第七夜
自分のやっていることは、
中二病おつ、と言われることだと気づいたが、
まあいいか、と思うことにした。
ただ、中二病乙と呼ばれるほどの、
小説で伝える力があるかわからないが。
私が思い描いたことは、なにも伝わっていないかもしれない。
こんな夢を見た。
病室にいた。
老いた体は思うように動かなくなってきた。
千恵と菜摘は、私が遠くへ歩きに行くのをやめろというが、
まだ存命の父は、「なに、お前は若い。バリバリ歩け」という。
そうだ、私は若い。
そして、今より若いときはないのだ。
あるきたいなら今すぐ歩く。
それが心情だった。
歩きに行く場所は、もっぱら近所であったが、
そう考えていたのは私だけだったらしい。
家から4.5km離れたところで事故にあったときには驚かれた。
そんな遠くに行ってたのかと。
事故を起こしたのは、20代のもので、
いや、最近の若者は、とやりたくなったが、
考えてみたら、私も若者であった。
そうであるとすると、まだひよっこがしてしまったというところか。
う~ん。
表現に悩む。
そんなことはどうでも良かったことだが、
事故で足を失った。といったところだろうか。
車に吹き飛ばされた衝撃で、
バウンドし、その時に、脊椎がやられたらしい。
それを治すために手術をした。
しかし、その手術で医者がやらかした。
それで、どういうわけか足が縮んでしまった。
普通に歩けなくなってしまった。
バランスが保てない。
医療ミスということで、お金がおりた。
そのお金で、私はいらないと言ったのだが、
妻の菜摘は、車椅子を買った。
ただ、まだ退院できないというので、試乗はしていない。
息子の拓哉は忙しいことを理由に、来なかった。
千恵は、よく来ていた。
驚いたことに、父の義政がやってきた。
かなりの高齢であるし、この病院は、かなり遠いはずなのに、
自転車に乗ってココまで来たという。
自分もまだまだだ。
そう、まだ出し切っていないのだ、
出がらしではない、まだ若いのだ。
やってきた父の話を聞くと、そう思わずにいられなかった。
父の話は、活火山を見に阿蘇山まで言ったという。
夏になったら、南国に行って、美女と寝てくるという。
ただ、歳のせいでたたず、本当に一緒に眠るだけのようだが、
前世でどんなことをしたら、そんな生活が送れるのだろうか。
嵐が去ったベットの上は暇で、そんなことを考えるしかなかった。
いや、あれはなんにも変哲もない父だ。
やろうと思えば、自分だってできるだろう。
いや、本当にできるだろうか。
難しい。
だが生き生きとして、羨ましい。
私となにが違うのだろうか。
散歩をしていたのはいいのだが、
それでも自分がちっぽけに感じてしまう。
今より若いときはない。だから、今すぐやれ。
父の言葉だ。
そう、今より若いときはないのだ。
歩きたくなった。
ベットから起き上がって、
とりあえずナースコールをした。
なにかしたければ、やれという話だったからだ。
勝手に抜け出したなんて思われたくなかった。
男のナースさんがすぐにやって来て、
歩きたいことを話したら、
良い、と言った。
この病院は、患者の自主性を重んじるんですよ。
ただ、ナースがいないときは、一人で歩こうとしないでください。
ナースはベットに細工を施し、
立ちやすいようにしてくれた。
肩を借りながら、立ち上がると、
世界が変わって見えた。
やはり、ベットの上での世界は自分に狭すぎたのだ。
ナースさんの肩を借りて、歩いた。
自分にも、お父さんがいたんですけど、
こう、色々してやれなくて、
後悔しているんです。
それで、ナースやってるんです。
でも、やっぱり、男のナースってヘンですかね。
そんな事を言ってきた。
ふむ、それは、
こう返そうか。
ありがとう。
感謝するよ。
まぁ、私は、事故にでも会わなければ、
というケースが違う気がしたことは、言わないでおいた。
まぁ、今日を頑張って生きていこう。