6話
仲間を頼れない、鬼桜葉王の口からヒロムに向けて告げられたこの言葉の内容にヒロムは戸惑いを隠せず、ヒロムを戸惑わせるだけの言葉を口にした鬼桜葉王に対してヒロムはその言葉の真意を確かめるべく彼の口にした言葉について聞き返すしか無かった。
「どういうことだ?仲間を頼れないってのは何の目的で口にした?」
「落ち着けェ、姫神ヒロムゥ」
「落ち着いてられるか。今回の死獅王の件はオマエら《一条》からオレ個人への依頼、ある程度の情報と引き換えに死獅王の始末をオレに任せたいんだろ?それならやり方はこっちで精査する死獅王を始末するのに最適な人選で挑むのは何ら問題無いはずだ。それなのに何で依頼した側のオマエが依頼を引き受けた側のオレのやり方に口出しするような真似をするんだ?」
「たしかにオマエの言い分は正しいィ。がァ、その言い分も事と状況次第では悪手になりかねないしオマエの今後を危険に晒す事になるからこそオレは今回に関してはオマエの頼りにする仲間が関与するのを止めたいんだァ」
「その理由は?」
「あまり言いたくないがァ……今回の件にオマエの仲間ァ、つまりは《天獄》の戦力を死獅王単体に集約したくないんだァ」
「戦力を死獅王に集めたくないだと?一体何を……」
「大将、それに関してはオレが話していいかな?」
鬼桜葉王の言い分、それを受けてもいまいち理解の出来ないヒロムだったがそんなヒロムの理解をフォローするかのように鬼桜葉王の隣に立つイクトが彼の代わりに彼が言おうとした事をより分かりやすく語り始めた。
「今回の死獅王の始末、大将が考えるように大将がリーダーを務める独立組織の《天獄》のオレやガイたちが行動すればたしかに容易に事が進められるかもしれない。現状の《天獄》の戦力としては大将とオレ、大将が招集かけてすぐ駆けつけられるかどうかで見るなら現代最強の剣術家のガイに最強の銃使いのソラに戦闘種族にして最強のポテンシャルを秘めたシオン、大将と互角の潜在能力を秘めてるとされる魔人の能力者のノアルがいる。今はどこで何してるか分からない《天獄》で屈指の曲者の真助を含めるなら《天獄》のメンバーは7人だけの少数精鋭ってことになるけど、少数だろうと他を圧倒出来る実力がある事は《一条》も認めてくれてる」
「だからガイやソラの手を借りて……
「問題はその《天獄》が結成当初の単なる大将の自警を目的とした組織としてではなく国内の危機を救った少数精鋭の組織として世間的に認識されつつあることだ。大将を起点に《天獄》で解決したあの事件……《十家騒乱事件》の解決の立役者たる大将とその仲間として認知されてる《天獄》は死獅王追跡には相性が悪いんだ」
「あ?相性って何だよ?一体何を……」
イクトの口にする《十家騒乱事件》、半年前に起きたその事件は長年に渡って日本という国を裏から支配してきた一から十の数字をそれぞれ持つ十の名家の一角として君臨していた《十神》の当時の当主の十神アルトの暴虐により起きた騒動と日本の支配の裏にあった負の面を恩恵として受け、そしてヒロムたちを倒すための傀儡として利用された名家との戦いの全てを指す一連の騒ぎを知らぬ者はほぼいないとされており、この騒動の解決と元凶たる十神アルトの撃破を成し遂げたヒロムと彼の束ねる組織となる《天獄》のメンバーは日本を救ったとして一種の評価を与えられることとなった。
その一連の騒ぎが今回の死獅王追跡に際して相性が悪いということになるのか、イクトが何を言いたいとしてるのかヒロムは理解が追いつかず彼に言葉の真意を話させるべく言葉を返そうとするが、言葉を口にする途中でヒロムはイクトが言わんとすることを頭の中で気づき理解してしまい、言葉を途中で止めたヒロムのその反応から察した鬼桜葉王はヒロムが仲間に頼れない理由になる一番の問題について触れながら解説した。
「理解してると思うがオマエたちは今や日本国内において国を救うだけの実力がある能力者として認識されているゥ。そんなオマエの身辺を調べるなんて事は向こうには容易いことのはずゥ、となればオマエの大切なものを巻き込むなんて事も可能だと用心しておく必要があるゥ」
「イクトたちを参加させないのは無関係な人間が巻き込まれるのを阻止するためってか?」
「安易に語るならそうなるが実際のところはこちらで死獅王追跡を引き受けるオマエをフォローするために防衛線を下手に強化するよりはオマエの大切な彼女たちが自然に生活を送れるように親しい仲でもある黒川イクトや他のメンバーがそッちの役割を担ッてオレの方が可能な範囲でオマエを支援する形の方が効果的だと判断したからだァ」
「なるほど……その支援の最初の形が黒月クロトの紹介か」
「あァ、オレが《一条》で育て上げた能力者を1人同伴させェ、そしてオマエが黒月クロトと共に状況に応じ必要と判断した人材の手配・交渉をオレが可能な範囲で後方から支援するゥ。この形で今回の件を解決させる算段でいるゥ」
「……事情は把握した。色々いいたいことはあるけど……頼みがある」
イクトや他の仲間が死獅王追跡に参加出来ない理由をあえて語られたヒロムは鬼桜葉王の事情を把握した上で深いため息をつき、ため息をついたヒロムは鬼桜葉王の方を見ると彼にある事を頼もうと伝え話した。
「ガイたちには事情の把握のために全てを伝えて欲しい。多分……渋るとは思うけどオマエが言うなら理解してくれるはずだ。それと、アイツら……ユリナたちには何も言わないで欲しい」
「分かッてるゥ。何も教えず何も知られずに終わらせるんだろォ?」
「ああ、何もかも手羽訳終わらせるつもりだ。だから……余計な事を伝えたくない」
「了解だァ。そのくらいの事は引き受けてやるゥ」
「助かる。なら……行くぞ黒月クロト」
「了解、背中は任せておけ」
「……、ああ。頼りにしておく」
鬼桜葉王にちょっとした頼みをしたヒロムは目的の達成のために黒月クロトと共に動き始めようとし、彼と黒月クロトは鬼桜葉王とイクトを置いてどこかへ向かうように歩き始めた。彼らが向かうのは……