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第十三夜

こんな夢を見た。



「君は、未来を見ているか」


「いきなりどうしたんスか。師匠」


この師匠というのは、なんというか、

成り行きで私が師匠と呼ぶようになった。


私以外は師匠と呼ばないし、弟子もいない。


「私は、昨日悟ったのだよ。

そう、もう、ピカっときたのだよ。

それを君に伝えたい」


宗教にかぶれたか、

それとも狂ってしまわれたか。


師匠はだいぶ年がいっている。

しかも足腰があまり動かせない。


最初は歩いてたのに、

今では家でゴロゴロしていることが多くなった。


もう認知症が起こっても仕方ないのではないだろうか。


「いやいや、君の思い描いていることはぜんぜん違うぞ。

君は私を師匠と呼ぶのに、なぜそんなに貶めようとするのだ。

まぁいい。そんなこと。

とにかく、君は、未来を見ているか」


「まぁ、見てますかね」


たぶん。

そうなのだろう。


「未来は、希望に満ち溢れているか」


今日は質問攻めタイムなのだろう。

「溢れているんじゃないんスか」


きっと。


「いや、私は、未来は暗黒に満ちていると思うぞ。

問題が山積みではないか。君も不安がいっぱいなのだろう」


断定されるのは、嫌なのだが、

そう考えるとそうだ。


未来に、希望があるように見えない。


「ちっがぁああああう。私が言いたいのは、そこじゃない!

そこじゃない!ああ、じれったい。言葉はいつもそうだ。

肝心なことが伝えられない」



認知症について思うことがある。

あれは、未来を見れなくなったから、

仕方なく、時間を巻き戻して、希望があるようにするのではないだろうか。


こんなことをいったら、

どこからか批判が来そうな気もするが、


過去がつらすぎる場合は、認知症が起こるのだろうか。

過去を見るのは、未来を見るのと同じなのではないだろうか。



「私が言いたいのはだな。

君は若者だ。そう、今言われている暗黒の世代だ。

夢も希望もない。絶望だ」


それは辛いな、師匠。

偉大なる先人たちに文句が言いたくなる。


「だが、なぜ、暗黒の世代なんだい。

本当に、夢も希望もないのかい。絶望しているのかい」


意味不明なことをいう。

やはり狂ってしまわれた。


これは、あれか、よく国語で出てくる。

一般論と筆者の考えというやつか。


筆者の考えでは、暗黒の世代ではないという。


「問題には何があるのだい。

すべて、言ってみたまえ」


このときの筆者の心情を答えるとすると、

問題を挙げてほしい、となる。


「そうですね。たとえば、環境問題、紛争問題、資源枯渇、

地球温暖化、太陽が弱くなっているとかスねぇ。ああ、後、少子高齢化」


満点だろうか。

「うん、概ねいい感じだ。

して、そこでもう一度問う。

それらは、今すぐの問題なのか」


「結構直近ですね」


「そうか。10年、20年は先の話じゃないか」


そう言われるとムッと来る。

反対をしたくなる。


「紛争問題は世界各地で起こっているし、

異常気象は今も、問題を起こしている。

少子高齢化の足音はもうすぐそこまで、迫っている」


「でも、君は、それらに関わろうとしていないじゃないか。

それはなにゆえ。」


師匠、何を言っているのやら、

「そりゃ、私個人ですと、できることは限られてきます。

何もできないのです」


「ほうか、ほうか。

君はやっぱり正直だな。

顔に出やすいと思っていたが、口もすぐ出る。

話しやすくて、嬉しいよ」


...罠にかけられたのだろうか。


「とにかく、私が言いたいことはだな。

君、その問題に首突っ込む気がないのならさぁ、

考えなくていいだろ。放置しとけ。

それより、自分のことに専念しろ。

言いたいことはそれだけだよ。」


「は?」


どんな高尚なことを言ってくるかと思ったら、

そんなことか、


どう、反応すれば良いのか、わからないじゃないか。


「君は、暗黒の世代にいない。

わかったか。自分のことだけ見ておけよ。

はぁあ、あの時、私に会わなかったら、君はどうなってたことやら、

それもこれも、時代の偏見のせいさ」


変なことをいう。

この人はいつまでいきるのだろうか。


「ああ、あと、これ、言い忘れてた。

未来も過去も気にするな。今すぐその先のほうが重要だ。

何に思い悩んでたか知らないが、今を頑張れよ。」


ははあ。

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