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第10話 仲間っぽくなってきたトリオ


前回と同じく、強制ワープで飛ばされた先は町外れの教会の前だった。



「すっかり夜になっちゃったよ……早く帰ろう」



すぐ近くにある自分の家へ行く途中で、テューラァが心配してるはずだから先に報告したほうがいいかも…と思い直した。



「やっと帰って来ましたのね」


「あれ?リプロさん…こんばんは」



お城に向かって歩き出したら後ろから声をかけられた…声の主は昼間会ったばかりのリプロさんだった。


「こんばんは、勇者さん。………髪がボサボサですわ、何があったのです?」


「ちょっと大型犬にじゃれつかれて……リプロさんこそどうしたの?」



暗くてわかりくいけどリプロさんの服の至るところに泥みたいな汚れが付いていた。



「あのお年寄り口調の王子が、いきなり兵を引き連れて私が宿泊している宿屋を取り囲みまして……とっさに煙突から脱出をしたらこうなりました」


「え、テューラァがなんでそんなことを…」


「私の魔法カードを使用したらあなたが消えてしまったので、カードについて詳しく聞かせてほしいとの事でした」


「やっぱり、リプロさんのだったんだ…勝手に使っちゃってごめんね」


「かまいませんわ。偶然入手しただけで使う気は無かったのですから」



パニクルゼって何が起こるかわからないルーレット魔法だもんね……。



「そしてパニクルゼがどれほど危険な魔法なのかを説明したところ…あのようになりましたわ」




リプロさんが指したほうを見ると、木の下でテューラァが泣き崩れていた。


予想の何倍も心配してたみたい…。



「フェンリア!!すま、すまなかった…余が、カードをっ…」


「な、泣かないでよ!発動したのはワープ効果で、僕はなんともなかったんだから!」


「ぶじ…でっ、よかったのじゃ……うぅっ」


「無事に帰ってきても泣きますのね」



「我がっ友が…無事ならば、泣き虫王子に戻ってもかまわぬっ!」


「泣き虫王子?」


「小さい頃のあだ名だよ…僕達『泣き虫王子と負け犬ジュニア』って影で言われてたんだ」



王子への侮辱は王様に知られたら罰せられるから、言っていたのはもちろん一部の人だけど。



「泣き虫はともかく…負け犬ジュニアというのは?」


「冒険者だった僕の父親は、強い魔物から逃げ出して行方不明になった…って作り話をしたやつがいて、その負け犬の子供だからジュニアだってさ」



本当は魔王だから、むしろ魔物のほうが逃げ出すんだよなぁ…。



「……酷い言いぐさですわね。それもデタラメな理由まで作って…」


「いいよ、もう昔の話だから」



耳だけは実際に犬だったし…。


「よくありませんわ!事実を捏造してヒトの名誉を傷付けるなんて許されません!!」



「そっ、そこまで怒ってくれてありがとう、優しいんだね」



「優しい??先日あなたを攻撃したこと、もう忘れましたの?」



「いや、それがあるから……ところ構わず魔法ぶっぱなす人って認識してて…」


「ふむ。第一印象よりは優しく見えたという事じゃな」



「………いつの間に泣き止みましたの、お年寄り王子」


「何!?なんと無礼な!余のどこが年寄りだと言うのじゃ!!」


「喋り方だと思うよ」


「…祖父上を見習った口調なのじゃが………おっと、小娘にハンカチを借りたままじゃったな」



泣いてるテューラァにハンカチを貸してくれたのか…やっぱり優し―


「いりませんわ。そんな汚くなったハンカチ」


「余の涙が汚いと申すのか!!」


「涙だけならまだしも……お鼻もかみましたわよねぇ!?」


「テューラァ、せめて洗って返そうよ…」


「ご自由にお使い下さいと言ったではないか!!」


「それは失礼、使い終わったら捨てなさいと言えばよかったですわね」


「口の減らない小娘じゃなっ!」


「鼻をかんだハンカチが原因で喧嘩しないでよ…僕が新しいの買ってくるから」


「あなたも何を言ってますの?ハンカチの一枚くらい別に」


「そうじゃフェンリア何を言っておる!こんな時間に買いに行っても開いている店などない!」



あ、そっか。

でもリプロさんには精霊のマフラーを貰ったお返しもしたいし…今度雑貨屋のルイに相談しよう。



「遅い時間なのは確かなので、私は街の宿屋さんに戻って眠りたいのですが…」



「そうじゃな。続きは明日するとしよう」


「明日も喧嘩する気!?」


「遠慮しますわ。明日はこの街を出る予定ですので」


「勝負を捨ててどこに行こうと言うのじゃ!」


「いつから勝負してたのさ」


「最初から勝負などしていません、明日はフォルトの実家に帰るのです。旅の準備もしたいですから…ではおやすみなさい」


「うん、おやすみなさい」



…リプロさんってフォルト出身なのか。


フォルトといえば魚が美味しい港街だ……王都では川魚が多いから、時々海の魚も食べたくなるんだよね。



「………そうだテューラァ、ビビィは?ご飯の時間が過ぎちゃってるんだ」


「大丈夫じゃ、遅くなる前にお主の家に帰したからのう」


「なら安心だね、いつも通りクリスさんが準備して…」


―ぐうぅぅぅ~~。


ふと僕のお腹が鳴った……ホットケーキ食べてからけっこう時間経ってるんだった。



「今のはフェンリアの空腹音か?」



「アハハ、港街の魚料理を思い出したらお腹空いちゃって……この前は急いでて食べなかったし」



「そうか…お主は魔王城に行くための船を探しに、フォルトへ出向いたのじゃったな」



「うん。結局そんな都合のいい船は見つからなかったから、近くを通る貨物船に忍び込むことになったけどね」




わざわざ忍び込んだのは、半分は泳いで行くので途中まで乗せてください。


と正直に頼んだけど危険すぎるって断られたから……子供だとこういう時に不便なんだ。




「お主、やる事があの小娘に似ておるな…」



「そうかな…?」

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