118話
リクトの攻撃、次から次に仕掛けられてくるその攻撃に対してヒロムは自身の宿す精霊の扱う武器と同じものを稲妻を変化させる形で生み出す形で全て対処し、互いに引くことをせず相手を仕留めようと同時に一撃を放とうとした事でヒロムとリクトが放とうとした攻撃が衝突しようとした。
白銀の稲妻纏う双剣で一撃を放とうとするヒロムと光剣で一撃を放とうとするリクト。
一撃を放とうとする2人の武器が譲ることを知らずにぶつかろうとするが、武器同士がぶつかろうとするその瞬間、ヒロムが振る双剣が纏う稲妻が爆ぜてしまい、それによって双剣に大きな亀裂が生じるとヒロムの手にする双剣は砕け散ってしまう。
「残念だったな……ヒロム!!」
ここに来ての自壊に等しい武器の損壊にヒロムの足はもちろん止まり、一方的に迎えたこの展開を逃す気などないリクトは光剣を強く握ると勢いよく振り抜きヒロムを仕留めようとした。
最悪のタイミングでの武器の損壊はヒロムの中に出来ていた流れを止めるには十分であり敵に対して与えてはいけないチャンスを与える展開を招いてしまった。が、リクトが振る光剣が迫ろうとしている今、ヒロムの顔に焦りなど見られなかった。
それどころか……ヒロムはこの状況で落ち着いていた。
光剣が迫る中でヒロムは止めた足を再び動かすと同時にリクトに背を向けるように体を回転させ体勢を低くさせながらリクトの振る光剣を躱し、さらにヒロムは素早く回転しながら立ち上がるとその勢いのまま鋭い爪を有したグローブを装備した左手でリクトを切り裂こうとし、ヒロムの咄嗟の反応と行動により攻撃を躱されたリクトは光剣を持ち直すとヒロムの爪による攻撃を止めようとした。
ヒロムの爪による攻撃に対して慌てて防御しようとするリクトが構え直した光剣はヒロムの攻撃を止めてみせるが、リクトの光剣が爪を防ぐと同時にヒロムは全身はもちろん爪に対しても稲妻を強く纏わせると一撃の力を高めさせて光剣を押し返す勢いでリクトを吹き飛ばし、高められた一撃を受け止めていた光剣が砕け散るとリクトは吹き飛ばされる勢いをどうにか殺しながら立て直そうとした。
ヒロムの方もリクトへの一撃を放った影響からか左手の爪とグローブが砕け散るようにしながら消えてしまうが、ヒロムは素早く白銀の稲妻を左手に集めるとグローブを装備する際に1度消した琥珀色のガントレットを再び形成させて左腕に装備させて武装面を万全に整え、拳を構えたヒロムはリクトが立て直そうとする中で彼よりも先に動き出そうと駆け出した。
「しつこい男は嫌われるぞヒロム!!」
ヒロムが駆け出し迫ろうとする中でリクトは立て直しに成功すると闇を纏いながら無数の光弾とエネルギー弾を生成・掃射を同時に行う事でヒロムを迎撃しようと試みるがヒロムはリクトが放つ攻撃を素早い身のこなしで躱しながら距離を確実に詰めようと加速し、加速するヒロムはリクトとの間合いを詰める中で拳に力を入れながら何かを仕掛けようと考え、ヒロムが何か仕掛けようと考えているだろうと察していたリクトは彼のその思考が答えを導き出す前に決めようと爆炎と雷撃を出現させるとヒロムに向けて解き放とうとした。
「受けて滅びろ……!!」
確実に間合いを詰めようとするヒロムに対してリクトは爆炎と雷撃を同時に解き放ってみせ、解き放たれた爆炎と雷撃はその力を高めながらヒロムに襲いかかろうとした。
この攻撃を今のヒロムならどう対処する？
リクトにとって今のヒロムは自身の想定している範疇を大きく超えた成長を遂げた存在として警戒するだけでは足りず、想定を超える成長を遂げた以上リクトのその想定の外の可能性を秘めていると考える必要があり、その可能性を秘めているかどうかを試すことで自らとの差を測り直そうと考えていた。
「さぁ……オマエの選択を見せろ!!」
「いちいちうるせぇ野郎だな」
そのリクトの思考など気にもしていないであろうヒロムは全身に纏う白銀の稲妻の力を強くさせるとそれを水色へと染めながら急激な加速を起こすと共にリクトの攻撃を躱すように消え、ヒロムの姿が消えた事に驚きを隠せないリクトが消えた彼の行方を把握しようと周囲の気配を探ろうとするとヒロムはリクトの周囲にいくつかの残像を残しながら彼の前に現れると両腕のガントレットに琥珀色の稲妻を纏わせながら連撃を叩き込んでみせ、連撃を叩き込まれたリクトは防ぐ事が間に合わず全て直撃で受けると大きく仰け反ってしまう。
ヒロムの連撃を叩き込まれ大きく仰け反ってしまうリクト。そのリクトはどうにか体勢を直すとヒロムに反撃しようと考えるが、彼が反撃しようとしたその瞬間、彼を挟撃するかのように精霊・マリアとフラムが迫り攻撃を仕掛けようとした。
「邪魔をするな……精霊!!」
迫り来る2人の精霊を邪魔と称するとリクトは左右に強い力を解き放って2人の精霊を始末しようとするが、リクトの攻撃を読んでいたかのようにマリアの前にフレイが現れて大剣を盾にしながら攻撃を防ぎ止め、さらにフラムの前に盾を構えたシェリーが現れるとリクトの彼女への攻撃を防ぎ止めてみせた。
攻撃を防いだフレイとシェリー、2人の援護を受けたマリアとフラムは彼女たちを躱すように駆けてリクトに接近し、マリアへの攻撃を防ぎ止めたフレイも大剣を構え直すと攻撃に加勢しようとした。
「「「はぁぁぁぁ!!」」」
フレイたち3人の精霊がリクトに攻撃を放とうとしたその瞬間、フレイは金色、マリアは琥珀色、フラムは薄紫色の稲妻をその身に纏いながらリクトに接近して一撃を放ち、3人の精霊の身に起きた変化に気づいたが故に反応が遅れたリクトは3人の攻撃を直で受けてしまうと負傷しながら勢いよく吹き飛ばされてしまう。
吹き飛ばされたリクトはその勢いのまま1度倒れてしまうもヒロムたちに追撃されないようにすぐに立ち上がり構えようとするが、その中でリクトはフレイたち精霊が色は異なれどヒロムのように稲妻を纏っているという事実に驚愕するしかなく、その事実を内心で『ありえない』と考えたリクトは目の前の光景を否定するためにヒロムに対して強く問おうとした。
「何をした……ヒロム!!オマエはその精霊共に何を与えた!?」
「与えてもいないし何もしていない。これがオレたちの力、精霊と主という存在における在るべき形だ!!」
リクトの言葉に対して迷う事も考える事もなく起きている事とその真相を明かし、そして自分たちの力について強く言葉にしたヒロムのその言葉を裏付けるかのようにフレイたち精霊はそれぞれが異なる色の稲妻をその身に強く纏い、彼女たちが稲妻を強く纏うとヒロムの瞳は虹色の光を帯び始める。
そして……
ヒロムたちに変化が起きたこの瞬間を狙ったかのように……
リクトが纏う《オーバーロード・ギア》に小さな亀裂が生じ始めていた。
だがそれを誰も気づいていない。纏う張本人も、それを纏う男を相手にするヒロムも……気づいていようといなくても、彼にはそんな些細な事は関係なかった。
「いくぞリクト……!!オマエとのうんざりな因縁、今ここで終わらせてやる!!」
リクトを倒す、その目的を果たすために戦うヒロムはただ彼を倒し戦いを終わらせる事しか見えていないのだから……
