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第十一夜

愛VS信念

前回行っていた内容、「人は幸福でも不幸でもない」

こんな夢を見た。


彼が、紛争地帯に行くという。

決意した瞳がじっと見てくる。


私が拒否したら行かなくなるのだろうか。


それは、私と彼とで高級なレストランで、

夜のデートを行っている時に告げられた。


肉体関係は持っていなかった。

今夜、可能性が会った。

だが、それは無くなったのだろう。


なにせ、"彼"は、私を捨てて紛争地帯に行くというのだから。


どうにかして止めることはできないだろうか。

前菜料理が運ばれてくる。


私は、なにかいたたまれなくなって、

黙々と食べた。


美味しいね。

今日はありがとう。


そう言われたが、味は感じなかった。

今日の日だけ切り取られてくれればいい。

なかったことにして欲しい。


聞かなかったことにしたい。


ああ、でもだめだ。

脳がもう、覚えてしまった。


美味しい味も教えてくれない脳は、かなり無能だ。



もう、別れるのだろうか。


それを伝えるために、今日デートをしたのだろうか。

なんて悲しい日だ。


でも、やめて、そう言ってみたら、

もしかしたら、やめて、私を選んでくれるかもしれない。


そうしてくれたら、

日本のどこにだって行く、

一緒についていく。


絶対いつまでも一緒になれる。


味がしてきた。

美味しい。


美味しいよ、これ。


そう言うと、笑顔で、「君のその笑顔が好きだ」と返してくれた。

私達は通じ会えた。


美味しさが口いっぱいに広がった。

もられた生ハムと玉ねぎのマリネと、

名のあるワインが喉を通って、

幸せが胸にたまる。


なんて、良い日になりそうなんだ。



皿がからになった。


口が自然と開いて、言葉を発した。


今日はありがとう。

大好きだよ、武佐くん


ああ、俺もだ。美幸


脳がとろけそうだ。

なんて良い日だ。


これで、絶対にいつか後悔する選択が止まってくれると最高だ。

いや、いっそのこと私が止めよう。

私ならできるはずだ。

私達の間には、愛があるから。



でも口は、思った通りに動いてくれなかった。

その話題だけを避けて、しゃべった。

愛を語り合った。


次の料理が来た。


トマトで煮込んだスパゲッティが来た。

なす、トマト、よく知らないコリコリした野菜、

それに分厚いベーコンが、よく味のついたソースと絡まって、

絶品だった。


美味しすぎた。



この後にはステーキも待っているのだ。


明日には罰が待っているのだろうか。

この記憶は、絶対に保存しよう。

日記に書こう。



残ったソースをパンですくい取り、食べた。


彼がじっと、私を見ていた。

口元だ。


はしたなかっただろうか。

いや、これがマナーだと習った。


それなら、彼は見惚れていたのだろうか。

いたずらごころが芽生えて、ウィンクを返してみた。


彼はドキッとしたみたい。

緊張した面持ちで、目を見つめてきた。


じっと見つめ返した。


それから、少しして、

ステーキが運ばれてきた。


美味しかった。

何もかもが最高な店だ。




ケーキがデザートで、一人二つ食べれるという。

ショートケーキとレモンムースのケーキを頼んだ。


ショートケーキのいちごを口に含んだ。

そしたら、美味しさが口の中で弾けた。


私の決心が固まった。


絶対に止めよう。

彼を必ず止めよう。


行かせない。

私と一緒に暮らすんだ。



私は口を開いて、ケーキをひとくち食べてから、

言葉を紡ぎ始めた。

甘い言葉を。


行くのはやめられないの?


できるだけ、さり気なく。

でも引き止めるように、そう言った。


ごめん。決めたことなんだ。


その答えは予想していた。

だから、次の一手を返す。


変えられないの?


涙をうるませながら上目遣いを意識して。

卑怯だろう。

でも、私と一緒にいて欲しい。

それだけなのだ。私が望んでいることは。


だめだ。


意思が強くて動揺した。

無理かもしれない。


多少強引にでも、出るべきなのかもしれない。


私を捨てていくの?


声も震えた。

もう演技じゃなくなってきている。

彼は、悲しそうな顔をして、ごめん。そう言った。



私は捨てられるのか。

そうか。


でも、彼も可愛そうだと思った。

悲しそうな顔をしている。

私のような、面倒くさい女とデートをすることになったのだ。


私は、とても悲しくなった。


悲愛はかなわないのが、この世の定めなのか。

おとぎ話では、乗り越えて結ばれたのに。

私はだめなのだろう。


涙が溢れた。でも声は抑えた。

彼には、もうこれ以上、可愛そうな思いをさせるのはいけない。

私がしっかりしよう。


彼は、ごめんな、と言った。

何度も言った。


かなりして、泣き止めた。

スッキリした。

もう大丈夫だ。

前を向ける。



彼は不安げに、私を覗いている。

笑いかけた。



彼は、最後に、

一緒に来ないか。と提案してきた。



しかし、私は断って、前を向いて、別れを告げた。

そして、ホテルに寄ることもなく、

近くにある実家に帰っていった。

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