24話
突然どこからか現れた少女により吹き飛ばされた死獅王。死獅王を吹き飛ばした少女はヒロムの前で構え、彼女が構えるとヒロムも首を鳴らすなり死獅王を視界に入れながら構え直そうとした。
突然現れた少女、長い紺色の髪に緑色の瞳、腕や臍を露出するような衣装の上に獅子、虎を思わせるアーマーを装備した彼女は腰に大鷲を思わせるような腰布を巻き、足には豹を思わせるような造形のブーツを履いており、その両手には拳だけでなく腕をも武装させるかのように琥珀色のガントレットが装備されており、死獅王を吹き飛ばした少女の姿を初めて目にするレイガは構える中でヒロムに彼女について詳しく説明してもらおうといくつかの質問をしようとした。
「ヒロムさん、彼女も精霊……なのか?」
「ああ、名はマリア。オレの宿す精霊の中で武闘に秀でた精霊でありその拳は悉くを粉砕する力を秘めている。一撃の重さならレイガより優れてるかもしれねぇな」
「ヒロムさんが言うなら間違いなさそうですね。現に魔力を纏うアイツに当然のように一撃叩き込めてる点はオレを越えてますよ」
「謙遜すんなレイガ。オマエの拳も決まれば魔力の有無無視するくらいは簡単なはずだ」
「敵を前にしてお互いを評価し合うのはいいですがマスター、相手はまだ倒れていないので集中して貰えると助かるわ」
「ああ、悪いなマリア。レイガ含めてこの人選なら死獅王に適応出来ると思うと少し余裕が出来ちまった」
「余裕が出来たとは聞き捨てならないな……」
少女・マリアの……精霊である彼女の登場に余裕が出来たというヒロムの言葉が聞き捨てならなかった死獅王はその感情を表すかのように殺気を強く放ち、死獅王から放たれる殺気を向けられるヒロムはため息をつくなり敵を冷たい眼差しで睨むと対抗するかのように殺気を飛ばし、ヒロムの飛ばした殺気と死獅王の放つ殺気がぶつかりあったのか2人の間で火花のようなものが一瞬弾け、2人の間で何かが弾けるとヒロムは死獅王に向けてある事を口にし始めた。
「勘違いすんなよ死獅王。オマエ相手にさっきのが本気だと思ってんなら訂正しとけ。さっきのは様子見、本番はこっからだ」
「様子見だと?ナメたことを……
「ナメてんのはどっちだ?オマエだってまだ本気じゃないだろ?さっさと出せよ……本気を」
「貴様……!!」
「出さないんなら……出させてやろうか?」
死獅王が未だに本気でない事を指摘した上で挑発して煽り、煽られた死獅王が怒りを抱き始める中でヒロムは右足の爪先で地面を数回トントンッと叩くと姿を消し、姿を消したヒロムの行方を死獅王が気配を探知して追おうとするとヒロムはその背後に現れると同時に背に蹴りを叩き込んで仰け反らせ、死獅王で仰け反ると間髪入れずにマリアが接近して連撃を繰り出し全て命中させ、さらにヒロムは高く飛ぶなり死獅王の頭に回転蹴りを喰らわせると共に蹴り飛ばし、蹴り飛ばされた死獅王が立ち上がろうとするとヒロムはすでに死獅王の前に立っており、それに気づいた死獅王が身構えようとするとヒロムは死獅王の顔に拳を叩き込み、一撃を叩き込まれた死獅王がまたしても仰け反ると今度はレイガが接近してきてヒロムの一撃に追撃しようと両手の拳に力を入れ仕掛けようとした。
「獣身武闘、連撃……虎連撃!!」
仰け反る死獅王に接近したレイガは目にも止まらぬスピードで拳の連撃を繰り出し放ち、放たれた連撃は全て死獅王に命中し、連撃を受けた死獅王の全身に叩き込まれる拳から伝わる衝撃が炸裂してダメージが与えられ、そしてレイガの連撃の最後の一撃が叩き込まれると死獅王は勢いよく殴り飛ばされて倒れそうになってしまう。
「こんなもの……っ!!」
倒れそうになるも死獅王はレイガの連撃を受けて負った衝撃によるダメージに耐えながら持ち堪えるとすぐに構え、構えると同時に魔力を周囲に撃ち飛ばすかのように解き放ってヒロムたちにぶつけようとした。
が、ヒロムは死獅王が解き放った魔力が迫る中で右手を前に伸ばし出すなり迫り来る魔力を難無く防ぎ止め、さらにヒロムは右手に力を入れるようにして強く振り払うと死獅王が解き放った魔力を薙ぎ払い全てを消滅させてみせた。
「すげぇ……これがヒロムさんの……!!」
「魔力を纏うという基本すら出来ない貴様が能力者の境界を壊すというのか……!!」
「……基本とかそんなのどうでもいいから出せよ、オマエの本気。もうオマエの加減した力じゃ相手にならないのは分かったろ?さっさと本気出せよ死獅王」
死獅王の魔力を素手で薙ぎ払ったヒロムの実力を目にして圧倒されるレイガとヒロムのその実力に何かを危ぶむ死獅王、その死獅王に本気を出せとヒロムは中指を立てながら告げ、ヒロムの言葉と行動に死獅王は息を吐くなり何故か魔力を消し、これまでヒロムたちに向けられていた殺気もその一切が消えてしまう。
何か起きる、ヒロムとレイガがそう感じ警戒しようとすると死獅王の全身から黒い雷と風が解き放たれるように現れて彼の身に纏われ、雷と風を纏った死獅王の眼が殺気に満ちた鋭いものへ変わるとヒロムたちと死獅王のいる空間の空気が一気に張りつめ重々しいものへと変わってしまう。
「望み通り本気になってやろう、覇王。そして後悔させてやる……このオレを本気にさせたことをな!!」
「やれるもんならやってみろ……死獅王!!」
本気になった死獅王を前にしてこれまで以上にやる気となり気を漲らせるヒロム。ヒロムと死獅王、両名が敵を倒すべくやる気になる中、それを邪魔するかのように突然天から何者かが降り現れて2人の間に立ち、現れた何者か……鉄仮面を着けた剣士にも見える装いのそれはヒロムと死獅王の戦いを邪魔するように話始める。
「……ここまでだ、死獅王。この男の相手は今じゃない」