67話
作戦開始、それと同時にシンクと調査員はキラとアスランを連れ行く形で研究施設へ進行する道から外れるようにして人通りが少ない場所に向かおうとし、リクトは彼自身のみが知るとされる裏ルートにやる通行を断つべく単独でその裏ルートがあるとされる場所に向かおうと駆け出した。
そしてヒロムはクロトとレイガを引き連れる形で研究施設の正面入口に向かおうと走り、ヒロムたち3人の接近を感知したのか突然警報が鳴り始め、警報が鳴ると研究施設の中から次々に全身武装した兵士が現れてヒロムたちを迎え撃とうと武器を構えようとした。
「迅速、もうこちらへの対応を始めたか」
「 腐っても元は《十家》の1つを担っていた家の出身、兵士を確保するだけの財力は残ってたらしいな」
「質問、やつらはどうする?」
「殺すなよクロト。アイツらは利用されてるだけだからな。けど……不可抗力なら、仕方ねぇって事にしといてやる!!」
「理解、無駄な殺しをしなければいいというなら手心無しにやらせてもらう!!」
現れた兵士の群れに対してクロトは短剣を構えると加速し進撃すると共に斬撃を放って斬り倒していき、クロトが兵士を次々に倒していく中で味方を援護しようとする他の兵士がクロトに狙いを定めようとするとヒロムとレイガは素早く敵に接近すると共に拳撃を幾度と放ってクロトを狙おうとした兵士を一網打尽にしてみせ、ヒロムたちはさらに敵を攻撃する事で兵士を倒し続け数を確実に減らしていた。
が、ヒロムたちが敵を倒そうと中より続々と増援となる兵士が次から次に現れてヒロムたちを苦しめようとするがそんな程度の事では臆しないヒロムたち3人はむしろ次々に来る増援を前にして攻撃の手を緩めることなくただ敵を倒そうとその攻撃の勢いを加速させていく。
止まることないヒロムたち3人の攻撃に武装しているにも関わらず兵士たちは太刀打ちする事など出来ず、実力差があり過ぎるのか3人の攻撃はあっという間に増援で来た兵士たちをも倒してみせてしまう。
ヒロムたち3人が倒した敵の数は気がつけば100人を越えており、3人のあまりの強さに何とか無事でいる兵士やさらなる増援として駆けつけその光景を見せられた兵士たちは彼らを前にして戦意を喪失したかのように徐々に後退し始めていた。
「んだよ、こんなもんか?」
「論外、拍子抜けもいいところだな」
「肩慣らしにしても物足りなさがありますね。どうします、ヒロムさん?」
「戦意を喪失したなら野放しにしておきたい気持ちはあるがそれが後々に影響するのは面倒だ。倒せるのならここで……
「弱者を蹂躙して悦に浸ってるつもりか?」
後退を始める兵士たちに呆気なさを感じるヒロムとクロトに対してレイガは目の前の戦闘の意志が消えつつある兵士たちをどうするかをヒロムの判断を仰ごうとし、放置する気持ちがあるとしつつもヒロムら後のことを考えた時の事を話そうとした。が、そのヒロムの言葉を遮るかのように声がすると研究施設の中より黒衣を翻しながら死獅王がその姿を見せ、死獅王が姿を見せると戦意を失い後退していた兵士はヒロムたちの相手を死獅王に押し付けるかのように一斉に施設内へ撤退してしまい、兵士たちの行動についてヒロムは撤退する姿を情けなく感じながら死獅王にそれを言及しようと話し始めた。
「自慢の同門が減って三流企業の傭兵でも雇ったのか?仮にも組織の主要格に押し付けるように逃げるなんて戦士の風上にも置けない、そう思わないのか?」
「やつらは所詮悲願成就のための捨て石、オレの目的のために肥やしと成るだけの存在に情など抱くことは無い」
「情、ね。パラディンの正体やレイガの殺しの件を知りながら何故こんなことをする?オマエが目指す世界は誰のための世界だ?」
「余計なことを聞くとは時間稼ぎか?パラディンが何を企もうとオレの知らぬ事、ただオレはそこにいる掟を破りし裏切り者を殺しオレの野望を果たすだけだ」
「……何?」
「疑問、ヒロム。今のは……」
死獅王に向けて発したヒロムの言葉に敵は当然のように自らの意思を交えて言い返すが、そや当然のように返された言葉を耳にしたヒロムとクロトは死獅王のその言葉に隠れた違和感を見逃さなかった。
「クロト、気づいたか?」
「無論、今のは明らかに不自然。いや、すれ違っているなんてものではない」
「ああ、そうだ。これは……すれ違いとか勘違いなんかじゃ片付けられない事だ」
(今の死獅王の言い方、パラディンに『何を企もうと』ってのはおかしい。パラディンの中身がレイガとアイツの武術の指導者たる牙堂詠心だと把握しているのならば少なくとも死獅王はパラディンとなったあのクソ野郎の思想に賛同してる事になるが今の言い方だとパラディンの中身はもちろんのことパラディンの企みを詳しく知らない事になる)
(整理。パラディンが牙堂詠心だと知らない可能性があるという前提のもとで話をまとめるとレイガの殺しの件が牙堂詠心に仕組まれたことを知らない事になる。現にレイガを裏切り者と呼ぶところからレイガの身に起きた事実を知らない。ということは……)
((死獅王に成る前の獅天がレイガを生かしてはおけないと攻撃しようとして永楽寺院で起きた惨劇というパラディンの語った真実が立証出来ない!!))
死獅王の言葉から紐解かれる違和感と疑問、そこから先刻の戦闘でパラディンが語った真相が成立しないと答えを導き出したヒロムとクロト。そして……
「だとしたら……何もかもがおかしくなってくる。そうだとしたら……
「混乱……否定……根底が覆される!!これが正しいのならば……
「「死獅王、オマエが永楽寺院の跡地で言葉を交わしていたあのパラディンは誰なんだ!?」」