第四夜
こんな夢を見た。
夜の道をひとり、とぼとぼ寂しい家に帰っていた。
こんな時間に歩くなんて、昔は考えられなかった。
痴漢が出るとか言って、暗い時間は外に出るななんて、
言われていたっけ。
一人暮らしを初めて、気づいたことがあった。
それは、私でも、生きていくことができることだ。
そして、やっぱり、誰かと一緒だと、心が休まるということだ。
スマホとか、ネットとかつながっているって言うけど、
それだけだとなにか足りない。
料理をしなくなったからだろうか、と思ったこともあるけれど、
そうではないだろう。
急に、人恋しくなった。
でも、不審者は呼んでいない。
ここは結構明るいから、出ることもないだろうけど。
誰かいないかなぁ。
帰ってる最中に、誰かと、会わないかなぁ。
できれば、
今、このときは、
イケメンで軽薄なやつとかじゃなくて、
優しい、誰かがいてくれるといいんだけどな。
そっと抱きしめて、私の孤独を癒やす。
それが幸せな気がする。
私は、
なにが足りていないのかなぁ。
順風満帆な人生だった気がするんだけどな。
何か、足りていない気がするなぁ。
それは、やっぱり、
なんだろうなぁ。
公園に差し掛かった。
公園から、笑い声が聞こえる。
肝試しか、それともちょっぴり怖いかくれんぼか、
王道の鬼ごっこかもしれない。
冬の夜は、容赦がない。
私を一層寒くさせる。
なにか暖かいものがほしい。
温もりが欲しい。
クリスマスにはプレゼントが欲しい。
誕生日には、ケーキが欲しい。
お正月はいらないけど、年末を一緒に迎える彼氏が欲しい。
お金が欲しい。
あと欲しいものって言ったらなんだろう。
思いつかない。
私の心は空洞なのだろうか。
それくらいしか、欲しい物がないなんて。
無欲はいいなんて、誰かが言った気がするけど、
私はそう思わない。
それなのに、私の欲しいものは、全然ない。
なぜだ。
後ろで大きな笑い声が風にのって聞こえてくる。
冬の寒さと夜の暗さは、容赦がない。
人恋しくなった。
耐えきれなくなって、スマホを取り出した。
すぐに、両親に電話をかけた。
もしもし、私。
もしもし、涼子ぉ、なにかあったの?
母の声だ。
口が泣き出しそうになって、
ひっしに閉じようとして、言葉が出せない。
...今、私もかけようと思ってたところなのよ。
なんかね、久しぶりに会って、
お茶でもしないって、誘おうと思ってたの。
私は、変わっていない、母が嬉しかった。
今日は、いい日な気がする。
なにか変われた気がする。
ありがとう。私、明日から頑張るよ。
そう声に出したかったから出した。
そう、なら良かったけど、
今じゃ、遅いから、また明日もっと早い時間に、かけます。
じゃ、またね~
電話を切った私は、味噌入りの肉じゃがが食べたくなった。