに、、、。


ふとセルンの顔を見てしまった。

何故だろうか?


本能か、羞恥心か。

ただ一つわかるのはこの行動が失敗だったという事だ。


「えっ?!ルカ...様?!」


「ふぇっ??」


俺の顔を覆っていた仮面は、目の前で半分に割れていた。

好評だったら、続編書こうと思います!!

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