115話
白の空間の中で少年がヒロムに受け取るよう促してきたものは白銀のブレスレットであった。片方は金色、青色、琥珀色、緋色、白色、緑色、水色の計7つの宝玉が施されたものであり、もう片方には紫色、赤色、薄紫色、藍色、黒色、桃色、瑠璃色の計7つの宝玉が施されたものであった。
目の前に現れた左右一対の白銀のブレスレット、それを目にしたヒロムは少年の方を見て驚いた様な反応と共にブレスレットの存在について尋ねようとした。
「これは……本当に《レディアント》なのか?」
『本当に、とは?』
「少し前にオレの腕に着いていたものとは形状どころか内に秘められてる力の気配も違い過ぎる。それに……今までのが仮初ってのも気になる」
『仮初は仮初、オマエが悲しみから救われ取り戻したものは精霊が2つに対立していた影響によりオマエの望む力を出すには相応しくない器だけのものだった。だがオマエは今回のこれまでの戦いの中で対立を無くすだけでなく対話し並び立つことを成功させた。本来ならばそこでこれをオマエが手にしてもよかったはずだったが……コレがオマエの心を拒絶した』
「オレの心を?意思がどうとか言ってなかったか?」
『それはあくまで心の先にあるものだ。この空間に現れたコレはオマエのもとへ現れようと一度は試みてはいるがその段階でオマエの心を拒絶して白銀の稲妻を宿すだけの仮初を与え直して消えた』
「……オレの何がコレに否定させた?」
『簡単な話だ。オマエの心の先……意思のそばにオマエ自身の戦う理由が伴っていなかったからだ』
「戦う理由?」
現れた白銀のブレスレットはヒロムの心を拒絶したと話す少年はその理由がヒロムの意思とあったとされる『ヒロムが戦う理由』にあると語り、彼の言う自分の戦う理由が何故拒絶される要因となったのか分からないヒロムが尋ね返すと少年は指を鳴らして何かに向けて合図を送り、少年が指を鳴らすとヒロムと少年の周囲に無数のスクリーンが現れ、現れたスクリーンには死獅王の件について奔走し今相手をするリクトとの戦いに至るまでの全てを振り勝てるかのような映像が流れ始めた。
「これは……」
『これはオレとコレが見届けてきたものだ。そしてこの映像こそがコレがオマエを拒絶した全ての要素となる』
「要点だけ話せないのか?」
『そうだな。まわりくどいのはやめよう……この数日の戦い、オマエは何のために戦っていた?』
「あ?そんなもん、敵を……
『そう、オマエは敵を倒す事を優先して戦っていた。そのためにオマエは仲間を集め精霊と協力して勝利していた。その倒すためだけの戦いを受け入れるようなオマエの心……そこにあるオマエの戦いへの意思がコレは気に入らなかったようだ』
「なら、何でコレは拒絶したはずのオレを受け入れた?」
『全てはオマエが八神リクトの言葉に対して己の意思と覚悟を示したからだ。オマエは自らの全てを賭してでも守りたいもの、守れるものを守るために戦う事を言葉とし、そして覚悟として示そうとした。そんなオマエの意思と覚悟をコレは認めたんだ』
「守るために戦う……」
『オマエは自分を犠牲にする事を厭わないつもりで言ったのだろうがコレはそう思ってはいない。目的のために全てを壊す事を決めた八神リクトに対してオマエ1をもって多を救う道を進む事を意思として示した。そのオマエが示した意思と覚悟を真に遂げようというのならオマエと1つとなりてオマエの未来を正しく導けるとオマエを認めたんだ』
「未来……」
『手にするかどうかはオマエ次第だ。だがこれだけは忘れるな……ヒロム、オマエはこの先多くの困難に襲われる。そんな時、オマエがそれでも示した意思と覚悟を覆さないのであればコレは精霊と共にオマエの力となる事を』
「オレの力に、か……悪くないな」
少年の言葉を受け自身が目の前に現れた白銀のブレスレットとこの白の空間に何を示したのかを理解し、そしてこの白銀のブレスレットが自身の力になるとした旨の言葉を口にした少年の言葉を受け入れるようにヒロムは両手をそれに向けてかざし、ヒロムが両手をかざすと金色をはじめとした7つの宝玉が施されたブレスレットが右手首に、紫色をはじめとした7つの宝玉が施されたブレスレットが左手首に装着される。
左右一対のブレスレットを装着したヒロムの強い眼差しを少年に向け、強い眼差しを受けた少年が静かに 頷くとヒロムは光と共に空間の中より姿を消す。
が、ヒロムが消えた白の空間の中で少年は残り、そしてその少年のもとに白いドレスに身を包む長い銀髪の少女が現れ彼に話しかけようとした。
『彼は……私たちの思いに応えてくれますか?』
『さぁな。こればかりはオマエが信じたアイツを信じて未来を見届ける他ない。アイツに《レディアント》を託した側として……そして、《レディアント》の存在を隠した側と《レディアント》と騙った側としてな』
『……アナタは未来を望んでいないのですか?』
『アイツがどんな道を行くか、それ次第だ。今のオレは単にアイツの中にあったものとしてここに寄生しているだけの厄介者、アイツの中で未来を待つオマエの話し相手になる程度の役にしか立たない代役だ』
それに、と少年は少女の顔を見るなり突然闇を纏い、闇を纏った少年は黒衣に身を包むと髪色を漆黒に染めながら冷たい眼差しを彼女に向けながら忠告しようとした。
『アレがオマエのもとを離れてアイツに託された今、止まっていたものが動き出す。滅びに繋がるか救いに繋がるか……それとも永劫の未来に繋がるか、何にしてもこれからのアイツの行動を見届けさせてもらうとするが、オマエは余計な手出はするなよ』
『ええ、もちろんです。アナタも……私に手出されたくなければ大人しくしていてくださいね……■■■■■』
『はっ……オマエくらいだ。それでオレを《呼ぶ》のはな』
何やら不穏な空気を残すような会話をした2人。少年は闇と共に消え、少女は涙を流すと空間を光で満たそうとするとその姿を消してしまう。
ヒロムが消えた後も彼無しで事が進む『何か』を暗示するような会話。果たして……