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第3話 超複雑な親心


三日後、僕は再び魔王城にやって来た。



「今日こそ話を…」



「あ!フェンリア坊っちゃん!いらっしゃいませ!魔王様は席を外せませんのでワタクシギャーゴイルがご案内…」-ドカ!!


「坊っちゃんって言うなっ!!」



魔王城の門からひょっこり出てきたのはこの前もいた魔物…ひょろっとしてるけど大きさは人間サイズなんだよな。



「ひ、酷い!お仕えしている魔王様のお子さんだから『坊っちゃん』呼びしただけなのに殴るなんてぇ……」


「え?ご…ごめん、つい反射的に…うわ!?」


「フェンリア三日ぶり~!!会いたかったぞ!!」



魔物を泣かせちゃって困ってたら、急に現れたイヌ魔王に頭をクシャクシャされた。



「ちょっとケルベリウス様、魔王会議はどうされたんです?」


「飽きたから休憩タイムにして抜けてきた、フェンリアに話したいこともあったからな!」



あれ?もう泣き止んでる…嘘泣き!?


「あっれぇ!?なんか撫で心地が違うと思ったらフェンリア髪型変えたのか!!短いのもかっわいいぃぃぃ!!!」


「至近距離で叫ぶな!クシャクシャもするなぁ!!」


「ケルベリウス様、お話するのはいいですけど魔王会議の途中なんですから手短にですよ?」



魔王会議って三日前にもやってたような……長引きすぎだろ。





「この前フェンリアが来た時、一人で魔王城に乗り込んで攻撃魔法で壁とか破壊して強引に進んでたけど…」


「そういう強さは本物ですが軽装備なんですよねぇ、勇者なんですからもう少し重装備のほうが―」

「ギャーゴおまえちょっとうるさい」

-ごんっっ!!!

「いたっ!ケルべリウス様!魔王会議に姉上様が来られて不機嫌なのは分かりますが八つ当たりは勘弁してください!!」



魔王のゲンコツをくらってもわりと平気そうだ……やっぱりさっきの嘘泣きだったな。



「そんで本題だけど、なんで仲間を連れてないんだ?」


「…テューラァは一緒に行きたいって言ってたけど危ないから断った」


「あの王子くんか、懐かしいな~。でも王子くんに限らず、探せばいるはずだぞ?勇者は人を惹き付ける人徳みたいな力があるからな」



そもそも親に会いに行くのに仲間募集するの嫌なんだけど…。



「我らが魔王のケルベリウス様も、人徳がありますよ!」


「ふーん、あっそう」


「フェンリア素っ気ない~!もっと父さんに興味持ってくれよ!」


「興味持ったところで重要なことは教える気ない癖に……で、僕にどうしろって言うの?」


「…一人旅って限界あるぞ?魔物退治で遠出することだって増えてくるだろうし、今後のことも考えて冒険者ギルドで仲間探してみれば?」


「確かに僕は旅の知識が浅いから王様にも勧められたけど、ギルドには城を追い出された商人とかしかいなかった」


「アイツまだいたんだな……とうとう王様から出禁くらったか」



なんか詳しいな。ギルドで請け負えない仕事を王様から頼まれてただけあるよ…。



「元々僕は一人で行くつもりだったからいいんだよ別に」


「そういえばフェンリア様はどうやってこちらまでいらしたんですか?」



ギャーゴイルとかいう魔物、さっき『坊っちゃん』呼びで殴られたから様付けしてきたな。



「この孤島には船で海を渡らないとでは…」


「ああ、一番近くを通る船に忍び込んであとは自力で泳いだ」


「フェンリアそれ勇者がすることじゃないぃぃぃ!!!あの海域を泳ぐとか危ないことすんな頼むから!!」


「私みたいに翼があったら飛んでこられるのですがねぇ」



あのコウモリっぽい翼、ちゃんと飛べるのか……飛んでるところ見てみたいかも。



「たとえ想像でも!俺の子にギャーゴの変な翼つけるんじゃねえよ!!」


「アンタだって変な耳がついてるだろイヌ魔王」


「まあフェンリアなら翼があっても可愛いな!尻尾があっても角があっても、ほお袋があっても水かきがあっても…確実にかっわいいなぁぁ!!!」


「そんなに色々あったらバケモンじゃん」



「水かきは可愛いのでしょうか…」



ダメだ、イヌ魔王のテンションについていけない…。



「でも俺譲りの牙は小さい頃からあるんだよ!かっわいいだろギャーゴ!」


「牙というか八重歯では?」


「いいよ面倒くさいから訂正しなくて」


「では質問です、フェンリア様が軽装備なのは泳ぎやすいようにですか?」


「うん。ただでさえ武器が大剣だから他はなるべく軽くしないと」


「大剣背負って海を泳げてることにビックリなんですが…」


「そういやギャーゴに言ってなかったな、フェンリアはラグナ族なんだ」


「あ、なるほど!」



「え、何…?」



…そんな名称の種族は聞いたことない。



「ご説明します、ラグナ族とは!」


ポカンとしている僕に気づいたギャーゴイルが、人間みたいに人差し指を立てて解説を始めてくれた。



「戦いにおける潜在能力が高く、闘争本能を持っていて鍛え方次第でとても強くなれる珍しい戦闘種族です!」



「………戦闘種族…」



自分は他の人よりも体力馬鹿だなっていう自覚はあったけどそんな単純な話ではなかった。

仲間を集めて旅に出ようって気持ちにはならないのも戦闘種族の血が関係してるのかな…。



「……まあいっか、強くなれるなら装備揃えなくていいぶん節約にもなるし」


「節約で装備品買わないとかやめてくれっ!父さんがお小遣いあげるから!!」


「それ魔王がすることじゃない」


「フェンリア様、ケルベリウス様は父親として心配しているのですよ?ラグナ族といえどもとんでもない距離を泳いでこられたらなおさら」


「僕はさっさと真相を知りたかったんだ、移動手段なんかゆっくり考えてられないよ!」



「わかった…おまえが無茶ばっかするなら父さんにも考えがある!」



イヌ魔王がそう言うと僕の足元に見たことのない魔法陣が現れた。



「我が息子フェンリア!魔王の力、弱体化させてもらう!」



「へ?ちょ、ちょっと待っ…」


「そしてそのまま転送!!」







「……フェンリア様の持つ魔王の力が強くなっていたとはいえ、これで良かったのですか?」



「こうするしかねえんだ…あのままだと勇者の力が育たなくなる、それに……半端な強さが悪目立ちして、俺の姉貴に目をつけられないためには、こうするしかっっ!!!」


「姉上様の事どんだけお嫌いなんですか」

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