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第6話 10年以上も昔の話


僕にいきなり風属性の攻撃魔法を仕掛けてきた女の子は『リプロ』という名前らしい。僕と同い年って言ってたから15歳か…。


お互いこれ以上戦う意思はないから、メイドさんが用意してくれたお茶をもらいながら話し合いをすることにした。



「まず聞いておきたいんだけど…リプロさんはどうして僕が魔王に強制ワープされたことを知ってたの?神父様にそのことを話したのってキミだよね?」



「数日前占いの修行をしていたら水晶玉に映ったのです。新人勇者さんの少し先の未来が、断片的に」


「そう、なんだ…」


「おぼろげでしたがあなたと魔王らしき人物……かわいらしい大きなコウモリさんも見えましたわね」



ギャーゴイルって女の子から見るとかわいいのか………僕は翼の部分とかがカッコいいって思うけど。



「では、他の事も洗いざらいお話しますわ。先ほど言った怨みは一応ありますが……本当の目的は勇者の力を見ることです。あなたの協力者として」



「リプロさんが協力者?…どうして?」



「勇者の神託を賜ったのは、私のお母様なのです」



半月ほど前に降りた神託はお城の魔導士を介して王様に伝えられたと聞いている。その魔導士ってリプロさんのお母さんだったんだ…。



「そして勇者の素質、将来性のある実力、光を秘めた心。これらを神託通りに兼ね揃えた少年……あなたを探し出したのもお母様です」


「すごい三拍子が並んでますが僕はどれも当てはまってないです」


「といっても母は占い師ですので見つけるのは簡単でした。特別な力を持つ人物を思い浮かべ…さらにある程度戦える者の情報は網羅していましたので、心眼を使って照らし合わせることで勇者はあなただと判明しました」


「勇者の条件に合う人は他にもいるんじゃ…」


「強さを持った者達の中で、勇者の素質と光が視えたのはあなただけだそうです」



魔王の子供だからそれは無いと思うんだけどな…ましてや心に光なんて……。



「リプロさん、僕けっこうひねくれた性格で…」


「私のお母様が間違っているとでも?」


「い、いやそういう意味じゃ!」


「でしたら、私があなたに協力を申し出ても問題ありませんわね?」



可愛い笑顔のはずなんだけど、なんだか威圧感が……。



「えっと、協力って具体的には何を…」


「まだ見習いの身ですが、私も母と同じく占い師であり魔導士です。魔物と戦うことに慣れていますわ」


「旅の仲間になってくれるってこと?」


「はい、困ったときは占いで導くこともできますから…それに新人勇者さんが無茶をしないように見ていなくてはなりません」



勇者に任命されて即行で魔王城に行ったのバレてるんだよね、占いで…。



「女の子は旅に連れていけない、なーんて男女差別はしませんわよね?」


「フェンリア!その小娘を連れて行くのなら余も連れて行くのじゃ!!王子差別は許さんぞ!?」



黙って見守っていたテューラァまで参戦してきてしまった。




「…リプロさんの魔法や占いは心強いし、テューラァが訓練を頑張ってるのも知ってるけど……王様がなんて言うか」


「心配はいらぬ。もし父上が反対しても全力で説得しよう!」


「反対はしないと思いますわよ?」


「む?なぜじゃ小娘」


「あなたを含めて、アステリシア王家の方は邪気を払う力を持っています。旅の経験を経て成長なさったらその力も強くなるはずですわ」


「なるほど!余がフェンリアと共に戦うことが国を護ることにも繋がるのなら、決定だな!」



こんな形で旅の仲間ができるなんて思わなかったな………あと、もうひとつ聞いておかないと。



「二人ともありがとう、旅については休んでる間にちゃんと考えておくよ。」


「はい、お待ちしていますわ」


「…ところで、僕に怨みがあるっていうのは?」


「私はあなたに怨みなどありませんわ。攻撃の前にも言いましたが、怨みがあるのは私の母です………そして正しくはあなたではなく、あなたの父親にちょっとした怨みがあります」


「えぇ!?でも僕の父親は―」


「アステリシア王から信頼されていた凄腕の冒険者…ですわよね?」



そ、そっちか……イヌ魔王が父親だってバレてるのかと思った。

…凄腕の冒険者だったのに怨まれたりするの?




「あの、ね…父は他人に感心が無いから、怨まれるほど誰かと関わってるとは思えないけど…」


「それならばむしろ確定ですわ。私の母は昔からお城で働き、王様の指示で各地を旅していましたが……母から聞いた話はこうです」










『通りすがりの冒険者さん、私があなたの進むべき道を照らしましょうか?』



『道に迷ってねえから遠慮しとく。おれは迷子じゃねえ』




これが私のお母様と、あなたの父親の出会いです。そして…。




『冒険者さん、またお会いしましたね。お悩みがあるようですし、今日は道案内ではなく…恋の占いでもしましょうか?』



『大きなお世話だ。片想いは自力で乗り越えねえと意味が無い』



不安定な精神を感じて気遣おうとした母を一蹴し…。



『あなたも城に出入りしているそうですね。冒険者の仕事に繋がるかもしれませんし、伝説の剣について占ってみませんか?』


『おれ基本素手で闘うからいらね』



アステリシア王に仕える仕事仲間としてのアドバイスも聞く耳を持たず……。



『凄腕の冒険者さん、先日ご結婚なさったそうですね。いずれ産まれてくる子は特別な力を持っていると視えます。お子さんにどんな名前がふさわしいか占っー』


『いっちばん迷惑だなそれ。子供が出来たら、男の子なら【フェンリア】女の子なら【フェリル】ってもう決めてんだよ。』






あげくのはてには私の母の占いを『一番の迷惑』と言い放ったのですわ。


「100%僕の父です。色々失礼しました。」

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