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第13話 冥界の森


港街フォルトに着いた僕達はいったん解散し、リプロさんはお家へ…僕とテューラァは宿屋に泊まることにした。


夕食の焼き魚が美味しかったなぁ…明日の朝ご飯も楽しみ…。




「ふあ~………朝ご飯まで二度寝しよ……ん?…え?ここどこ!?」




目を覚ますと、怪しげな木々や植物に囲まれた森の中にいた。


夜って訳じゃないみたいだけど…辺りは薄暗い。



「ワン」



「ん?紫色の……仔犬?」



変わった毛色だけどかわいい仔犬が僕の足元に寄ってきた、人懐っこいな…。



「ベルっ!」



…ベル?この犬の名前?



「ワン!」


「あまり遠くに行くなって言っただろ…何か見つけたのか?」



仔犬が駆け寄った先にいたのは、僕より少し歳上っぽい…少年?



「なんだ?あの…人間?敵じゃなさそうだが」



10代後半くらいかな、見た目に反して声が低くて大人っぽい……なんか、あのイヌ魔王に似てる声だ。


マントを羽織ってターバンを巻いてて、顔はよく見えない。



「まあ、こんなガキに敵意も殺意もねえわな……で、おまえ誰?」



「えっ、と…僕はー」


「名乗るな」



「へ??」


「おまえだけの名前を言うと帰れなくなる。ファーストネームは名乗るな」



……ファミリーネームを名乗れってことかな…。



「ロキムガルド…です」


「ふーん」



聞いてきたわりに興味無さそう…。



「じゃあせいぜい気を付けて帰れよ」


「えぇぇっ!?ちょっと待っ―」



「危ないワン!」



あれ?今あの犬喋ったような……?


「足元に冥界の魔物!闇蛇だワン!!」


「や、やみへびっ!?」



下を見ると僕の足元に禍々しい雰囲気の蛇が牙を剥いていた……これは無理っ!!



「フレイムぅぅぅ!!!」



とっさに炎の魔法を放つ…たいして強くない魔物だったみたいで、その攻撃で消滅した。



「おいおい、自分の足ごと燃やすか普通?」



「だ、だって僕、蛇は苦手で……」



言いながら、軽く火傷した足に回復魔法をかける……服がちょっと焦げちゃった。



「キミ裸足だワン、靴は無くしちゃったの?」



「これは…寝てたから……それよりさっき、冥界って言ったよね?」


「ワン!ここは冥界の一部さ!」



冥界って確か………僕の祖父が大魔王をやってるんじゃ…。



「冥界はね、魂だけになった存在がが辿り着くところ。でもキミは生きてる!」



「時々いるんだよなぁ、禁忌魔術や儀式に失敗して生きたまま迷いこんでくる馬鹿が」



「馬鹿って……僕は宿屋で寝てただけですが…」



「爆睡中に幽体離脱でもしたんじゃねえの?」


いったい何があったらそんなことになるんだ。



「魂だけ来ちゃったなら元の世界のキミは仮死状態?早く帰ったほうがいいワン」



「死後硬直が始まる前に頑張って帰れよ、じゃあな」



「だ、だからちょっと待ってってば!」



「…っ!離せ!!!」


「うわ!?」



引き止めようとしてマントを引っ張ったら振り払われた…受け身はとったから痛くはないけど…。



「俺は触られるのが嫌いなんだよっ!!」



声が似てるからイヌ魔王に言われてるみたいだ……いつも頭をグシャグシャしてくる父親に言われるのはなんか変な気分…。



「大丈夫ワン?突き飛ばさなくてもいいのにねぇ、まったく乱暴なんだから」


「そんなに強く突き飛ばしてないだろ!なのに泣きそうな顔しやがって…」



「なっ!?泣きそうな顔なんてしてない!!……です、というかすみません。いきなり引っ張った僕が悪いのに」


「なんで謝ったんだ?別に俺は怒ってないぞ…それに敬語で話すのもやめろ。鬱陶しい」



「でも…歳上だし…」



「そこは気にしなくていいワン。中身はまだまだ遊びたい子供だから!」


「誰が子供だ!」



うーん…本当に似てるな………自分の父親っぽい声の相手に敬語で話しにくいのは確かだから、いい……のかなぁ…。



「しかしおまえ、どうも違和感があるんだよな………ちょっと手を貸せ」



「何か手伝うの??」



「違うワン、本当に幽体離脱してるのか調べるから手を出してほしいんだ」



「不意討ちじゃなきゃ触れても許す。ほら手…」


「は、はい」



「………ふっ、くく!」



差し出された手のひらに慌てて右手を置いたら…何故か笑われた。



「あの、何??」


「だってよぉ……今のおまえ、お手してる犬にしか見えねえぞ?」


「イヌぅ!?」



「ベルが、もう一匹増えた……くははっ!!」



「そういえばキミの髪、ボクの色と似てるワン!」



最近やたら犬扱いされるな…。




「…あー、脈も体温もある。なんか妙な力を感じるが……本体と魂は分離してねえな」



「じゃあ幽体離脱しちゃってるわけじゃないんだ、良かった……でもどうやって帰ればいいの?」


「簡単だ。転移魔法で帰ればいい」



「え………転移魔法は…習得してない」



僕が現時点で扱えるのは、初級から下級の攻撃魔法と回復魔法。


転移魔法は弱体化される前から不得意だった……転移専用の魔法陣が書いてあるところへのワープなら、かろうじて出来るけど………それをするのだって魔導書を使って魔力を増幅させないとなんだ。



「だったら帰る場所を思い浮かべてくれればこっちが転送するワン!」



「帰る場所に転送…」




『まった来いよ~!転送!』



うわっ!転送って聞くとイヌ魔王しか浮かんでこねえ!!



「なんだよその顔?早く思い浮かべろ、ガルム」


「…ガルム?」


「ロキムなんたらは長いし、おまえ犬っぽいからガルム。………ほら唱えるぞ」



「う、うん」




港街フォルト……美味しい焼き魚……お年寄り王子テューラァ…。



「転送ワープ発動だワン!」



「あ!最後に名前教えて!!」




「……ヴァルファング」



「ヴァルファング、ありがとー!!ベルもまたね!」



「またワーン!」








何かのはずみで冥界に迷い込んじゃったけど、不思議な出逢いのおかげで無事にフォルトの宿屋へ帰ってこれた。



まだ早朝だからテューラァはまだ寝ている……僕もちょっとだけ二度寝しようっと。


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