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覚醒六話

 今回のハイタル鉱山の魔物討伐に向かうのは8パーティ(三十人)で、その中で一番下のランクの傭兵である俺達は周りから浮いていた。

 

「ユート、今更だけど今回の依頼は受けて良かったのかな?」


「……それは知らん」


 かなりの場違いな雰囲気になっているが、俺達は組合職員に案内されて馬車の中でも1番ボロボロの奴に乗って街を出る。

 

 街から出て最低限しか舗装されていない道を通りながら思う。


「あのさ、めっちゃガタガタ揺れるのは気のせいか?」


「気のせいじゃ無いよ。揺れるどころか石に乗り上げて座る場所にお尻をぶつけて痛いよ」


 元の世界の車のクッションとかがどれだけ有能なのかが分かる瞬間で、俺達は石を乗り上げるたびに木の椅子にお尻ぶつける痛みに耐える事を強いられていた。


「ユート、このままガタガタ揺れるのはキツイよね」


「当たり前だ。って、シャル。めっちゃ顔色が悪くないか?」


 今にも吐きそうな顔をしたシャルに俺は袋を渡して介抱する。

 そして、数時間後にバイタル鉱山に到着した時にはヘロヘロになった俺達がいた。


「もう少し道を直して欲しいよね」


「言うな……。多分、他の人も同じ事を思っているはずだ」


 俺達と同じ馬車に乗っていた組合職員は少し離れた場所で吐いているし、他の馬車に乗っていた傭兵達も顔を青くしていた。

 

「チンピラ達の方の対策とかが中心だったから馬車の方は全く考えてなかった」


「そ、そうだね」


 とりあえず昼過ぎになったので持って来た携帯食料を口に放り込みながらこれからの事を話し合う。


「さて、気分的に少しはマシになったか?」


「うん、なんとかね」


 組合職員の人もなんとか復活して、向こうで話しあっているのでコッチも準備を進める。


「正直こんな事は言いたく無いが、チンピラ達がコチラに接触してくるのはぼぼ間違いないな」


 大天組のガストは六人チームでコチラを睨んでいたので、ほぼ確定で何かしら関わって来る筈なのでこの辺の最終確認を続ける。


「考えた限りでは不意打ちでボク達を始末するだと思うよ」


「確かに俺もそう思ったが、他にも罠を仕掛けるとかも考えられる」


 特に動けなくして残虐な殺し方をするとかがあり得そうなので、確認を徹底していると組合職員に呼ばれる。


「チーム仮、鉱山に入ってください」


 チーム仮は適当につけた名前で特に問題はないので、俺達は組合職員の指示を聞いて鉱山に入る。


 鉱山に入ると中は真っ暗だったので雑貨屋で買ったランタンに火を灯す。


「ランタンを持つのはボクの方がいいよね」


「それはな。俺が持つと戦闘になった時に壊すかもしれないからな」


 詮索メインのシャルにランタンを持たせて、俺は腰に装着している長剣を引き抜き右手に持ちながら周りを警戒する。


「あそこに何かいるよ!」


 シャルが指差した先には鈍い銀色の甲羅をしたアリ?ぽい魔物がいた。


「情報であったガードアントだよな」


「うん、組合で見た甲羅と同じく色だよ」


 ガードアントは硬い甲羅に外部を守られているから斬撃系や刺突系は内部から攻めないと倒せない相手だ。(打撃系は上から潰せるので有利)


「だよな。それじゃあ戦闘に入りますか!」


 俺は鉱物を食べているガードアントの足を狙って斬撃系スキルのアッパーカットを繰り出す。

 アッパーカットは下から上に切り上げるスキルで上を甲羅で守られている相手に有利な技。


「結構硬いな」


 ガキッとした音がしてガードアントの前足を切り裂けたが少し手に衝撃が残った。 

 ただ、完璧に不意打ちだったのでガードアントが反応する前に首に長剣を刺して絶命させる。

 

「意外と普通に倒せたが硬い相手には不利だな」


「それと素材の持ち運びが難しいから魔石だけを回収するね」


 シャルが手際よくナイフで魔石を回収したので周りを警戒して、少しすると回収が終わったので周りを見ながら進む。


「この鉱山は広いから道に迷わないようにしないとね」


「それとガードアントの群にあった時の対策もだな」


 今は1匹や2匹で済んでいるが、大群相手でもかなり不利なので対策や退路を確認しながら周りを警戒する。


「この辺の魔物が少ないのはなんでだろう。ボク達を潰すなら大量の魔物をけしかけるのが早いのに」


「チンピラチームに何かあったかもな」


 アイツらの心配は全くしてないが、逆に何もないと神経を使うので早めにアクションを起こして欲しいところだ。


「うん? ユート止まって!」


「何かあったのか?」


 シャルがいきなり大声で叫んだので、俺は周りを見ながら警戒していると少し遠くで何かが聞こえて来る。


「この音は戦闘している。しかも結構大きな戦いだね」


「なる程、そうなると援護に行った方がいいのか?」


「それはユートが決める事だよ」


 なんか自陣満々に言われたので少し考えた後に答えを出す。


「なら俺達で援護出来る範囲なら戦う、無理なら撤退でいいか?」


「分かった。それじゃあ案内するよ」


 俺達は周りを警戒しながら進み戦闘が起こっている場所に到着する。

 そして、ある光景を目にする。


「チンピラチームが死んでないか?」


 ある光景とはチンピラチーム達の死体とガードアントよりも一回り大きいアリが死体を食べていた。


「ねえユート。一つ聞くけどどうする?」


「それは簡単、撤退するぞ」


 俺達は岩陰から見ていたので向こうがコッチを見てない内に撤退する。

 それからガードアントを倒しながら鉱山の外に出ると俺達が1番だったらしく護衛の傭兵達と組合職員の姿しか見えなかったので近くの職員から話を聞く。


「チーム仮は帰って来れましたか」


「はい。それよりも他のチームが帰って来てないですよね」


 チンピラチームはともかく、他のチームが帰って来ていない事に引っかかっていると組合職員も不思議がっていた。


「何か大物でも見つけたのでしょうか?」


 大物……、さっき見た大アリとかが他にも存在していたのか?

 俺はその事で考えていると鉱山の洞窟から何かが聞こえて来る。


「もしかして……」


 シャルの言葉の後、数人の傭兵達が走って出て来たと思ったらガードアント数匹と大アリが洞窟から出て来た。


「「「「ギヤァァア!?!?」」」」


 組合職員達はパニックになって護衛の傭兵達は焦りながら自分の武器を構えた。


「なんでこうなるんだ!」


 俺はガードアントの噛みつきを躱しながら的確に攻撃して倒したりするが、洞窟からはドンドン出て来るので対処が難しくなって来た。


「ユート、このままだと持たないよ!」


「それは分かっているが、この状況ではどうしようもないだろ」


 傭兵達がアリを倒すよりも洞窟から出る方が数が多いので組合職員が撤退指示を出して、俺達は鉱山から撤退する。


〈補足〉ハイタル鉱山、魔物討伐依頼(失敗)

 傭兵、生還は10人で死亡と行方不明は22人。

 組合職員、4人とも無事。



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