100話
ヒロムがリクトを倒す糸口を見つけた頃……
ヒロムが危険に身を置いている、なんて事を知る由もない者が裏で起きていることを知ることも無く街で平穏な日常を送り過ごしていた。
その街にはヒロムの事をよく知り、そしてヒロムの方もよく知っている人物がいた。
賑わう街並み、その街を学生服の4人の少女が歩いていた。
1人は長い黒髪の可愛らしい少女、1人は長い金髪の可愛らしい少女、1人は長い水色の髪のモデルのような美人な少女、1人は長い赤髪のスタイルのいい少女。黒髪の少女1人だけ異なる制服を着ており、他3人は同じ学校に通っているらしく同じ制服を着ていた。学校は違えど仲が良いのだろう、そう思わせるかのように4人は仲良く話をしていた……が、話の内容は何やら楽しいというものからはかけ離れたものだった。
「ヒロムってばまた来てなかったの?」
「う、うん。少し前までは毎日来るようになったんだけど、ここ何日かはヒロムくんまた来なくて……」
赤髪の少女・朱神アキナは黒髪の少女・姫野ユリナは困ったような顔で答え、ユリナの言葉を受けた水色の髪の少女・美神ユキナはユリナを励ますかのように優しく頭を撫でると言葉をかけた。
「心配なのは分かるけど、ヒロムは私たちのために色々頑張ろうとしてくれてるんだから今までの日常に戻れると信じて待ちましょ、ね?」
「うん、それはそうなんだけど……やっぱり心配になっちゃうの」
「でも心配ですよね。ヒロムさん、無理をしていないといいんですけど……」
「無理するのはいつものことじゃない。まっ、万が一の時はユリナとエレナの泣き落とし作戦で止めるしかないわ」
「アンタね……よくもまぁそんな卑怯な手を堂々と言えたわね……」
ユキナの言葉を受けても心配の気持ちが消えないユリナの気持ちに共感する金髪少女・愛神エレナの言葉にアキナはヒロムを止めるためと言いながら滅茶苦茶な事を言い、アキナのそれを聞いたユキナは呆れるしかなくため息をついてしまった。
ヒロムが心配、そんな話を4人がしていた時だった。
突然周囲の人が何かに注目するかのように足を止めて同じ方に視線を向け始め、何があるのかと気になったユリナたちも同じように足を止めて周囲に合わせるように向けられる視線の先を見ようとした。その先には……
「何、アレ……?」
ユリナたちも視線を向け、視線を向けて視認したものに目を疑うアキナが困惑にも似た反応を示したもの……それは、街にいる人々を見下ろすかのように天に立つ《オーバーロード・ギア》を発動させたリクトだった。
突然の事、何よりリクトの存在自体が何者なのか分からないユリナたちや街にいる人々は彼のその姿から不穏な空気を感じ取ってしまい、そんな空気の中でリクトは……
「オマエら愚民がいるから真に讃えられるべき人間が日の目を見ずに長きに渡り迫害され苦しむ。そして手のひらを返して善人をフリをして寄り添おうとする……本当に愚かだ。だから、オマエら愚民には正しい裁きを与える」
彼の発言した言葉の意図を理解出来る人間がいるかすら分からないような内容を口にするリクトは突然闇を纏い妖しい光を一点に収束させて街にいる人々に向けて撃ち放とうとした。が、その時……
「リクトォォォォ!!」
リクトが街にいる人々を攻撃しようとしたまさにその時、氷の翼を広げ高速で飛翔してきたシンクが氷の剣を構えながらリクトを止めるべく接近して斬りかかろうとし、シンクの登場と介入に対してリクトは妖しい光に闇を交じわすようにしながら形を与えて剣に変えるとシンクの氷の剣を防ぎ止めてみせた。
「な、何だ……?」
「アレ何?」
「もしかして……皆、逃げて!!早く!!」
リクトとシンクの衝突、街にいる人々が何が起きてるのか分からずザワつく中、シンクが登場し攻撃を仕掛けるという光景を目の当たりにしたアキナはリクトの正体も何も分からない中で状況を理解するととにかく危険を知らせようとそれを伝えられる言葉で叫び、アキナの言葉を受けた街にいる人々は目の前で起きている事と彼女と言葉から全てを紐解くと悲鳴を上げながらこの場から逃げようとする。
「余計な事を!!」
「野郎……!!」
街にいる人々が逃げ始め、そのきっかけをつくったアキナの行動を良く思わぬリクトはシンクを押し返すと武器を消すと同時に彼女たちに向けて攻撃を放とうとするが、シンクは彼女たちを守ろうと咄嗟にリクトの前に立って邪魔しようとした。そして……
ユリナやアキナたちを守ろうとリクトの前に立ったシンクは何かに襲われるとその何かによって吹き飛ばされ、吹き飛ばされた勢いのままその先にある建物へ叩きつけられてしまう。
「シンク!!」
「問題、無い……!!オマエらも、避難してろ!!」
「わ、分かったわ!!」
「行くわよ!!」
心配そうに名を叫ぶユリナに対して傷を負いながらも無事を伝えるとシンクは避難するように言い、シンクの言葉を受けたユキナらアキナと共に率先してユリナとエレナを連れてこの場から離れようと走り出した。
リクトはユリナたちを追いかけようと考えているのか彼女たちを視界に捉えながら動き出そうとするが、そんなリクトを止めるかのように強い冷気と共に吹雪が飛んできて彼を襲い、リクトが足止めを受ける中でシンクは飛び立つと同時に両手両足を氷で覆いそれを鋭い爪に変えて武装してリクトを倒すための用意を進めようとした。
動きを妨害する鬱陶しい吹雪を消し飛ばすように闇を発散させて冷気と吹雪を消滅させたリクトは闇を纏いながらシンクを睨み、睨まれるシンクは氷を尾の形に形成して身に纏わせると口元に牙を模した氷のマスクを装備して全身から凄まじい力を飛ばしてみせた。
「……竜装術・氷牙竜、か。どうやらあの女共に危害を加えられたくないがために本気で挑んでくれる気になったらしいな」
「アイツらはヒロムの支えとなってくれる大切な存在……オレよりもヒロムを深く知り愛し歩み寄ろうとしているアイツらもオマエの言う変革とやらのために消すってんならヒロムと……ヒロムの未来のために、オレはオマエを殺して止めるだけだ!!」
「流石は未来を担う国の防衛戦力として期待される《センチネル・ガーディアン》の一角として見定められた男、言葉の重みが違うな。だが……それすら無意味だと思い知らせてやる!!」