③日本はギリシャのようには破綻しない/日本銀行は事実上の政府の子会社
質問者:初見さんのために以前の『現役世代に投資しない国、日本』https://ncode.syosetu.com/n8784hn/の時と同じ質問をさせて頂きますけど、破産した際のギリシャよりもGDP比率において今の日本は債務が多いんですよね? 財政破綻は時間の問題なのではないですか?
筆者:それについてはですね。ギリシャに関してはそれに対してギリシャはユーロというヨーロッパ共通の通貨を使用しており自国のみでの通貨はありません。確かに共通通貨があればEU圏内では両替手数料の費用が掛からず貿易がしやすいなどのメリットはあります。しかし、デメリットとして欧州中央銀行が通貨発行権を握っています。
それに対して日本には通貨発行権が存在します。日本政府が50%以上の株式を保有している日本銀行が全ての日本銀行券を発行している以上、ハイパーインフレが巻き起こって円が紙くずにでもならない限り破綻したとは言わないでしょう。
質問者:前回もそう言うご回答でしたね。
筆者:正直なところ、国債を無制限に発行することというのは何か抵抗感があるというのは分かります。
しかし、ほとんどは国民に社会インフラなどに還元されますし5割は日本銀行。4割は銀行と保険関係の企業という構図なんです。敢えて言うのならば問題は残り1割ですね。
質問者:1.2%は国民からということでしたが、残りの9%ぐらいはどこから借りているんですか?
筆者:残りの8%前後は海外からの国債購入なんですね。ちなみに長期の比率は10%を切っていますが、国庫短期証券などを含めた場合においては14%ほどに上昇します。この比率が上がってくると返済の滞りや財政破綻する可能性というのは上がってくると思います。
どちらかというと国債残高というより、この海外の割合というのを注視したほうが日本が財政破綻するかどうかを見極める指標の一つになると思いますね。日本銀行が引き受ける分には円安が進行するぐらいで問題はありませんから。
質問者:あとは何が破綻する可能性がある指標はありますか?
筆者:あとは利率が20%になったりしたら危険ですね。あとはハイパーインフレーション(国際会計基準では3年間で250%上昇)になれば危険水域と言えます。
いずれにせよ、巷で言われているほとんどの「日本が財政破綻するという理論」は噴飯ものの明後日の方向で議論しています。
ただ、PB黒字化目標がこの世の国すべてに関係がないわけではありません。関係がある国というのは自国通貨を発行していない国のみで、日本は該当しないということをご理解ください。
質問者:あと一つ気になるのは安部元総理大臣が5月11日に“日本銀行は日本の子会社だ“という意見に対し、他の政治家の方は反発もあるようですが、それについてはどうなんでしょうか?
筆者:日本銀行総裁・副総裁を任命する権利を持っているのは政府です。また、日銀の株式を55%保有しているのも政府。幹部人事も政府が推薦して、国会が同意しています。
また、利息など利益が出ると国庫に戻るシステムになっています。
また、鈴木財務相は13日の閣議後記者会見で、「議決権が政府に無いので日銀法で業務運営の自主性が担保されているため、日銀は政府がその経営を支配している法人とは言えない」とか言っていましたが、議決権込みの株式そのものが無いようです。
この上記の状況下で「日銀が政府の子会社では無い」という主張は“財政出動をしない言い訳”をするための“言葉遊び”に過ぎないように思えます。
質問者:確かに事実を知ればそのように思えてきました。
筆者:また、「日銀の独立性を担保」という話もありますが、ここでの独立性とは「手段の独立性」とも言われています。
「手段の独立性」とは日本銀行は大きな目標について政府と共有しながら、日々の金利の上げ下げについて独立して行使する権限が付与されているということを意味します。
つまり、政府が方針を示せば日本銀行はその方針に従う他ないのです。政治家の言い訳は政府の日本銀行に対して円安の責任転嫁をしているように思えます。
質問者:なるほど……。
筆者;よく「海外を見習え」とかありますけど、構造そのものが違う国を見習っても仕方ないんですね。つまりは、EUの国は全て参考にならないということです
見習うならアメリカのように自国通貨があり、積極財政をしている国を見習ってほしいところですね。
※アメリカはコロナ対策に2年間で約1300兆円を拠出しています。