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第8話 幼き日の約束


『いただきまーす…おいひい!』


『だろだろ?母さんにはかなわないけど自信あるんだぜ』


『父さんと母さんのホットケーキ僕どっちも大好き!』


『フェンリアは言うことまでかっわいいな~、今度帰ってきたらまた作るからな』


『やったぁ!約束だよ!』



………そんなこともあったな…。



「フェンリアは俺に似てホットケーキとか好きなもんな~うん、うまい」



「あのさ…食べながらでいいから答えろ」


「んー?」



「アンタ……なんで帰ってこなかったの…約束したのに」



違う。こんなこと聞いてどうするんだよ、聞くべきことは他にもたくさんあるだろ…。



「…そっか、寂しかったよな」


「そ、そんなんじゃない!今のは無しだ!そんなことより魔王になった理由を教えてよ!!」


「…父さんはな、生まれた時から魔王みたいなもんなんだよ……父さんがなんの種族だかわかるか?」



「ラグナ族…じゃ、ないの?」



「ああ、戦闘種族のラグナ族によく似てる………魔王族っていうんだ」


「ま、魔王族??魔族じゃなくて?」


「魔族とは全然違うんだ。魔界で生まれたにも関わらず、魔族から嫌われて平穏に暮らせない種族が魔王族だからな……そんで魔族とやりあって魔界に居続けようとする過激派魔王族もいる」


「え…」


「安心しろ、父さんは穏健派だ…魔界以外の別の場所で好きに生きたらいいと思ってこの世界に来たんだ。ここならラグナ族として生活できるからな」


「………魔族に嫌われる理由は、強すぎるから?」


「正解!でもな、魔物には好かれることもあるんだぞ~。部下にすることで魔族から守ったりしてるからな!」



なんでもないことのように笑って僕の頭をくしゃくしゃする……笑えないよ、こんなの。


僕も身体能力とかで周りから嫌味を言われることが多くて、学園は居心地が悪いと思っていた…ラグナ族って知ったあとは浮いちゃうのも納得だったし。



だけど、魔王族の疎外感に比べたら全然甘いほうじゃないか…。



「でも魔族もこの世界に来たりしてるんだよな~……しかも力をつけて魔王を名乗ってる連中もいるし」



「…それってアステリシア以外の各国の魔王?」


「ああ、ほとんどがそうだな。他の世界では過激派の魔王族が魔王として居座ってたりするけど」


「ならアンタが【魔犬の王】って名乗ってるのは?」


「父さんの場合は喧嘩売ってくる魔族を相手にしてたら勝手にそう呼ばれて、気づいたら家族からも魔王認定されてた」


「か、家族??」


「フェンリアの叔母さんや叔父さん…俺の気持ち悪い姉貴やうっせー弟達だ……つってもうちの家系は力の強い血筋だから、そいつらもだいたいは魔王って呼ばれてるけどな」



会ったこともない親戚はみんな魔王みたいな人達なのか…。



「それに俺の親父なんて、冥界で大魔王をやってるんだぜ」


「大魔王!?」


「さすがに大魔王は恥ずかしいよな~、冥界支配するなら冥王でいいのに」


「そういう問題じゃないでしょ…」


「それによぉ、過激派のやつらは親父の指示で魔界や他の世界に色々と喧嘩売ってるんだ。俺は命令されるの嫌いだから昔からサボってるけど」


「え!?じゃあ僕達の国が割と平和なのって…」


「表向きは父さんが支配してるからだ!魔族はビビッて近寄らない、もちろんアステリシア王家の邪気を払う力のおかげでもあるぞ!」




10年前に行方不明になったのは、魔王になったからだけど……魔王として裏で僕達の国を護ってくれてたんだ……人間の国を護る魔王…の子供が、勇者の僕?



「そもそもアンタがやってた魔王会議って…」


「厳密にいうと魔王族会議だな!定期的にどっかの世界に集合して魔族の愚痴を言いあったりしてるぞ」


「それ井戸端会議じゃん……なんか頭痛くなりそう。自分は勇者なのに、父親や親戚が魔王なんて…」


「おまけにじいちゃんは大魔王だしなぁ、あっはっは!」


「笑えるかー!!」




思えば僕は、自分の家族のことをあんまり気にしたことがなかった…。


他の家の子は両親以外にもおじいちゃんおばあちゃんがいたり、親戚行事もやっていた……比べられるのが好きじゃないから、そんなことに関心がなかったのかも。



そして実際に蓋を開けてみれば、父親側の親類は魔王族だった。




「……アンタのこと少しはわかったけどさ…いつもは話を聞かずに強制ワープさせるのに珍しいな」


「もう魔王会議は終わったし、姉貴の気配も無いからゆっくり話しても大丈夫だからな」


「お姉さんに知られるとまずいみたいだね…そんなに怖い人なの?」


「怖いっつーか……いやフェンリアにとっては怖いかもな。蛇の力を持ってる魔王だから」



へ、蛇……それでさっき気持ち悪いって言ってたのか…。


「あと!!フェンリアの母さんは普通にラグナ族だからな、父さん側の家系が魔王族なだけで!!」


「つまり僕はラグナ族と魔王族のハーフ…」


「えーと……嫌だったりする?たとえ半分でも、ヤバそうな種族の血が入ってるのは…」


「別に気にしてないよ、今さら」



ラグナ族だって人間界ではヤバそうな種族みたいだし………でも僕の場合は勇者だからマズイのかな?



「なんていい子なんだ!!さっすが俺の子ぉぉぉ!!!」


「おい!頭撫でるなよ!!」




ああもう、わりと真面目な話をしてたのに…。


「ぴぴ!!」


「ん?なんだフリル、連絡か?」



ビードロドリ?……この城にもいるんだ。



「げっ!すまんフェンリア、父さんちょっと用事ができた!」


「え?」


「すぐ戻るからフリルと遊んで待っててくれ、よっと!」



転移魔法でさっさと行っちゃった……何が遊んで待っててだよ…。



「ペットと留守番してる子供かっつの…」


「ぴい?」


「あ。ごめんペットじゃないか……キミ、うちのビビィに似てるね」



ビビィ達はペットというより家族だ…この子もそうなのかな。



「ぴぃ~」


「…ふぅ、なんか眠くなってきたな」










『お父さんのこと嫌いなの?』



えっ………小さい頃の僕?



『ボクはお父さん好きだよ!今の僕は嫌い?』



多分、嫌いじゃないよ……でも…。



『でも好きじゃないの?どーして??』



…昔の僕は、どうして好きなの?



『優しくて一緒に遊んでくれて、強くてかっこよくて、頭なでてくれるから大好き!』



……幼いとはいえ僕の顔で大好きは複雑かも…それも満面の笑みだし…。


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