25話
精霊との連携を加える事でレイガとの連携そのものの攻撃性を上げて死獅王を追い詰め、さらには個人の力に置いても死獅王を上回ろうとしたヒロムに対して死獅王はヒロムの本気を出せという言葉を実行するべく自らの力を解放しようとした。ヒロムと死獅王、ここから2人が本気でぶつかり合うかと思われた矢先、それを邪魔するかのように天より現れた鉄仮面の何者かはヒロムと死獅王の戦いに水を刺すかのように死獅王に向けて話し始めた。
「ここで本気を出す必要は無い、死獅王。オマエはまだ本気を出せるほどの力量には達していない。未だに体が力に馴染まぬその状態でその力を解放すれば……計画は先送りになるぞ」
「パラディン……っ、邪魔をするな。この男との戦いに貴様の口出しは不要だ」
「こちらとしては計画の成功のためにもオマエの活躍が不可欠になる。オマエのため、そしてオレのためにも計画は必ず実現する方向で進めなければならない」
「計画の実現は貴様の願望であり、そこに集中したいのは貴様の考えでしかない。貴様と手を組むことは認めているがオレのやり方に口出しされるのは別だ」
「強さを求め戦いに命を燃やす、戦士としてその命を戦いの中で朽ちさせたいのは分かるが落ち着け。この男との戦いは今でなくても何れ訪れる。その時が来たら好きに戦えばいい」
「そのために今は貴様に従え、と?」
「利口だな、死獅王。その通りだ。全てはオマエのため……そしてオマエの計画のためだ」
「……興醒めだな。しつこ過ぎて覇王と戦う気が失せた。こうなったからには責任を取ってもらう」
「責任など取らぬさ。計画を実現する、それで全て解決するのだからな」
死獅王が『パラディン』と呼んだ鉄仮面のそれはヒロムと戦おうとする死獅王を何故か止めようと食い下がる様子もなく『計画の実現』を理由に納得させようとし、そのしつこさに折れたのか死獅王はパラディンの言葉に従うかのように雷と風を消し去ると今まで剥き出しにしていたものを全て内側に抑え込んでしまう。
突然の死獅王の戦意喪失とパラディンと呼ばれたそれの介入、目の前で起きた予想外の事にレイガだけでなく加勢に現れヒロムと連携し死獅王にダメージを与えていた精霊・マリアは唖然としてしまっていたがヒロムは違った。
「見逃すわけないだろ鉄仮面野郎が!!」
戦いを邪魔したパラディンにヒロムは一気に間合いを詰めると顔を隠す鉄仮面を砕こうと顔に一撃を食わせようと拳撃を放とうとする……が、ヒロムが拳撃を放とうとしたその時、パラディンはヒロムの前から動く気配も動作もなくその姿を消しており、それに気づいたヒロムが攻撃の手を止めるとその背後にパラディンは現れ、そしてパラディンは軽く拍手をするとヒロムに向けて何かを話し始める。
「コイツ、いつの間に……
「いやいや、流石は姫神ヒロム。《覇王》の異名を持ち現代において幻想と断言されていた精霊を宿す能力者の部類においてのイレギュラー、そしてこの日本という国を縛るルールを壊した大罪人だ」
「あ?大罪人だと?オマエ、何ふざけたを……」
パラディンが口にした『大罪人』、それが何を指すのか分からない……いや、そもそもそんな事を言われる筋合いなどないとして反論しようとするヒロムはパラディンの方に体を向けようとしたが、ヒロムがそうしようとするとパラディンはいつの間にかヒロムの前に立っており、振り向こうとしていたヒロムの目の前に後ろにいたはずのパラディンが現れたことでヒロムは思わず距離を取ろうと後ろに跳んでしまい、ヒロムが距離を取ろうとするとパラディンは鉄仮面の奥で軽く笑うとその直後に溜息をつき、そしてパラディンの声色が変わるとその口からはこれまで出ることのなかった言葉が次々に発せられる。
「……オマエは覇王などと呼ばれるべき人間では無い。オマエは愚者、他人を狂わせその運命すら滅びに招く消えるべき存在だ。数多の憎しみを向けられそれを罪として背負いその命の鼓動を閉ざさせる、それがオマエに唯一許された贖罪であり唯一の選択だ」
「何を……」
「オマエがこの世に生まれなければ救われた命が数多とある。星の数ほどある失われた命、その消えた命から目を逸らすオマエは何れ死獅王の計画の実現のための贄として利用され消えればいい。そう、オレの憎しみをも受け止めてな」
「オマエの憎しみ、だと……?オマエは一体……」
これ以上は無駄、とパラディンはヒロムの前から消えるなりクロトとキラが拘束しようとしていたシェリーのもとへ現れると2人から彼女を助け出すと死獅王のもとへと瞬間移動のように連れ去り、そしてパラディンは自身と死獅王、シェリーの足下に大きな方陣を生成させながらヒロムを指差すと彼に向けて冷たく告げようとした。
「姫神ヒロム……オレの正体を知りたいのなら過去と向き合え。そして、己の過ちを悔いろ。オレの怒りと憎しみを受け止める気になった時、オレの手で殺してやるよ」
「待ちやが……」
待ちやがれ、とヒロムが言葉に出そうとするもその途中で方陣が光を発して死獅王たちを消し去って方陣そのものが消滅し、何の成果もなく敵が消えるとヒロムは悔しそうに拳を握ってしまう。
「クソが……っ!!」