8話
集会所、そう呼ばれるとされる場所に到着するなり扉を乱暴に蹴り開け中に入ったヒロムを歓迎していないであろう20人ほどの男女はそれぞれが持ち歩いているとされる武器に手を伸ばしいつでも構えられるように彼を睨んでいた。
武器を取れるように警戒する男女の視線に臆する所かヒロムはそんなものに興味が無いのか見向きすることも無く奥に進もうとし、ヒロムがクロトと中に進んでいくと男女たちがいるテーブルから先、つまりはこの建物の奥に酒を並べた棚を背に設けるようにしてバーカウンターと思われるものの奥に立つスーツの男がヒロムとクロトに冷たい視線を向けながら低い声で尋ねた。
「……アンタら、何の用だ?」
「死獅王に関する情報を持つやつを探してる。アンタが持ってるなら全て寄越せ、持ってないなら持ってそうなバカを教えろ」
「無作法にも程があるな。そんな態度じゃ客として歓迎は出来ないな」
「歓迎される気は無い。用が済めばここを去るし協力しないようなら半殺しにして用件を済ませて帰るだけだ。善人が正しく納税したものを搾取して懐に隠す生活を続けたいのなら……大人しく従え」
「……ここを無認可の違法な集会所と言いたいのか?」
「不満があるのなら警察呼んでやろうか?こっちは集会所の暗黙の了解を破る気で話してるんだ、支援する側の政府の犬である警察呼べば味方になってくれるだろ?オマエらがまともな生活してる側の人間なら、な」
「貴様……!!」
「おい、ガキ。テメェ、ナメてんのか?」
スーツの男に対して高圧的な態度で脅すような言葉を口にするヒロムに相手は怒りを見せ始め、スーツの男に対してのヒロムの態度が気に入らなかったらしい1人の大男が棍棒を片手に後ろからヒロムに乱暴に話しかけようとした。
「さっきから黙ってりゃ偉そうな態度で話しやがって……ここがどこか分かってんのか?ガキが調子乗るための場所じゃねぇんだ、失せな」
「デカイのは図体だけにしとけゴリラ。筋肉だけで出来てるようなオマエ程度の相手をする気は無い」
「あ?こちとら賞金稼ぎとしての腕があんだよ。何者か知らねぇが殺すぞ?」
「そうか、ここにいる馬鹿共はオレを知らないのか。なら……好都合だ」
大男の言葉から彼だけでなくスーツの男も自身が誰なのか認知していないことを察したヒロムは不敵な笑みを浮かべるなり大男の方を向いて近づこうと1歩踏み出し、突然ヒロムが振り向いたことにより大男が警戒して棍棒を構えようとしたその瞬間……大男は強い衝撃に襲われて吹き飛ばされ、ヒロムの姿が消えると大男が吹き飛ばされた先へ彼は現れ、そしてヒロムは飛んできた大男に追撃を加えるかのように踵落としが放って相手の頭を床に叩きつけめり込ませ仕留めてみせた。
ヒロムが振り向いてから大男が沈むまでに1分もかかっていない。体感としては10秒程度しか無かった一瞬の事に警戒して武器を取ろうとしていた男女のほとんどが動けなくなり、ヒロムは仕留めた大男から棍棒を奪い取ると乱暴に振り回しながらスーツの男のもとへ近づこうと歩き始めた。
「ひ、ひぃ……!!」
「んだよ……この程度のことでビビったのか?情けねぇな……全員能無し、役不足。クロト、来る場所間違えたな」
「残念、期待外れもいいところだ。無法地帯と化した集会所と聞いて少し期待してみたがこの程度か」
「んだと……!!」
「ガキ共が、調子に乗んな!!」
ヒロムの言葉に感化されたのかクロトもガッカリした様子で彼らを侮蔑するような言葉を口にし、大男が倒される瞬間を見せられた男女もクロトの言葉には流石に我慢ならなかったのか武器を構えるとヒロムたちに襲いかかろうとした。
「……クロト、半殺しで止めるなら好きにしていい」
「快諾……少し暴れる」
棍棒を握り直したヒロムは自分を仕留めようと近づいてきた男の顔を強く殴って昏倒させながらクロトに指示を出し、ヒロムの指示を受けたクロトは嬉しそうに応じると短剣を取り出して構え、そして……
短剣を構えたクロトは何の前触れも無しに姿を消し、クロトが消えると同時にヒロムを仕留めようとする男女のそばを風が吹き抜け、クロトが音もなく姿を見せると男女の数人の腕や足が何かに斬られたかのように負傷し血を流しながら倒れ、さらに数人は太腿を何度も刺されたかのような傷を負い流血しながら倒れてしまう。
倒れた男女の苦痛による悲鳴が響く中で1人の男がクロトを仕留めようと彼に迫るもクロトは短剣を構えると同時に男の両肩を素早く刺し、両肩を刺されても倒れない男にクロトは短剣を素早く振るように斬りかかると男の片腕を切断してみせ相手を苦痛で悶えさせた。
次々とクロトが相手を仕留めていく中でヒロムは棍棒を乱暴に振り回しながら1人2人と次々に殴り昏倒させ、倒れた男女の1人が拳銃を落とすとヒロムはそれを拾うと同時に迫って来る男の顔に棍棒を投げてぶつけ、そして拾った拳銃を構えたヒロムは自身を仕留めようと武器を構え向かってくる女に狙いを定めると彼女の腹に弾丸を数発撃ち込んで有無を言わずに倒れさせ、ヒロムはすかさず別の女へと迫ると拳銃の銃身を彼女の口の中へ突っ込んでみせると素早く顎を下から殴り、口に鉄塊を入れられたも同然の中で殴られた女の顎の骨が何やら砕ける音が聞こえると女はそのまま何も無く倒れてしまう。
「制圧、他愛もない」
「あとは1人か」
時を同じくしてクロトが他の人間を短剣で仕留め、20人ほどの男女の全員を戦闘不能にした事を視認したヒロムは一瞬でスーツの男の前へ移動すると彼の顔面を殴って地に倒れさせ、そして男の顔を踏みつけるように足を乗せると忠告ついでち質問をした。
「五体満足で明日を迎えたいなら答えろ。死獅王について知ってる事を話せ」
「ぐ、ぐっ……小僧のくせに……
「ナメられたまんまだと何聞いても無駄ッスよ。こういう無法地帯にいるようなヤツらは四肢欠損くらいさせないと吐かないッスからね」
ヒロムが死獅王について聞き出そうとスーツの男を踏む足に力を入れようとした時、何やら声がし、声のした方をヒロムとクロトが見るとその方向にはボサボサの黒髪の少年がこの状況の中で呑気に肉を食べていた。
「何だオマエ?」
「ん?オレ?オレは……
「疑問、何故ここにいる?」
得体の知れない少年、彼が何者か探ろうとヒロムが問い少年が答えようとするとクロトが驚いたような反応を見せ……