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第4話 新人相応の強さ



イヌ魔王に飛ばされた先はアステリシア王都の教会前。



「おお勇者よ!魔王に強制ワープされるとはお気の毒に!」



「なんで神父様が知ってるんですか…」



ちょうど花壇の手入れをしていた神父さんと目が合って、驚きもせずに笑って会釈されて僕のほうが驚いた。


ここは街はずれにある小さな教会で、僕の家のご近所さんでもある。



「あはは、お祈りに来た赤い髪の占い師さんが教えてくれたんです。」


「赤い髪の占い師…?」


「笑顔がかわいい女の子でした。フェンリア君に会いたがっていましたよ?」



誰だろう?学園でもそんな子見たこと………いや女子に限らずそんなに喋ったことない生徒の顔はたいして覚えてないんだった。



「ところでフェンリア君、雰囲気変わりました?髪型のせいかな?」


「そ、そうだ神父様!僕の魔力を調べてください!」



いろんな力がいっきに抜けた気がして、嫌な予感もしたんだ……神父様に調べてもらったらやっぱり魔力も減っていた。

なんだか怒る気にもならなくて、トボトボとアステリシア城へ報告に向かった。



「弱体化……フェンリアの魔力や体力を下げたということか」


「どうしよう…これじゃあ孤島の海域を泳げない」


「泳ぐことはいったん置いておくとしてじゃな、お主はいったん休んだほうがいい。少しフラついておるぞ」


「スタミナも減ったから疲れやすくなってるだけだよ。別にこれくらい…」


「しばらく旅は禁止する!しっかり休んでおれば息抜きの外出くらいは許してやろう」



テューラァ、何様だよ~………って言いたかったけど『王子様じゃ!』って返されそうだからやめといた。



「…だけどこのままじゃ何かあったときに戦えないよ。鍛え直すために軽い運動だけでも」


「お主の軽いは信用ならん」


「お城の周りを走るだけだって!」


「我が城の外周は軽くない。そう言って何百週もする気なのもわかっておるしな」



さすがに百週走ったら場所を変えるんだけど……飽きちゃうから。



「じゃあせめて十週だけ」


「その言葉は以前風邪をひいた時も聞いたぞ。結局十週を何セットもやろうとしておったな?」


「だって暇だったんだもん」


「お主というやつは………そんなに暇になるのが嫌なら学園に顔を出してみるか?」


「え…」



勇者になってからは休学中だけど、僕はアステリシアの王都学園に通っていた。


テューラァはお城で王子としての勉強をしてるので学園には時々一般教養を学びに来る。



「余も久しぶりに、ルイやユーコに会いたいしな」


「………」


学生の半分以上は人間を代表する種族のヒューマル族。


僕も少し前までそうだと思ってた、でも実際には生まれつき体力や魔力が高い戦闘向きのラグナ族。実技の授業があると嫌でも目立ってしまう。


時々小声で聴こえてくる『生まれつき強いなんてズルい』『魔法学もできて当たり前』という嫌味の意味が今ならわかる……きっと一部の生徒は僕が戦闘種族の生まれだと気づいていたんだ。



……学園には気の合う友達もいるけど、周りの嫌な視線や陰口をさけるために一人で過ごすことが多かった。



「フェンリア?どうしたのじゃ」


「なんでもないよ。…テューラァ、どうせならルイの家に買い物に行かない?学園は人がたくさんいて疲れるよ」


「ふむ、休めと言っているのに疲れては意味がないか…」


「でさ!買い物したらユーコのとこでご飯食べようよ!」



友達のルイは雑貨屋の息子で、ユーコは食堂の娘。ヒューマル族は生活能力が高くてお店を経営している人が多いんだ。


王都学園に行きたくなくてつい二人のお店を提案していた…学園の空気が苦手ってことはテューラァに内緒にしているし。



「気分転換にはもってこいじゃな、そうするか」


「決まりだね!じゃあさっそく」


「今日は行かぬ。最低でも一週間は休んでからじゃ」


「それは休みすぎだって…」


「お主の両親が【ラグナ族】について今まで教えなかったのは、そうやって無茶をすることに拍車をかけると考えたからだと余は思っておるが?」



……それを言われたらさすがにおとなしく過ごすしかないや…。



それから数日後、旅禁止中の僕はやることがなくて……森を散歩していたらこのあいだの弱い魔物に出くわした。


弱体化された力の中に戦う時の勘は入っていなかったみたいで、苦戦はしないで済んだ。



「魔王様に弱体化されたって聞いてたけどオイラ達より強いじゃんかぁぁ!!!」



そうだ、あの時アイツ…魔王の力を弱体化って言ってたな。

つまり僕には父親譲りの魔王の力があって、今までその力で戦ってたってこと?…考えたところでわからないや。



「今日こそ情けは無用だぜ!ひと思いにとどめをさしやがれぇぇぇ!!」


「あ、ビースケ達にご飯あげなきゃ…」


「やっぱり無視しやがったぁぁぁぁぁ!!!」




僕の家のすぐ隣にある、こじんまりとした宿屋。経営者はエルフ族のおじさん…見た目は爽やかなおにいさんだけどね。



「おかえりなさいフェンリア君!もうお昼ご飯出来てますよ…フェンリア君の分と、ビースケ君達の分です!」


「うん、ありがとうクリスさん」



クリスさんは僕の両親に助けられたことがあって、その恩返しがしたいという理由で昔から僕のお世話をしてくれている。ご飯を作ってくれたり育てている薬草をわけてくれたり…。


お世話になりっぱなしで申し訳ないんだけど…自分の子供達はとっくに成人してつまらないから、この生活がありがたいらしい。


ご飯が乗った大きめのトレーを受け取り、クリスさんにもう一度お礼を言って自分の家に入った。


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