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第14話 あくまで噂


情報が集められそうなところは一通り回ったし、部屋に戻って休憩しよう。



いやその前に向かい側のお店でテューラァにおにぎりでも買っていこうかな……朝ご飯食べ損ねてお腹すいてるはず…。



「仔犬さん、こんにちは」



「リプロさん!こんにち…って仔犬さんはやめてよ」



「ふふっ、いいじゃありませんか………今日はお一人ですの?」



「テューラァはまだ寝てて…」


「もうすぐお昼ですわよ?お寝坊さんすぎますわ」



「あー、うん…起きてはいるんだけど……テューラァ!まだ無理ー??」


「無理じゃあァァ!!!痛みがとれぬぅぅぅっ!!」



「ほらね?昨日たくさん歩いたから………?」



テューラァの返事があった宿屋の窓を見つめるリプロさんの顔が、少しひきつっている。



「リプロさん?」




「……どうか安らかに」



「テューラァは筋肉痛で動けないだけで、元気だよ?」



「お年寄り王子…あなたのこと、しばらくは忘れませんわ」



「しばらくしたら忘れるの?いやだから元気だって!」



「元気でも筋肉痛は辛いのじゃ、というかフェンリアさっきから何を騒いで……また貴様か小娘ー!!」



ベッドから這ってきたらしいテューラァが窓から顔を出した…筋肉痛以外は本当に元気だ。




「………何も憑いていないようですわね。あの噂は作り話でしたのかしら?」



「噂って?」



「このお宿の……あなた達が泊まっている部屋で一晩過ごすと悪魔にとり憑かれるという噂がありますの」


「あぁ、だから他はいっぱいだったのにあの部屋だけ空いてたんだ…それに格安だったし」



ボロい部屋で申し訳ありませんって宿屋の店主さんが謝りまくってたのもその噂が関わってるのか…。


「ななな、なんじゃとぉぉぉ!!?では余の体の痛みは悪魔のせぃうっ!?」




筋肉痛を悪魔のせいにするなって……あれ?急に静かになった。




「………テューラァ?」



「大声を上げたら、腰にきおった…」



「しょうがない人ですわねぇ、うちのマッサージ師さんに診てもらいましょう」



「え?でも迷惑じゃ…」



「迷惑ならお誘いしません。近々旅の仲間になるのですからお気になさらず……その代わり、勇者様が運んで下さいね?」


「ま、待てっ!一国の王子がお姫様だっこなんてみっともないマネ出来るか!!」



「誰もお姫様だっこなんて言ってないよ、普通に担いで持ってくから大丈夫」



「余を荷物みたいに言うでない…」



「なら無難におんぶ?」



「まるで老飼い主を助けるワンコさんですわね」



おんぶが出来る犬はさすがにいないと思うけどなぁ………喋る犬ならいたけど。



「…年寄り扱いされるのなら荷物扱いでかまわぬ……」



「懸命な判断ですわ。さすが我が国の王子様」


「お主絶対バカにしておるだろ」



でも悪魔の噂って……僕が寝ながら冥界にワープしちゃった原因…なのかな……?






「小柄なフェンリアに片手で簡単に担がれるとは……我ながら情けないのじゃ…」



「そんな事で落ち込まないでよ、テューラァは確かに軽いけど僕が馬鹿力なだけだから!」




やっぱりおんぶのほうが良かったかも…。



「では参りましょう、こちらですわ」



「あ、うん」




それにしても専属のマッサージ師さんが家にいるなんて………喋りかたでなんとなく思ってたけど、リプロさんって本当にお嬢様なんだなぁ。


僕はお城に出入りすることはあっても自分の家は庶民的だから…お邪魔させてもらうの、ちょっと緊張するかも。



「おや?リプロお嬢様じゃないですか!奇遇ですね~」



「あらマディク先生、ごきげんよう」



「はい~、ごきげんよう」




「…………?」




白衣を着た男の人がリプロさんに声をかけてきた………気のせいかな、人の気配が全然しなかった。



というかどこから現れたんだろ……よく見えなかったけど物陰から急に出てきたような…。




「そうですか~!でも生憎マッサージ師さんは御不在ですよ?」



「まあ、それは困りましたわ…」



「ご心配入りません!私が引き受けましょう!」



え、なんかいつの間にか話が進んじゃってる??



「ぜひお願いしますわ……こちらがその」


「新人勇者のフェンリア君!そして荷物みたいに運ばれてるのがテューラァ君ですね!どうもこんにちは!」



「っ!ど、どうも…」




いきなり近っ、なにこの人…。



「ご紹介しますわねフェンリアさん。この方は私の家庭教師で、お医者さんでもあるマディク先生です」



「お医者さん!?」



「はい!お嬢様のお勉強は私の担当です!そして治癒関連の魔法も得意なので、フリーの治療士といったところですが………見えませんかね??」



…今のところ変な人にしか見えないですなんて言えるか。



「マディク先生、勇者になったばかりのフェンリアさんに興味がおありなのはわかりますが……お客様にあまり絡まないで下さる?」


「おっと失礼!ついつい悪い癖が出てしまいました、私は先に行ってお茶のご用意でもしてもらいますね~」




「…マディク先生は悪い人ではありませんが、少々勇者マニアなのです。驚かせてしまっていたらすみません」



「えーっと……大丈夫、だよ」




確かに極悪人って訳じゃなさそうだけど……なんか引っ掛かるんだよなぁ…。




「…今の人、テューラァはどう思う?」



先を歩くリプロさんに聴こえない程度の声でテューラァに聞いてみたけど無反応だ。



「あれ?」



「…ぐぅぅ……年寄りではない…のじゃぁ…」




………なんだ寝てたのか。


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