32話
死獅王誕生の謎と誰も知らない真相の解明、葉王より依頼された内容を変更したヒロムは誰もハッキリと知らぬ事実を解き明かそうと行動を共にする仲間と一度都市部の方へ戻り、都市部に戻るとキラは《一条》へと永楽寺院の焼け跡地の地下で見つけた情報源を届けるためにヒロムたちと分かれ、キラが離脱しクロト、レイガの2人と暫く行動する事になるヒロムはひとまず2人を連れて人気の少ない場所に移動した後でひとまずの目的を伝えようとした。
「まずは仲間を増やす」
「質問、それはキラの抜けた穴の補填が目的か?」
「今の段階だとその部分が大きく占めることになるが狙いはそこじゃない。今いないキラを含めてオレたちは現状4人で行動してるが戦力的には物足りない。死獅王の追跡はもちろんだが十神シエナ……いや、長いからシェリーで括って進めるがあの女と謎しかないパラディン、そいつらを傍に置く死獅王の後ろで待機してるであろう総数不明の敵戦力を相手にするなら増強は避けられない」
「納得、少数精鋭でいくにしても4人は少な過ぎるな。戦闘時の単純な負担を減らすのなら得策だな」
「けどアテはあるのか?《一条》のバックアップ無し、情報通のキラ不在、十神アルトを倒した《十家騒乱事件》でヒロムさんと共に戦った仲間に頼る事は出来ない。適当な能力者じゃ戦力になるか分からないし、《一条》が《十神》について調べ直すために支援から外れたってことは後ろ盾が無いのと同じって考えると人選が難しくなる。そんな中で戦力増強が望めるアテがあるのか?」
「愚問、その辺の事を考えてヒロムは発言している。オマエが気にすることではない」
「無関係では無いから口出しはする。今後の戦いで隣に立つ人間、並ぶ人間に不満があるようじゃ意味無いだろ?」
「落ち着け2人共。こんな所でくだらない事で無駄に争う方が余程無駄だ」
「……悪い」
「言いたい事は分かるから問題無い。生半可な覚悟の人間はかえって足手まといになるだけだからな。そういう意味では表社会の能力者は平和ボケし過ぎて期待出来そうにないけど、裏で探すにしてもその界隈にいる時点で戦力としてカウントするには交渉が難航する可能性がある。ある意味3人の状態からのスタートとしてはなかなか厳しいところがある」
「無関係なことに首を突っ込むなんてこと、普通はしないもんな」
「賛同、レイガの言う通りだな。法の下で民間にとって優良な仕事してるような能力者はまずこの手のリスクしかない話は避けるだろうしな」
「裏の方も結局は金次第……になるけど資金源の確保が必要になるのか?」
「いや、その程度の金ならオレの個人で稼いだ金でどうにでも出来る。ただ裏の方は金を積んで引き入れてもリスクは残る」
「え?どういうことだ?」
今後の自分たちの行動と敵との戦闘を考慮した戦力増強は並大抵の実力と覚悟では務まらないとした上でヒロムたちと戦える実力を持つだけの人間は法の下で守られる人間は関わろうとしないと話したクロトに対してレイガは裏社会の人間を相手にするために資金の必要性を挙げ、ヒロムの資金源について問題は無い代わりにその場合のリスクに関してレイガに説明しようとした。
「裏社会で金稼ぎしてる実力者となれば経験値は桁違い、つまりオレたち3人で知恵を束ねても覆せないレベルで頭の回転が速いはずだ。そういうやつは確実性の低い案件には多額の金を乗せようとする。今回の死獅王の件みたいなのはとくに大金を請求しやすい案件になるからな……下手したら数千万単位請求してくる上にそういうタイプは頃合見てバックれるだろうから金積めば大丈夫なんて事にはならねぇんだよ」
「な、なるほど……」
「難航、そうなるとヒロムの言う戦力増強が納得いくところにまとまるようにするのは時間がかかるな」
「かと言って悠長に探す時間もない……ってことか。クロトにアテはないのか?オレは……特にアテなんて無いけど、アンタならあるんじゃないのか?」
「謝罪、残念だがレイガの期待に応えられるようなアテは無い。仮にあったとしてもオレたちが必要なアテってのは《一条》に把握されてない人間でなければ適さない、オレたちの行動に関して情報を流されない人間が求められるわけだが……生憎、《一条》に在籍してる身のオレが頼れる人間はそのほとんどが《一条》が接触してるから今回の条件に該当しない」
「……てなるとかなり厳しいな。オレなんかは何もないし……
「仕方ない。アイツに声掛けるか」
悠長に探す時間は無い、かといってクロトがどうにか頼れる人間は葉王や《一条》の目を逸らして事を進めたいヒロムの方針の妨げになるとし、さらにレイガも頼れる人間はいないと言おうとするがヒロムはため息をつくとスマートフォンを取り出し誰かに電話しようとした。
「オレだ。急で悪いが今どこにいるか教えろ。……そうか、わかった。ついでに聞くがアイツは?……いるんだな?よし、そこでじっとしとくよう伝えとけ。……は?知らん、こっちの都合優先しろ」
何やら一方的、かつどこか乱暴に話を進めると電話の相手の事などお構い無しに通話を終わらせ、そしてヒロムはクロトとレイガに伝えようとした。
「一旦移動する。そこで話すぞ」
「あの……どこに?」
「決まってんだろ、オレが都合よく入れる場所だ」