42話
これまで何度となく現れては逃げられていた敵を前にして確かな情報源として捕らえようと考えるヒロムと彼の攻撃を防ぎ反撃を食らわせたシェリー。
シェリーの防御と反撃のカラクリを瞬時に見極め把握したヒロムは何か策があるのか強気に相手を挑発するような言葉を口にし、反撃を受けても尚強気でいられるヒロムのその強気でいられる根拠の分からないシェリーは不思議に思う他なかった。
「私には触れられない、それは今の一撃で返り討ちにあって理解したはずよ。それなのにオマエはまだ諦めないのか?」
「たかだか一撃でいい気になってんじゃねぇよクソ女。それともアレか?一撃程度で相手の虚を突いたのが嬉しいってか?」
「黙りなさい。オマエが何を言おうと私には触れられない、その事実は変わらないのよ」
「どうかな?オマエがどんだけ強気に物言おうと既に潰えた《十神》の人間の戯言にしか聞こえない。オレに倒されたオマエの兄貴同様……十神アルトのように多少優位になった事で悦に浸ってる間に潰されて夢の中に落ちろ」
「オマエ……兄上の事を侮辱するなど許せぬ!!」
ヒロムの口から出てくる数々の言葉、その言葉の中で《十神》と過去ヒロムに倒された彼女の兄でもある十神アルトの事が出されるとこれまで余裕を見せるように振る舞っていたシェリーの口調が少し荒くなり、さらに彼女は扇子を派手に振ると周囲に魔力の球を出現させて力を蓄積させると無数の光線に変えながらヒロムに向けて放射させ、無数の光線が放射されるとヒロムはそれらを容易く躱すと同時に地を強く蹴って敵との間合いを詰め直そうとした。
シェリーとの間合いを詰めようとするヒロムは接近しようとする中で拳に力を溜めると彼女を殴るべく再び一撃を叩き込もうと構え、光線を躱され間合いを詰められたシェリーは先程同様に防御と反撃を行おうと自身の前に障壁を展開させる。
障壁が展開されるもヒロムは攻撃の手を止めようとせずに力を高めながら殴りかかろうとし、また同じように防ぎ反撃を受けるだけだと確信していたシェリーは勝ち誇るかのように笑みを浮かべようとした。
しかし……
「バカかよ」
シェリーが勝ち誇るように笑みを浮かべているとヒロムは冷たく呟くなり突然拳を止め、ヒロムが拳を止めたことでその攻撃も中断されてシェリーが防御と反撃を実行するために展開した障壁に触れずに終わってしまう。
突然のヒロムの攻撃中断にシェリーは何故なのかと不思議に思う中で浮かべていた笑みを崩してしまい、そしてシェリーの笑みが崩れると彼女の背後で彼女の予想していなかった事態が起きようとした。
シェリーが笑みを崩したと同時に彼女のその背後にヒロムが宿す存在である精霊、長い金髪の少女の精霊・フレイが大剣を振り上げながら現れ、フレイの出現に気配で気づいたシェリーが慌てて振り向こうとするとフレイは振り上げた大剣を勢いよく振り下ろし、大剣が振り下ろされるとシェリーは慌てて障壁を展開し直して大剣を防ぎ止めようとした。
が、シェリーが障壁を展開し直して防ごうとするとフレイは軌道を変えるようにシェリーから逸らすように振り下ろし、大剣を止めようと障壁を展開して備えていたシェリーの意に反したフレイの行動にシェリーがその意図を理解出来ずにいると拳に止めていたヒロムのその拳が動き出すと素早く彼女の体に叩き込まれ、ヒロムの拳が体に叩き込まれたシェリーは自慢の障壁でどうにかする間もないのか抵抗することなく叩き込まれた拳から伝う衝撃に襲われながら殴り飛ばされてしまう。
殴り飛ばされたシェリーは勢いよく倒れてしまい、シェリーが倒れるとヒロムの隣にフレイが大剣を構え直しながら並び立ち、そしてヒロムは倒れる敵を見下ろすように視線を向けながら彼女の自慢の障壁に関するある問題点を語り始めた。
「オマエの障壁は初見殺しという意味ではたしかにスゴい。が、スゴいだけでそれ以上は無い。1度受けたら警戒して攻撃を躊躇うか力任せに突破する強硬策に出るかって思考だったんだろうが詰めが甘い。オマエのその障壁はその追加構築の構造上全方位には展開出来ず最大限にその力を活かすには一点に集中させておく必要がある」
「……そんな……まさか、こんな短時間で……!!」
「この程度造作もない。オレの攻撃を躱さず正面から対処しようと一撃目でそうした時点で見抜けた。だから適当に煽って視野を狭めるように仕向け、そして2度目の攻撃を1段目の陽動にするためにフレイを死角に出現するように誘導した上でフレイの攻撃を2段目の陽動にしてオマエの認識を乱させる。そこまでの流れにオマエが乗せられれば2度目の攻撃をぶつけるのは容易い」
「ふざけたことを……この私が……!!」
さて、とヒロムは怒りを抱くシェリーの言葉など聞こえていないかのように言うと首を鳴らしながら倒れた状態から立ち上がろうとする彼女に対して問い詰めようとゆっくり歩を進めながら言葉を発していく。
「オマエが何を企んでいるのか、何故アスランを巻き込んだのかを答えてもらう。そして死獅王……アイツの計画についても吐いてもらう」
一撃を決めた事で優勢になったヒロムは謎をハッキリさせようと敵に問い詰めようとし、問い詰めようとする中でゆっくりと歩を進めるヒロムが徐々に近づこうとする中でシェリーは……