40話
敵の出現、警報と共に緊張感が生まれ始めた中でヒロムはシンクに迎撃を頼まれた事もあってクロトとレイガを連れて現場に向かおうとし、地下から地上へ戻り、敵の出現した場所に走っていた。
《八神》の敷地の中とはいえ元々の敷地面積が広い事もあって移動は少し時間を要したもののヒロムたち3人は無事敵の出現場所に辿り着き、ヒロムたちがそこに着くとそこにはヒロムやシンクの予想通り十神シエナ改めシェリーの姿があった。そしてシェリーのそばには奇妙な装束の男が2人立っていた。
男というよりは青年と呼ぶ方が適切かもしれない2人は似たような顔立ちをしており、一方が黒髪、もう一方が白髪の色が異なるだけで似たような髪型、奇妙な装束も2人でわざと揃えたかのように似通ったデザインをしていた。
「何だアイツら?ペアルックか?」
「奇妙、服装以外も似てるところが多い」
「顔まで似てる……てなると双子か」
「あの2人って……」
服から髪型、さらには顔まで揃えたような2人にヒロムとクロトが何やら奇妙に思っているとレイガは心当たりがあるような反応を見せ、ヒロムがそれに気づくよりも先にシェリーがヒロムたちに気づくと扇子を広げながらヒロムたちに何やら話し始めた。
「まったく、何の因縁なのかは知らないけど私の行く先々に現れるなんて面倒なやつらね」
「オマエがオレらの前に現れてんだろ。文句を言われる筋合いはねぇよ」
「同感、面倒に思うならそう思わなくて済むように捕まえてやる」
「それは困るわね。私にも目的があるのだから」
「その目的ってのは《十神》に関係あんのかよ……十神シエナ」
「……意外ね。もう私の正体がバレているなんて思わなかったわ。いや、あんな焼け跡に来てたのならバレててもおかしくないわね」
「素直に認めるんだな」
「否定するのも手間だからどうでもいいわ。それに……私が誰だろうとオマエらに関係ないのだから。アンタら、頼むわよ」
「お任せを」
「ここは我らに」
シェリーはヒロムの言葉に対してどこか適当に返しながらも確かな自信のようなものがあるかのような態度を見せ、そんな彼女が一声出すと奇妙な装束の男2人が彼女を守るように立とうとし、敵ならば倒すしかないとヒロムとクロトが構えようとするとレイガが前に出るなり2人の男に対して問い詰めようとした。
「何故ここにいるんだ白戸、黒戸……オマエらは師範の教えに背いて追放されたはずだろ!!」
「おっ、レイガか。まだ生きてたなんて驚きだな」
「人殺しの身で獣身武闘の不殺の教えを守ろうだなんて笑いものだな」
「答えろ!!オマエらはどうしてここにいる!!」
「答える義理はない」
「答えるつもりもない」
「オマエら……っ!!」
「レイガ、少し落ち着け」
レイガの言葉に対して白髪の男・白戸、黒髪の男・黒戸は適当に流すかのように、そしてレイガを嘲笑うように言葉を返し、そんな2人に感情が抑えられないレイガが今にも攻撃を仕掛けるべく動きを見せようとするとヒロムは彼を止めるようにレイガの腕を掴み、それによってレイガが我に返ったらしく落ち着きを見せるとヒロムは白戸と黒戸を見るなりレイガに対してあることに関する確認のための質問をした。
「オマエが知ってる獣身武闘の門下生の中に空蓮と砕千って名前のやつは居たか?」
「空蓮と砕千……知ってます。でもその2人はあそこの2人よりも先に追放されて……」
「理解、ヒロムが言いたいことが分かった」
「えっ……まさか……」
「そういう事になるレイガ。オレが倒した空蓮、オレとクロトで倒した砕千、そしてあそこにいる2人に共通しているのは獣身武闘の元門下生だ。そして《十神》の人間と師範の間に関わりがあった事を踏まえると……やつらは追放されたんじゃなくて、追放されたという建前のもとで《十神》の戦士となるために師範に送り出されていたってことになる」
「っ……!!」
「その言い方……まさかあの人の裏の顔まで知ってるって事は地下のアレを見たってことなのね」
「否定しないんだな。ついでに聞くが……アスランって名前に覚えは?」
「あぁ……たしかに少し前に出会ってたわね。私にとって面倒な人間だったから罠に嵌めたのよ」
「そうかよ。わざわざ手の込んだ事してくれやがったな。けど……これ以上は好きにさせない」
「制裁、アイツの分含めて色々企んでるオマエを今度こそ捕まえる」
「それはこの2人を倒してからにしてもらうわ。白戸、黒戸……殺れ!!」
「レイガ、クロト!!殺るぞ!!」
緊張感が走る中で突然戦いの火蓋は切られ、シェリーの命令が出ると共に白戸と黒戸が同時に走り出し、ヒロムとクロト、レイガはそんな2人を迎撃すべく構えると動き出そうとし……