23話
死獅王を倒そうと動き出したヒロムとレイガ。2人が動き出し攻撃するべく接近しようとする中で2人の標的となっている死獅王は2人を威圧するように殺気を放ちながらその身に魔力を強く纏って拳を構え、ヒロムは死獅王を倒すべくレイガと敵に向けて走る中で突然死獅王に対して左側に逸れるように進路を変えながら駆ける足を速くさせ、ヒロムが死獅王から遠ざかるように走る一方でレイガはヒロムのその行動に疑問を抱くような事も無く死獅王へと迫ると勢いをつけると同時に敵を殴るべく仕掛けようとした。
が、死獅王はレイガの攻撃に対して難なく回避を行うと間合いを取ろうと数歩下がり、死獅王が数歩下がり間合いを取ろうとするとレイガは踏み込むと同時に素早く蹴りを放って死獅王の頭部を狙おうとした。死獅王はレイガのこの蹴りをも容易く躱してみせるがレイガの攻撃はここで終わらなかった。
蹴りを躱されたレイガは蹴りを放つために地に着けていた軸足で地面を蹴って飛び上がると同時に体勢の悪い状態の中で体を回転させて勢いをつけさせながら死獅王との距離をもう一度詰め、今度は回し蹴りを放って死獅王に命中させようとした。しかし……
「成長も進歩もない……貴様はどこまでも弱いままだな」
レイガが放つ回し蹴りが死獅王へ迫る中、死獅王は何を思ったのか手を伸ばすとレイガの回し蹴りを放とうとする足を掴み止め、そして死獅王はレイガの足を掴んだままその場で回転し新たな勢いを生み出すと同時に足を掴まれたまま回転された事で振り回されるような状態となり体勢を立て直すことも出来ないレイガを勢いそのままに地に叩きつけようとした。
このままじゃまずい、地に叩きつけられそうになるレイガが自身の危険を悟り危機感に襲われる中、死獅王から逸れるように分かれたはずのヒロムが死獅王の頭上に飛び込むようにして現れるとその勢いのまま死獅王の頭を蹴ろうと一撃を放ち、レイガを地に叩きつけようとしていた死獅王はヒロムの接近と自身への攻撃に気づくとレイガの足を掴んでいた手を離して両手で止めるように構えながらヒロムの蹴りを防ぎ、ヒロムの攻撃に対して死獅王が防御を選択した事で危機を逃れたレイガは地に背を打ちつけるような着地をしてしまうも後転するように立ち上がって身を起こすと死獅王を倒そうと拳に力を溜めながら一撃をヒロムの攻撃を防いだばかりの敵の体に叩き込もうとした。
「獣身武闘……虎撃!!」
ヒロムの蹴りを防いだことで胴体がガラ空きとなった死獅王に一撃を叩き込もうとレイガは力を溜めた拳で正拳突きを繰り出し直撃させようとし、ヒロムも死獅王に蹴りを防がれるも止まろうとせずむしろ防がれた蹴りを放った足とは逆の足を勢いよく振り上げると不安定な状態から死獅王の脳天を砕こうと踵落としを繰り出そうとした。
上からはヒロムの踵落とし、さらには防御直後の状態を追い詰めるかのようなレイガの正拳突きが迫る中で死獅王はどのように防ぐか試されるような状態となるが、死獅王は舌打ちをするなり気合を入れるかのような一喝を発すると同時に纏う魔力の一部を炸裂させて衝撃波を生じさせる事で攻撃しようとするヒロムとレイガの攻撃を防ぎながらも2人を引き離して防御と間合いの確保を同時に成し遂げてみせた。
衝撃波により攻撃を防がれるだけでなく死獅王から引き離されるように飛ばされたヒロムとレイガ。レイガは何とかして受け身を取り立て直そうとするが、一方のヒロムは着地すると同時に首を鳴らすと一瞬で死獅王の前まで接近し、そしてヒロムはそのスピードのまま敵の腹に拳を叩き込む事で死獅王に一撃を食らわせながらその力で殴り飛ばしてみせた。
「っ……!!」
ヒロムの瞬間での接近と間髪入れずの一撃を受けた死獅王は大きく殴り飛ばされるも空中で殴り飛ばされた際の勢いを殺して見事な着地を決めるとヒロムが睨みながら構えようとし、死獅王に一撃を決めたヒロムはレイガに視線を向け、レイガがヒロムの視線に気づくと彼はレイガに向けて無言のまま頷き、そしてレイガも応じるかのように無言のまま頷くと2人は同時に走り出し、今度は2人とも死獅王の真正面から攻めるように接近すると同時に正拳突きを放って死獅王を殴ろうとした。
だがこの2人の攻撃は死獅王からしたら何の面白みも無い真正面からの単純な攻撃でしかなく、ここまでヒロムの一撃を受ける以外に攻撃を受けずに戦っている死獅王にとっては止めることなど容易いと思えてしまう程であり、死獅王は両手に魔力を強く纏わせた上で2人の正拳突きを掴み止め、そして死獅王は2人の拳を掴み止めた両手に力を入れ、その力で2人の拳を握り砕き潰そうとした。
「この程度とは笑えんな。どうせ2人で来るなら、もっとオレを追い詰め……」
2人の拳を握り潰そうとする死獅王に余裕が生じ、それは同時に一種の油断を生み出したらしく死獅王が2人に対して呆れたような言動を発せようとしたその時、ヒロムとレイガの間を潜り抜けるようにして何かが死獅王に接近すると死獅王の体に強い衝撃波叩き込まれ、衝撃が叩き込まれた死獅王はそれに耐えられず2人の拳から手を離すと勢いよく吹き飛ばされて倒れ、何が起きたか分からない死獅王がどうにか起き上がろうとすると彼を吹き飛ばした何かがヒロムの前に立ち死獅王はその姿を視認することとなった。
ヒロムの前に立つ死獅王を吹き飛ばしたもの……それは1人の少女だった。
「女、だと……!?」
「ナメたこと抜かすなよ死獅王。オレたち相手にするんなら2人だけなんて勘違いするなっての」
