33話
ヒロムが都合よく入れる場所、死獅王に追跡とシェリーの拘束を目的として動くために必要となる情報と戦力確保のために次に向かう場所としてヒロムが口に出したその場所へとクロトとレイガは彼と共に向かい、そして2人はヒロムと共に来た場所に唖然とさせられていた。
「困惑、ここは……」
「あの、ここって……」
ヒロムが2人を連れて来た場所……そこは立派な門と外壁に囲まれた大きな敷地を有した屋敷の前だった。おそらく目的の場所は敷地内の屋敷なのだろうが、何故このような場所に連れられたのか謎しかないクロトとレイガが不思議に思っているとヒロムは何食わぬ顔で門の前に立とうとし、ヒロムが門の前に立つとタイミングよく門が開き、その開いた門の先にはスーツを着た男が2人立っていた。
「お、お待ちしておりましたヒロム様!!」
「当主様からのご指示で応接室に案内させていただきます!!」
「普通にしてくれていいよ。オレは別にアンタらに気を遣われるような立場ではないからな」
「め、滅相もございません!!ヒロム様は我々の上に立つであろう立場の方ですので!!」
「何よりアナタに粗相などあってはあの方に何を言われるか……」
「そうか。ならアイツに規則を見直すよう伝えてやるから楽にしてくれ」
「は、はい……と、とりあえず案内します」
スーツの男2人がヒロムに対して慌てながらも何やら畏まった態度を取るもヒロムは当たり前かのように落ち着いた様子で彼らに話した上で男の1人が出した『あの方』に苦言を呈すかのようなことを語り、ヒロムの言葉にスーツの男が困惑しながらも中へ案内しようとするとヒロムはそれについて行こうとし、クロトとレイガは彼について歩いて行こうとした。
ヒロムたちが敷地内に踏み入ると門が閉じ、何やら只ならぬ空気の漂う場所に困惑を隠せないレイガはクロトに何か知っているかを尋ねようとした。
「く、クロト!!ここってヒロムさんの家か何かなのか?その……オレが踏み入っていい場所なんだよな?」
「論外、その質問はおかしい。それにここはヒロムの家云々のレベルではない。ここは《一条》と同じく名家として扱われ国のために動こうとする《八神》の土地と拠点、そしてここの当主とヒロムは家族関係にある」
「か、家族!?えっ、いや、でも……ヒロムさんの姓ってたしか《姫神》だったよな?」
「オレの母親が《姫神》、父親が《八神》なんだよ。で、当主のアイツはオレの弟なんだよ」
「お、弟!?えっ、あの……理解が追いつかないんすけど!?」
「同感、初耳だとそうなるのは分かる。多分予備知識として知らされてないと理解出来ない事だからな」
「というかクロトもさっきオレと似たような反応してたじゃないか!!」
「反論、アレはヒロムがここに頼ると予想してなかったからだ」
「それってどういう……」
「それについてはこれから分かるから気にするなレイガ。今はまぁ、クロトみたいにリラックスしてろ」
話の内容に理解が追いつかないレイガにリラックスしろと伝えるヒロム。しかしリラックスしようにも出来ないレイガの困惑など他所に彼らは屋敷の方へ案内され……
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少しして屋敷の中へ案内され、そして応接室とされる部屋に連れられたヒロムたち3人はひとまず黒革の高級感しかないソファーに座って待っていると部屋の中へと慌てて1人の少年が入ってくる。
肩に触れるくらいの長さの黒髪に黒い瞳の整った顔立ちの少年、正装では無いだろうが清潔感のある黒い衣装を纏った彼はクロトとレイガに向けて軽く一礼した後にヒロムの方を見るなり慌てて彼に話をしようとした。
「に、兄さん!!急に来るなんて何事なのかな!?
ついこの間は暫く来る用事も無いから連絡は母さんを挟むとか言ってたのに……」
「んな事言ったか、オレ?」
「言ったよ!?というか、その反応だと適当に言ったんだね……ガイさんたちに怒られるよ?」
「知らん。というかそんな話をしに来たわけじゃない。ところでアイツは?」
「ああ、彼は……
「いるぞ、ヒロム」
少年の言葉に何食わぬ顔で答えるヒロムは自身の言葉に呆れる少年の反応を気にすること無く誰かの存在を気にするような質問をし、少年がそれに答えようとすると少年の後ろから1人の人物が中へと入ってくる。
少し長めの水色の髪に氷のような冷たさを感じさせる水色の瞳、全身黒で揃えた上下衣装の上に白のロングコートを羽織った少年が現れるとヒロムはやっと来たかと言わんばかりにため息をつき、ヒロムの反応を受けた水色の髪の少年は何も気にする様子もなくヒロムに向けて話し始めた。
「こんな所に足を運ぶからには何かワケありなんだろうが、トウマではなくオレがいることを確認するなんて珍しいな」
「し、シンク!?こんな所って失礼じゃないかな!?」
「しょうがないだろシンク。トウマ1人だと頼んねぇんだからよ」
「兄さんも!?」
「あ、あの……ヒロムさん。このお2人は一体……」
黒髪の少年と水色の髪の少年の2人と当たり前のように話すヒロムに対して2人が何者なのか理解出来ていないレイガは彼に説明を頼もうと話しかけ、説明を求められたヒロムは2人が事を簡単に紹介しようとした。
「大したアレでは無いけど先に入ってきたのが《八神》の現当主にしてオレの弟の八神トウマ。で、後から入ってきたのが今回オレが用のある男……氷堂シンク、《天獄》という組織の基礎を作り上げた男だ」
「《天獄》を……それってヒロムさんの組織を生み出した張本人ってことか!?」
「正確にはヒロムの手足となり戦う器量を持つ能力者を選定して集めただけだがな。それよりオマエ……獣身武闘の使い手だろ?」
「ど、どうしてそれを……!?」
「話せば長くなるが、順に話してやるよ」
黒髪の少年・八神トウマと水色の髪の少年・氷堂シンクについてヒロムが紹介し、さらにシンクの事をヒロムの指揮する《天獄》に関係があると聞かされレイガが興味を持つ中でシンクはレイガが『獣身武闘』の使い手だと言い、何故知っているのかとレイガが不思議に思っているとシンクは何かあるかのように言い……