9話
集会所に入るなり問答無用で暴れ20人ほどの人間を戦闘不能にしたヒロムとクロト。ヒロムが死獅王に関してスーツの男を倒れさせ強引に聞き出そうとしているとそれを邪魔するかのようにボサボサの黒髪の少年がこの状況下で肉を口にしながら話に入ろうとし、突然の少年の言葉にヒロムが素性を探ろうとすると何故かクロトが驚いたような反応を見せていた。
「質問、何故ここにいる?」
「んん?おっ、クロトじゃん。お久ッスね」
クロトの反応、対する少年の久しぶりという言い方からヒロムは2人に面識がある事と何やら因縁があるという事を理解し、ヒロムは詳しく事情を聞こうとクロトに尋ね彼の口から少年について聞こうとした。
「クロト、コイツとは知り合いか?」
「訂正、知り合いというレベルでは無い。名は羅国キラ、オレが《一条》で鍛錬を受けている頃に《一条》が監視のために連れて来た元賞金稼ぎだ」
「《一条》の人間ってことか?」
「修正、コイツは《一条》の監視の下で指導を受けた後で情報収集を任命されるも命令無視が多くて厄介者扱いされていた無法者だ。何なら素性が最悪だ」
「素性が最悪?」
「最悪、コイツは賞金稼ぎとして賞金首を捕らえる際に能力を用いて廃人寸前まで疲弊させるまで楽しんだ後で引渡し、情報屋相手に対してもまともな情報を出さなきゃ監禁して痛めつける非道な男だ」
「失礼だな……賞金首を確実に戦意喪失させて金を渡してもらわなきゃ悪人撲滅にならないだろ?情報屋に関しても情報の質と金額が見合わない場合に関しては身の程弁えさせるために躾てただけだ」
「非道、躾というのは生活に支障が出るほどのトラウマを植え付ける事なのか?ある情報屋は光を見るだけで嘔吐し、ある情報屋は水を見るだけで殺して欲しいと繰り返すような状態になっている」
「……性格に難アリ、どころか人間性に問題アリってか」
「心外だねぇ、姫神ヒロム。アンタにそんな風に言われると傷つくな」
「オレのことは当然知ってるのか。というか、いつの間にここにいた?あんだけオレとクロトで暴れたってのにどうやって……
「気配を殺して標的に迫る……賞金稼ぎの基本ッスから。それにここに来たのはたまたまッスよ?」
「たまたま?」
「ん。実は少し前から鬼桜葉王から無認可の集会所をいくつか回って死獅王って野郎の情報を集めるように言われててね。単独行動を許可されて調べてみるも名前以外のまともな情報が手に入らなくてお手上げ状態……だったのにアンタが死獅王について調べ始めたって聞いてどこに行くか調べようと思ってここに寄ってみたら偶然会えたって話」
「……鬼桜葉王が情報収集を依頼してたのか?」
(こんなやべぇのがアイツの言ってた支援……なわけないよな。コイツの感じからして多分オレに関して何か言われた雰囲気は無い。多分、オレが死獅王追跡を断った時の保険として念の為に動かしたのがコイツだったってだけだろうな)
「それで?オレに会ってどうするつもりだったんだ?」
クロトの話を受け少年……羅国キラの異常性を知らされたヒロムは彼について詳しく知るべく話を聞く中で彼の行動について鬼桜葉王の命令が関与してることを知りその命令した裏にあるものを予測し、ある程度の可能性を見出したヒロムは羅国キラに自分に会ってどうするつもりだったのかを尋ね、ヒロムにそれを尋ねられた羅国キラは嬉しそうに指を鳴らすとヒロムに近づくなり彼とクロトが考えもしない理由を明かし始めた。
「あの最強の《一条》の臣下を務める鬼桜葉王が何かと贔屓するアンタに興味があってね。アンタの活躍は耳にしてるし、場合によっては一緒に行動して死獅王に関して調べた方が効率良さそうだと思ったのさ。まっ、アンタといたら面倒な報告もしなくて済みそうだし、アンタに直接伝えて死獅王を仕留めてくれるならオレの仕事も早々に終わることになるから好都合なわけ」
「……なるほど、イカれた野郎だ」
(あくまで動機は自分のため、オレが葉王の依頼を受けたって話をどうやって知ったはさておいてオレの事を利用出来ると判断してアテにして来たってわけか。しかも利用する動機も葉王の役に立つとかじゃなくてあくまで自分が楽をするためと来た。でも……)
「例えばだが羅国キラ。オレが死獅王を倒してやる代わりにオレの手足となって情報を集めろと頼んだらどうする?」
「断る理由はないッスね。利害が一致する取引ってことで受ける他ない……けど、従う理由も無いッスよね?今の話はあくまでオレが楽に仕事を終えたいって点の解決とアンタの引き受けた死獅王撃破の効のための捜索が噛み合ってるってくらいの話であってアンタに対して興味があるだけのオレが手を貸すだけのメリットは無いッスよね?」
「ああ、利害の一致以外にオマエに得は無いな」
「不服、こんな男と取引するだけ無駄だヒロム。コイツを相手にしても何の得にも……
「落ち着けクロト。損得勘定で進めるからまとまらねぇんだよ」
(そう、コイツはバカじゃない。だからこそこっちも賢く立ち回らなきゃならない。オレが集会所に来たのはあくまで情報収集と『アレ』だ。ここにいる能無し共が適さないのなら……)
「羅国キラ、簡単な取引をしよう」
「取引?」
「あぁ、取引内容は……」
羅国キラ相手に話をする中でこれ以上話す意味もないと反対するクロトとは異なり何かを見出したヒロムは彼に取引を持ち掛けようとした。羅国キラが反応しヒロムがまさに取引内容について話そうとしたその時、ヒロムたちの話を邪魔するかのように建物の入口が爆破され、さらに無数の爆弾がヒロムたちのもとへ飛来してきて一斉に爆発を始める。
「っ……!!」
「敵襲!?ヒロム!!」
「あっ、マジスか……」
突然の爆発と爆弾の飛来にヒロムとクロト、羅国キラの反応が遅れてしまい爆弾が無情にも爆発して3人を飲み込んでしまい……