7話
「とりあえず戦力の確保を視野に入れながら死獅王追跡を進めるぞ」
鬼桜葉王とイクトと別れ黒月クロトと行動を共にし死獅王追跡を開始したヒロムはどこかへ向かう道中の中で黒月クロトにとりあえずではあるがやるべきことについて話し始め内容を共有しようとしていた。
「質問、戦力として引き入れるような人間のアテはあるのか?」
「無い。というより、《天獄》のメンバー誰1人として頼れない時点で無計画に事を進める事になる。それに他を頼るとなると鬼桜葉王の気遣いや防衛を引き受けてくれたイクトに何かしら迷惑かける事になるから下手に頼る事も出来ない」
「疑問、策も何も無しに進めるのか?」
「無策で無鉄砲に進める気は無い。まずは情報を集める所から始める。裏社会に詳しく情報が集まりやすい場所で手荒に集める」
「理解、となると賞金稼ぎと情報屋が集まりやすい集会所に向かう事になるな。だが、集会所には暗黙の了解として暴力沙汰は禁止されているぞ?」
死獅王追跡に際して戦力の確保を先ずの目的として話すヒロムは何かアテがあるわけでもなく無策で進めることになる点を黒月クロトに指摘されながらも考えだけはある旨を話して死獅王の名が広がりつつある裏社会に関する情報が集まる場所を目指すと話した。
ヒロムの目指す場所に心当たりのある黒月クロトはそれが悪人に当てられた懸賞金を目当てに活動する賞金稼ぎと数多に増え続ける情報の売買を専門とする情報屋が集まる場所である集会所は挙げるも手荒にやる旨を口にしたヒロムの思惑通りに行かないルールが集会所にある事を理解してるのか確かめるように質問した。暗黙の了解というルールがある点について黒月クロトが指摘するとヒロムはそれについて把握してるらしく軽く頷くとその点を解決する案について答え始めた。
「集会所の暗黙の了解ってのはその辺に詳しい元賞金稼ぎのイクトから聞いてるから知ってる。けど、その集会所の暗黙の了解を無視出来る方法がある事も教えられててな」
「論外、集会所の暗黙の了解は絶対ともされるものだ。それを無視して手荒に行える裏技があるというのか?」
「集会所は元々能力者によるテロや軽犯罪を犯しながら警察から逃れるような厄介者を処理するために政府がある程度の支援の上で成り立つように設けられたものだ。だからその実態は政府に認可された法の下で活動する場所とされているし賞金稼ぎも情報屋も最近では治安維持のために認可証の取得が必要とされるケースも増えて来ているって話だ。だから、集会所にはそんなケースを回避する前提で無認可の賞金稼ぎを匿うような治安の悪い政府の支援無しに自営する集会所があるらしい」
「驚愕、政府の支援無しに懸賞金を支払えるような集会所があるというのか?」
「無認可の賞金稼ぎを匿う時点で支援は無くなり集会所の活動は強制で停められるから資金源は限られてくる。善良な市民の払った税金の一部を裏ルートで徴収して資金にし、扱う情報も高額にして運営資金に回してるって仕組みだ」
「……理解、そんな問題だらけの集会所が暗黙の了解が通用するわけ無いな。騒ぎが起きれば警察や政府の調査が入るリスクがある。こっちが暴れて相手の不正を盾にしてしまえば……」
「こっちの求めるものが容易く手に入れられる。ついでに手頃なやつがいたら戦力として確保する。協力する報酬として《一条》の推薦による認可証の発行を餌にすれば簡単だろうな」
「納得、情報と戦力の確保を同時に行えるな。与えた餌が死獅王追跡と撃破の成功が確実でなければ果たされないとなれば裏切るなんて無謀な真似をすることも無くなるだろうから保険もかけられて一石二鳥だな」
「そういうことだ。まっ、そんな厄介なところに行くとなれば大人しく話し合いになるわけもねぇし……《一条》で鬼桜葉王に仕込まれた数々を見させてもらうから頼むぞ?」
「歓迎、そういう期待には必ず応える」
「ああ、背中は任されてくれるんだろ?昔の約束、ちゃんと果たしてくれ」
「……意外、覚えていたのか?」
昔の約束、面識は無いはずだと散々言っていたヒロムが初対面てして認識していた黒月クロトに向けて口にした言葉に彼は驚きを隠せず、ヒロムは少し申し訳なさそうに微笑むと彼に謝罪した。
「思い出したのはさっきオマエが背中は任せておけって話してくれた時だ。幼い頃……オレが大人によって絶望と挫折を味わされる前に出会ってたってな。黒月の名前の家は代々誰かに仕え天寿を全うするだの小難しいこと話してただろ?」
「肯定、あの時のオレは家の慣わしに従いヒロムの為に戦うことを考えていた。ヒロムの前から去って数年が経った頃に数多の苦しみに襲われて苦痛と戦っていると知らされた。すぐ駆けつけたかったが肝心な時にそばにいなかったオレでは役不足に感じ、いつか必ず役に立てるように強くなって駆けつけるために必死に強さを求め《一条》に辿り着いた。とはいえ……鍛錬を終えてみればヒロムは《一条》と認める実力者になってて駆けつける間も無かったがな」
「だがこうして頼る相手の少ないオレのもとに帰ってきてくれた。死獅王倒した後がどうなるかは分かんねぇけど、今はオマエが相棒になるから頼むぞ」
「感謝……オレの全てを賭してヒロムの道を切り開いてみせる」
「ああ、頼むぜ……クロト!!」
過去の約束、黒月クロトが忘れることなく果たそうとしてくれた約束を今こそ実行して欲しいとして改めて頼んだヒロムとその言葉を受け喜びを感じ彼の力になる事を誓ったクロトは目的の集会所へ向かおうとした。そして……
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人通りの少ない薄暗い路地の奥に佇む平屋の建物、人が集まれるだけの広さは確実にあると思われるその建物の前に到着したヒロムはクロトを連れて中に入ろうとし、そしてヒロムは閉まっている扉を乱暴に蹴り開けると中に入った。
中に入ると薄暗い空間の中にいくつかのテーブルが設けられ20人ほどの武器を携えた男女が飲み食いしている光景があり、そして飲み食いしていた男女は突然の来訪者となるヒロムを睨むように見ながら武器を取るべく手を伸ばそうとした。
「……死獅王の情報を持つやつは前に出てこい」