第二夜
こんな夢を見た。
コロナ禍の出来事だ。
私は、銀行にお金を引き出すため、来ていた。
混んでいたために、なぜ混んでるんだ、密じゃないか、
と、じれったい思いをしながら、機械が空くのを待って、列に並んでいた。
そんなときだった。
急に、悲鳴が上がった。
どうしたのだろうか、火事だろうか、漏電でもしたのだろうか、
と思っていたら、外に走って逃げていく人がいる。
私も逃げたほうがいいのかと頭をめぐらしたが、
しかし、なにか起こっていそうなのは確かなので、
それを見てからでもいいのではないかという思いになり、
いや、逃げたほうがいいのではという思いにもなり、
どっちつかずで迷って、結局現状維持を選んだ。
人が、だんだんと逃げていく中、
私は逃げないで平気だろうか、
そんな思いを巡らせているだろう前の人と一緒に、待ち続けていると、
何やら、パンっと乾いた音がなった。
銃声だろうか。
コロ中に御大層なことだ。
逃げる人は、逃げたという頃合いで、
私は、前の人が、無事に機会に進んだことを見て安心した。
なぜお金を引き出したかったかというと、
それは、自分がもらってきた給料を、家で待っている子どもたちに見せて、
自分を尊敬してほしかったからだ。
そして、家の平穏にもつながってほしいと言う願いがこもっている。
次は、私の番だ。
やっと機械が空きそうだった。
はやく、この場から立ち去りたい。
はやく空けてくれ。
二度目の乾いた音がなった。
これは銃声ではないだろうか。
ATMから、はって逃げ出すように離れた。
これでやっと空いた。
はやく、終わらせて、帰らなければ、
家庭が待っている。
ATMを操作している時、ここではなく別の銀行でも良かったし、
何なら近くのコンビニから引き出せばよかったんじゃないか、
給料日だからといって、今日持ち帰る必要はなかったんじゃないかと、
そういう思いがよぎった。
また、乾いた音がなった。
反抗的なものがいるのだろうか。
反抗はやめて、穏便に済ましてほしい。
とばっちりが来たらどうしようもない。
ATMを操ってると、後ろが見えなくて恐ろしくなることがある。
今日は、今にも撃ってくるんじゃないか、という恐怖までついてきた。
しかし、私は関係のない人だ。だから大丈夫だ。
怖くて振り返ってしまった。
猛烈に並んでいる人はいなかった。
逃げたのだろう。
横には、鬼の形相でATMをいじくる人がいた。
ATMをたたいているひとまでいる。
ああ、やめてくれ、注意がこっちに向いたらどうするんだ。
カウンターの方にいる危険人物がこっちに来てしまう。
ああ、どうしよう。
そしたら、死んでしまう。
はやく、お金を引き出してくれ。
はやく、はやく。
お金が出てきた。
私は、一目散に銀行から逃げた。
しかし、乾いた銃声が追ってくることはなかった。
かなり短い。