28話
瓦礫の山を退けたその下から出てきたマンホール。拍子抜けな結果でも蓋を開け内部の調査をすべきかとヒロムが罠を警戒する中でキラにより発見されたものにより事態は一変。
マンホールの蓋に施された模様に隠す気のように紛れ込んでいた《十神》の家紋を見つけたことで罠を警戒していたヒロムはフレイたちに内部調査を指示して彼女たちを進入させ、ヒロムはキラの持っていたタブレット端末を用いて《一条》の人間……とくにその中でもヒロムが容易くコンタクトの取れる人間であるあの男と映像通信を行っていた。
『なるほどなァ。永楽寺院の焼け跡に何かあると思い向かッた結果ァ、《十神》の家紋が刻まれたマンホールの蓋を見つけたッてかァ』
「そうだ。葉王、家紋があるってことは永楽寺院はもちろん、この土地はあの男の所有地ってことになるよな?」
『普通ならなァ。今オマエの報告受けて部下に軽く調べさせてみたがァ……永楽寺院はもちろんその辺りの土地は《十神》の所有地だなんて記録はねェぞォ』
「だが事実として何の変哲もないようなマンホールの蓋に家紋が刻まれていた。所有地でもない場所にわざわざそんなものを置くのか?」
『落ち着けェ。言いたいことは分かるがァ、こちらも事実を伝えているだけだァ。オマエが抱く疑問に関してはァ……可能性で話せるものはあるゥ』
映像通信の相手の男……鬼桜葉王の話した内容に疑問を抱くヒロムだが葉王は落ち着くよう話し、葉王の言葉で一応は落ち着こうとするヒロムは舌打ちをした後で彼の話を詳しく聞こうとした。
「……教えろ。オマエが話せる内容ってのを」
『ああァ、いいだろうゥ。ただしィ、あくまで可能性であッて絶対ではないからなァ?』
「理解して聞こうとしてる。だから話せ」
「話聞こうとしてる側の態度じゃない気がするスよボス……」
『羅国キラァ、そいつはそういう男だからいちいち気にしてたらキリがねェぞォ。……ってのは置いといてだァ、考えられるのは土地というよりもそこに居た人間についてだァ。その永楽寺院の管理者だろう獣身武闘の伝授と指導を担ッていたその師範が《十神》の側の人間なら《十神》が土地を正式に管理していなくとも自分の土地のように振る舞えるだろうッて話だァ』
「師範がヒロムさんに倒された十神アルトに関係あるってことか?でも、そんな変な事するくらいなら素直に土地を手に入れればいいんじゃないのか?」
『いやァ、それは違うなァ。《十神》が仮にその土地を手に入れ永楽寺院も土地のついでに確保したとするとその場所が都市部から離れ過ぎている事もあッて何かあると疑惑を抱かれる危険を自ら生むことになるゥ。とくに十神アルトは日本の支配を裏で指揮する中で《一条》に怪しまれてる事をある程度気づいていたから《十家騒乱事件》の起きたあの日まで目立つ動きを見せようとしなかッたァ』
「アンタらが目をつけていたからこそ下手な詮索をされぬように避けて自分にとって不利になる要素を作るような真似はしないためにこの土地に滞在する人間を利用したのか」
『可能性だけで話すならそうなるなァ。とはいえ永楽寺院に関する情報もそこのレイガという少年の教えられた獣身武闘という流派がそこで伝授されていたという情報も《一条》の管理下にある情報の中には無いィ。こうなるとこちらも一から調査する必要があるしィ、そうなるとかなり時間を要する事になるゥ』
「……レイガ、オマエに技を教えた師範の名前は分かるか?」
「すいません、ヒロムさん。出会ってから別れの時までオレはめちろん全員が師範のことは『師範』としか呼んでなかったので分からないんですよ」
「……だそうだ、葉王。何かの手がかりになるかと聞き出そうとしたが無駄だった」
『いいやァ、彼の発言が大きな役目を果たしてくれそうだァ。師範の名は誰にも知られていないィ……つまりその師範とやらは名を明かさずに死ぬまで過ごすだけの必要性があったことになるからなァ』
「意図的に伏せられていたってわけか。そうなるとその師範ってのは益々怪しくなってくるな」
『だが問題は焼け消えた寺院の跡地でオマエたちが何を見つけるかだァ。発見したもの次第ではこちらの調査の必要性が大きく変わるからなァ。ここから先を左右するのはァ……』
「フレイたちが何を見つけるか、だな」
「マスター!!ありました!!」
ヒロムたちの行動だけでなく葉王及び《一条》による調査の有無までもがマンホールに進入したフレイたちの発見次第となった中、マンホールの中よりフレイ、ラミア、マリアが飛び現れるように姿を現し、現れたラミアとマリアの手には分厚い本が、そしてフレイの手には少し汚れた写真が持たれていた。
ラミアとマリアの持つ本よりもフレイの持つ写真が気になるヒロムはそれに視線を向け、ヒロムの視線に気づいたフレイはヒロムぁけでなくクロトやキラ、レイガ、映像通信中の葉王にも見えるように写真を提示するとヒロムたちに驚きの事を告げた。
「マスター、この写真には十神アルトが写っています。そして……マスターの前に3度現れたあの女も、一緒に写っています!!」
「何……!?」