もし異世界で森の聖人ゴリラとドラゴンが闘ったらゴリラは勝てるのか?
やあ。
私はゴリラである。
ある日、密猟者のジープに轢かれて死に、異世界とやらにやって来た。
『青_コーーナー! ゴリーーラーー!』
私の登場にコロッセオが湧く。
私は耳の尖った金髪のメスの人間に拾われ、この異世界で『モンスター闘技場』なる場所で毎日闘っている。
アフリカでも異世界でも人間とは下品だ。
私を含めたモンスター(そう言われるのに抵抗はある)が闘い傷つくのを見て喜ぶ。
『赤コーナー! レッドエンブリオ……ドラーーーゴーーン!』
今日の対戦相手は彼か。
赤いトカゲの様な顔をしているのに硬そうな翼が生えている。
鳴き声は高く大きい。
私を7頭程縦に積んだ高さ。
つまりとても大きい。
『ファイッ!』
ゴングがなる。
ドラゴンとやらはいきなり炎を口から吐いた……が、ここに来てこの攻撃はよく見る。
私はそれを避けて彼の後ろに回り込んだ。
ここからの打撃が私の必勝パターン……のハズだった。
全身への衝撃。
ドラゴンの尻尾による打撃が私を捉えた。
「グウッ!?」
尻尾での打撃、これは私にとって初めての経験だった。
予想外の攻撃に体がこう悲鳴をあげた。
(もう勘弁してくれ!)……と。
私はその声には耳を傾けず立ち上がり走った。
……尻尾攻撃! 二度同じ手は食らうかと私は垂直に飛んだ。
(しまった!?)
打撃は罠だった。ドラゴンの手に空中で捕まれ、握られた。
「ぐあぁぁぁっ!」
ドラゴンの手のひらの突起が、爪が私の体にめり込む。
(なんて力だ……もうだめか)
多量の出血により私の意識は遠退いていく。
だがその時だった。
声が聞こえたのである。
『……ゴリさん! 死ぬな!』
『ゴーさん頑張れ!』
『ゴリーラー! アキラメナイデクダサーイ!』
アフリカの皆の声だ。
不思議と力が湧いてくる。
そうだ! こんな所では死ねない! 私は勝ち続けて……
「アフリカに帰るんだぁ!」
私はドラゴンの手を思い切りつねった。
ドラゴンは悲鳴を上げ、私を手放した。
着地。
再び走る。
当然の様に尻尾による打撃が飛んできたが、構わず走った!
私の狙いは……彼の脚である。
脚に思い切りしがみつき、そのまま一回転した。
『ドラゴンスクリュー!? 伝説の!?』
観客から声が上がった。
ドラゴンの膝と爪先が『真後ろ』に移動した。
ドラゴンの絶叫!
それが試合終了の合図だったかの様にゴングが何度も鳴らされた。
『……勝者。ゴリーーラーー!』
観客から大量のバナナが私に投げられた。
初めは嫌がらせかと思ったが、どうやら祝福されているらしい。
『お前だったらネガスにも勝てるぞ!! ゴリラ!』
(ネガス……? むむっ!?)
恐ろしい殺気に私は思わず後ろに飛んだ。
(誰だ? あいつか?)
おかしな容姿のオスだった。
顔は白い狼だ。
だがそれ以外は人間なのである。
人間か? モンスターか? 私には判断できない。
『普通ってとこだねぇ』
そう言って消えた。
彼がこのモンスター闘技場の絶対王者『ネガス』だと私が知るのは少し先の事である。
「……やられたわ。ゴリラ。」
ヒーラーによって傷が癒されたドラゴンが私に歩み寄って来た。
「私に勝ったオスはネガス以来よ。ネガスには触れもせずに負けたけどね」
「……」
そんなに強いのかネガスは……ん? こいつメスだったのか。
私はメスに手を出してしまった事を誠心誠意謝った。
「なによ! それがここのルールじゃない! 変なオス! バーカ! バーカ!」
ドラゴンは元から赤い顔を更に赤らめて私を罵倒した。
私はなにかおかしなことを言っただろうか?
「べ……別にまた闘ってあげてもいいんだからね! 勘違いしないでよ! あんたにまた会いたいわけじゃないんだから! ふーんだ!」
ドラゴンはドスンドスンと足音をたてて入り口の向こうに消えていった。
「……怒らせてしまったか」
床に落ちたバナナを拾い、皮ごと何本か食べながら私もコロッセオを後にした。
私の闘いはまだまだ続く。
『闘技場6日目第13試合ゴリラVSレッドエンブリオドラゴン』
3分50秒で勝者ゴリラ。
決め技ドラゴンスクリュー。
ひん。




