71話
ヒロムとレイガ、2人の発した言葉を受けた死獅王は何故か激しい動揺を見せ、その反応がこれまでを踏まえて考えると明らかにおかしいと感じるしかないヒロムたちが不自然に感じている中でどこからか声がし、ヒロムたちがどこから声が聞こえてくるのかと周囲に声の主がいないかを探そうとすると研究施設の方から先程聞こえてきた声がもう一度聞こえてきた。
『やってくれたな姫神ヒロム。まさか1度ならず2度も邪魔されるとは思いもしなかった』
「その声は……パラディン!!
まさかずっと……」
『そうだ、私だ。まぁ、この時点で察しのいいキミなら気づいていると思うが私はずっと中から観覧させてもらっていたよそれにしてもやってくれた姫神ヒロム。まさか死獅王……いや、獅天の封じておいた記憶を呼び覚ますような真似をしてくれるとはあまりに余計すぎる』
「封じておいた記憶……!?」
「パラディン……今のは、どういう意味だ!?」
声の主……パラディンはヒロムの言動に対して迷惑だと言いたげな発言をし、その中でパラディンが何やら気になる旨の発言をした事でヒロム同様に死獅王が反応を見せ、言葉の真意を確認したい死獅王はパラディンに問うような発言をし、死獅王がその発言をする事を想定していたかのようにパラディンは笑い声を流し、そしてパラディンは暫く笑った後に死獅王に向けて恐ろしい発言をしてみせた。
『言葉通りだ死獅王、キミの記憶は私が改竄しておいたのだよ』
「なん……だと?」
「驚愕、レイガの時のように死獅王の記憶まで……」
『レイガの記憶は現実逃避から成るショック的なものに私が手を加えたもの、それとこれは別物だ。死獅王……キミの記憶はその名を名乗り始める以前から改竄された虚構なのだよ』
「虚……構……?」
「死獅王の記憶が……全て、嘘……?」
「疑惑!!そんな都合のいい話があるはずが無い!!
レイガの記憶だけでなく死獅王の記憶までオマエの都合のいいように変えられていたなんてありえない!!」
「そもそも記憶改竄なんてできる能力があるってのか?」
『姫神ヒロム、それは誤解している。私は能力としての力を使ってはいない。彼らの記憶改竄はあくまで副作用だよ』
「副作用……ってまさか、永楽寺院の跡地の地下にあったアレは……!?」
「驚愕、レイガと死獅王はあの地下で研究対象にされていたのか!?」
『正確にはあそこはレイガと死獅王を完成させるために使っていた地下施設ですよ。全ては私の計画のため、そのため2人にあらゆる研究を試していたのです』
「オレが……裏切り者と同じ、研究対象にされていた被検体……!?」
「どういう、事だ……どういう事だパラディン!!
オレたちは一体、何のためにオマエに利用されたんだ!!」
『全ては姫神ヒロムを凌駕する完璧な戦士の完成のため、そして十神アルトが《八神》の技術者に設計させたギア・システムの最高傑作を扱わせるため。そのために私は産まれながらに能力の存在そのものが幻とされている力を得たレイガと獅天……現在の死獅王に目をつけた。2人とも優れた能力と身体能力を持っていたし体術のセンスも高くてね、私は良い人材を手に入れたと思っていたんだ』
「オマエ……コイツらの事を何だと思ってやがる!!」
『彼らは単なる実験台、全てはこの国を支配し世界をも手に入れるという願望の成就のための贄だ。そして……彼らこそが姫神ヒロムや数多の能力者を蹂躙しこの世界に戦乱を呼び起こす革命の象徴となるのだよ』
「疑問……そもそもどうしてそこまでしてヒロムに拘る?」
『私の求める理想系に達してるのが彼だから、単純にそれだけだ。私は肉体的部分で最強を謳える戦士が発動する能力は数多の能力者の存在と常識を覆し今の次元から数段も飛躍した高次元の存在になれると考えている。その考えを生まれながらに体現しようとしているのがそこにいる姫神ヒロムなのだよ』
「ふざけたことを……!!」
『私のこの発想と好奇心を刺激したのはキミだ姫神ヒロム。恨むのなら自分を恨みたまえ……キミが生まれさえしなければ彼らの人生は壊されなかったのだからな』
「外道、自分勝手な事を……!!」
『何があってもオレのせいにしたいらしいが……そんなふざけたことを許すやつがこの世の中にいるわけねぇだろ!!』
『キミさえいなければ私もこんなふざけた夢物語を実現しようなんて思わなかったんだ、そこは許して欲しい。そして……これから起きる事については先に謝罪しておこう、獅天』
「謝罪だと?何を……うっ……!?
あぁぁぁぁあ!!」
パラディンのあまりに身勝手でふざけた言動に怒りを隠せないヒロムにパラディンは気持ちも何も無い謝罪の言葉を返し、その直後にパラディンは死獅王に対しても何やら謝罪しようとした。が、その際、パラディンは何故か彼の事を過去の名で呼び、そこに死獅王が気づくことも無く何に関しての謝罪なのかをパラディンに問おうとしたその時だった。
突然死獅王は苦しそうに胸を押さえ、そして死獅王が苦しそうに叫ぶと彼の纏う黒い風と雷が嵐のようになりながら彼を覆い飲み込もうとその力を強くさせていく。
何が起きている?ヒロムたち3人は目の前で起きてる事が何なのか理解出来ずにいると……黒い力の中より死獅王と思われる者が現れる。
鬼人、そう呼ぶに相応しいような禍々しい黒い体に金髪の人の姿を模した化け物の登場にヒロムたちは驚愕する他なかった。
『ガァァァァァ!!』
「何が起きた……!?」
「コイツが死獅王……いや、獅天だってのか!?」
『さぁ楽しめ!!彼こそが姫神ヒロムを超える為にと生み出され最高傑作に近づいている戦士だ!!』