102話
シンクを倒した事で逃げた人々を追いかけようと動き始めようとするリクトを相手にするべく現れたクロト、アスラン、レイガ、獅天。
軽傷でヒロムやトウマの話し合いに同席していたレイガと獅天だけでなくリクトの攻撃によりダウンしたと思われていたクロトとアスランもそんな事などなかったかのように武器を構えており、4人の介入に対してリクトは少し鬱陶しそうな顔を見せ、そして全身から闇を放つように外へ溢れ出させると自身を倒そうと考えているクロトたちに向けて冷たく言葉を告げようとした。
「ヒロムに魅入られた愚かな戦士共が……オレの敵になろうなんて考えなければ幾許かの猶予を与えられその命に感謝する事が出来たものを……鬼桜葉王の力で動けるように回復してもらったようだが、どうやらオマエらはせっかくの恩情を無下にしてでも早死したいらしいな」
「戯言、オマエは必ず罰を受ける。下す相手がオレたちかヒロムでないかの違いなだけでオマエがこの先の未来を支配するなどということはありえない」
「おかしな事を言う男だな、黒月クロト。そもそもいいのか?オマエらは仲良しごっこのつもりで徒党を組んでいるようだがその中にいる獅天は記憶を書き換えられていたとはいえ敵対してこの国を脅かした人間……その獅天をオマエらは野放しにするだけでなくオレを倒すために利用する気なのか?」
「否定、獅天には抵抗出来なかった理由があった。故に訳ありとしてオレたちの作戦に手を貸してもらっている。利用ではない、共闘だ」
「貴様は何を思っているかは知らないが姫神ヒロムは不当な理由で行動を起こさない。だからこそオレたちは獅天を迎え入れ力を借りてここに来ている」
「アンタが思うようにはならない。オレたちはヒロムさんの意志のもとでアンタを倒す!!」
「八神リクト、貴様の傲慢さがオレを利用した事は許せぬ事だ。だが、オレは貴様に利用されたおかげでこれまで理解出来なかったことを理解出来たと感謝している」
「感謝、だと?」
「己が強さに拘りすぎていた事、レイガのようなまっすぐな心を持てなかった事、そして……困難を乗り越えるためには自らの弱さを受け入れる必要がある事を理解出来た。感謝しておくぞ、八神リクト」
「ふん、感謝か……くだらんな。そんなものは望んでいない。オレが望むのは……変革を起こすこと、それだけだ」
クロト、アスラン、レイガの言葉に続くように発言した獅天のその言葉に関して『くだらない』と切り捨て、自身が望むのは自らの実現しようとする変革だけだと語り、リクトの言葉を受けたクロトはため息をつくとアスランとレイガ、そして獅天に向けてリクトと戦うべく指示を伝えようとした。
「指令、標的は目の前の男ただ1人だ。手段、結果は問わない……オレたちが駆けつけるまで民間人への被害を0で抑えてくれていたシンクの行動を無駄にしないためにもここで仕留めろ」
「勝算は?」
「……低目、今のオレたちでは足止めが関の山と考えておくべきだ。だが、オレたちに諦めるなんて選択肢も足止めで満足するなんて事は許されない。今は頭の中に思い浮かべろ……ヒロムならどう考えて戦うかを!!」
「ふっ……姫神ヒロムなら、倒すまで止まらないだろうな」
「覇王は必ず立ち上がり続ける。ならばオレたちも立ち止まることは出来ない」
「ここで倒す。たとえ倒すに至らずとも……ヒロムさんの見る未来に繋げてみせる!!」
「ほざけ!!」
クロトの言葉によって心が1つになり団結する彼らに苛立つように言葉を発しながらリクトは闇を衝撃波に変えながら攻撃を仕掛け、衝撃波が放たれるとクロトたちはそれを避けると同時に走り出して敵を倒そうとリクトへ迫っていく。
「連携、レイガと獅天は打ち合わせ通り頼むぞ!!」
「貴様らのタイミングに合わせて動く、遠慮はいらん!!」
「応!!」
「貴様らの頼み、聞き受けた!!」
「討伐……!!これより、オレたち『問題者集団』は死獅王にまつわる事件の黒幕を駆逐する!!」
「やれるものなら……やってみろ!!」
ここに現れる前に既に打ち合わせしていたであろう内容を確認するような会話が行われた後でクロトは士気を高めるかのように強く叫び、それを聞いたリクトは受けて立つと言わんばかりに瞳を妖しく光らせ始める。
リクトが瞳を妖しく光らせるとそれに気づいた獅天が加速すると同時に一気に距離を詰めてリクトに仕掛けようとし、仕掛けようとする獅天はリクトを見るなり攻撃を放たずに突然背後へ回り込み、獅天の背後への回り込みを受けたリクトが対応するべく後ろを向こうとするとそれを待っていたかのようにアスランが自身の能力で構築した剣を手にしながら迫ろうとし、アスランの気配に気づいたリクトは彼に冷たい眼差しを向けると同時に闇を光線のように撃ち放とうとした。
が、リクトのそれを察知していたと思われるレイガが緑色の炎と雷鳴を纏いながらアスランの前に立ってリクトの攻撃から彼を守り、レイガにより助けられたアスランは彼を躱すようにして間合いを詰めると斬りかかろうとし、さらに獅天は黒い風と雷を纏わせた拳でアスランの攻撃に加勢しようとし、そして……
「連動……!!決める!!」
アスランと獅天の攻撃が迫ろうとする中でクロトは自身の武器である短剣に魔力を雷撃のように纏わせながらリクトに迫って一撃を放とうとするが、リクトは瞳を妖しく強く光らせると3人を問答無用で吹き飛ばし対処してしまう。
「失敗……次だ!!」
「コイツら……」
(今の連携、ただタイミングよく合わせてるのではなく《オーバーロード・ギア》の攻撃を感知したかのような動きでオレを乱そうとしているように見えた。単なる偶然……ではなさそうだな。考えられる可能性は……)
「……なるほど、ヒロムか。体力の限界で倒れても尚、オレの変革を止めるために思考を働かせたか。いいだろうヒロム……これがオマエが導き出した答えによるものだと言うのならば、それを悉く拒絶してやろう!!」