110話
ティアーユ、フラム、シェリー。3人の精霊の加勢に苛立ちを見せるリクト。そのリクトを倒すべく新たに現れた精霊を含めた7人と連携を試みようと考えているヒロムだが、先程自身をリクトの攻撃から身を守った盾と槍を持つ少女・シェリーの名前に反応してか彼女を見ながら聞き返してしまう。
「あっ、オマエの名前……シェリーてのか?」
「はい、マスター。悲しい事に敵の名前と被っていて気にはなるかと思いますが、どうかよろしくお願いします」
「……名前が被ってただけで気にする要素何かあるか?」
「はい?」
「あのクソ女は十神シエナ、オマエはシェリー。オレからしたらその程度の認識しかない。あのクソ女が名乗ってたなとか思ったくらいで何も思ってないから変に気にしなくていい」
「……ふふっ、嬉しい言葉をありがとうございます。では、アナタのために私の力を振るわせていただきます」
「頼む。さぁ……いくぞオマエら!!」
ただ名前が被っていた、単にそこが気になっただけだと話すヒロムの言葉に嬉しさを見せたシェリーは彼の思いに応えるべく力になろうと武器を構え、シェリーに対して期待を向けるとヒロムは彼女だけでなくフレイたちにも同じ思いを向けようと言葉を発しながらリクトを倒すべく走り出し、ヒロムが走り出すとフレイたちも構えると同時にリクトを倒すべく迫ろうとした。
「数を増やしたところでオマエにオレを倒せない事は変わりない!!」
「まぁ、ずいぶんと大きく出るのね」
精霊の数が増えようとそれで倒すには至らないとヒロムを否定しようとリクトは闇を強くその身に纏いながら迎え撃つべく構えようとするがそのリクトの邪魔をしようと新たな精霊の1人・フラムが当たり前のようにリクトとの間合いを詰めると鋭い爪を施したグローブを壮美した両手で連撃を放ち、フラムの放つ連撃に対してリクトは闇を纏いながら素早く躱して反撃を窺おうとした。
が、フラムの連撃は単なるグローブの爪を用いた裂切を伴うものだけでなく蹴りによる脚技も用いられており、この脚技の存在がリクトの狙う反撃に移行する瞬間を遮ってしまっていた。
「どうしたのかしら?数を増やしたところで勝ち目は無いと言いたげでしたが私単体にこのザマでは情けないと返されますよ?」
「この、面倒な……!!」
「面倒で結構……それより、タイミングはバッチリ?」
「ええ、助かりました」
リクトの言葉を受け流すように返したフラムの問い掛けるような言葉に対して水色の光を纏った双銃構えし少女・ティアーユが周囲に無数の残像を残しながら天高くに現れ、ティアーユの出現を確認したフラムは勢いよく後方へ跳んでリクトとの距離を離し、そしてその瞬間、ティアーユと彼女の残した無数の残像がリクトに向けて双銃を構えると全員が一斉に銃口から光弾を撃ち放つことで光弾を雨の如くリクトへと掃射させ、掃射された多量の光弾に対してフラムの連撃を躱し反撃のタイミングを窺っていたリクトは咄嗟に防御しようと闇で全身を包み込もうとした。
が、リクトが防御を行うべく全身を闇で包み込もうとした瞬間にランスを構え加速しながら駆けてきたシェリーが離れた位置で突きを素早く放つとリクトに向けてランスの動きによって生じたエネルギーを衝撃として打ち放ってリクトにぶつけ彼の行動を妨害し、シェリーの妨害を受けたリクトに一瞬とはいえ行動の停止時間が生まれた事で光弾はその全てがリクトに直撃し、光弾の全てが直撃した事でリクトが《オーバーロード・ギア》を発動させてから初めて仰け反る姿をヒロムに見せ、敵の仰け反る姿を目にしたヒロムは畳み掛けるべく加速しながらリクトに迫ろうとした。
「ここだろ、やるなら……
「読みが甘い……!!」
畳み掛けるなら今しかない、そう考え一気に迫ろうとするヒロムに対してリクトは彼の思考が成す読みが甘いとして返すと素早く体勢を立て直すと同時に瞳を妖しく光らせ雷撃をヒロムの背後、死角となる場所の空間の無から出現させてヒロムに直撃させようとした。
雷撃の出現に視認無しで気配だけで気づいたヒロムは一瞬足を止めるかを迷うような素振りを見せるがリクトを倒す上で素早く思考した結果なのか止まろうとせずに加速してリクトに迫ろうとし、無防備に背を向けたまま走るヒロムの判断にリクトは哀れだとでも思っているかのような表情を見せながら指を鳴らすと彼の背後に出現させた雷撃の力を強くさせながらヒロムにぶつけようとした。
が、リクトが雷撃の力を強くさせる判断をしたその瞬間、先程ヒロムを守ったシェリーが今度はヒロムの背を守るように現れると盾を用いて雷撃を完全に防ぎ止め、シェリーが雷撃を防ぎ止めた事で自身に迫り来る脅威が去ったヒロムはリクトを倒すべくさらに加速し……
「そろそろ潰されろよリクト!!」
「しつこいんだよ、オマエは!!」
「オマエがくたばれば終わる……観念しろ!!」