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総合組合で相談?

 孤児院の状態を知った数日後。俺達は総合組合にアポを取り、部長と名札に書かれた初老のお爺さんと話し合いを始める。


「低級傭兵達が総合組合で部長をやっているワシに何用じゃ」


「何用って、総合組合が起こした不手際への貸しを返して貰いたくて来たんですよ」


 今ここにいるのは俺とシャル、部長(名前はトラムさん)と秘書の女性の4人だ。

 その中で鋭い眼光でコチラを見て来るトラムさんに俺は睨み返しながら口を開く。


「一つ目はデカアリの手柄、別にここは俺もあんまり興味が無かったので貸しで流しました。ただ、前回のファングボアの依頼は簡単には流せないですよね」


 殺されかけた身からすれば許されない行為だと伝え、相手を見ると秘書さんがトラムさんな何か耳打ちをしていた。


「それは申し訳ない。低級の傭兵まで構っているとコチラの仕事が増えて仕方ないからのう」


 ほう、そう来たか。内心ではキレそうだが、何とか我慢して続きを話す。


「確かに依頼を全て確認するのは難しいですよね。でも、その程度で()()()()()()()組合の人手不足では?」


「……貴様、まどろっこしい事はやめて本題を話せ!」


「おやおや、いきなり怒るのはおかしいと思いますよ」


 俺は自分をあえて冷静なポジションに持っていきながら考えて来た内容を相手に伝える。


「まあ、コチラもそろそろ本題に入りたいと思いました。簡単に説明すると孤児院の子供達を見習いとしたら雇ってみないですか?」


「……は? そんな子供達を雇って何になるんじゃ」


 今度こそ立ち上がって殴りかかって来そうだったが、俺は表情を変えずに理由を話す。


「組合職員は人手不足で、そうなると職員の人達は残業が当たり前になる。でも、子供達を見習いとして雇い新人分の賃金を渡すだけで人手が増えるのですよ」


「なる程、確かにそれで人手不足は解消されるかもしれないが子供達への教育はどうするのじゃ」


「それは簡単ですよ。最初は大人から子供ですが、次からは学んだ子供から他の新人の子供に教育すればいいんですよ」


 正直俺も子供を働かせるのには反対だが、マシに生きていくにはコレが1番だと思いながら内容を喋る。


「これで子供達を新人の賃金で雇えて自分達は人手不足が解消される。どっちともいい関係になれるのでは?」


 ついでに孤児院への給付金を増やしてもらう事を頼んだら、その内容を含めて一旦持ち帰って会議で話し合うみたいだ。

 そして、話はいい方向に進んでいき俺達は十分な戦果を挙げて会議室から出る。


 会議室から出て、俺達はグランとシンクが待っている孤児院の中に入った。


「ユート、ここまで上手く行くとは思わなかったね」


「そうでも無いぞ。俺が定時したのはプラス面だけでマイナス面をほとんど話してないから、ここがどうなるかだな」


 それに総合組合の部長が出て来るとは思わなかった。個人的には課長ありかな?と思っていたのに……。

 俺は計算違いを感じながら孤児院の扉を開けて中に入るとグランとシンクが子供達と遊んでいた。


「あ、おかえりユートさん、シャルさん」


「ああ、ただいま」


 俺達の方を見た子供達は目をキラッと光らせながらダッシュで近づきジャンピングして来たので受け止める。


「ゴフッ、ユートはよく普通に受け止められるよね」


 隣で倒れ込んだシャルを横目に心配そうにしていたネリさんに頷く。


「ネリさん、交渉は前向きに進みましたよ」


「ありがとうございます。でも、私は年長組を総合組合で働かせていいのかと今でも悩んでいます」


 この話を職員の人達全員に話した時に、ネリさんだけは最後まで反対していたので心残りがあるんだろうな。

 俺は少し申し訳ない雰囲気になりながら口を開く。


「俺達の出来る案がここまでしか無くて、押し付けた感じになってしまってすみません」


「いえ、私も理解は出来るんですよ。このままジリジリ追い込まれて孤児院が崩壊するのは……、でも、子供達まで使って生き残りたいかは自分がどう思っているか分からないです」


 子供達の目の前でする話ではないと思うが、俺が敢えてここで話をした理由がある。


「ネリ先生、孤児院がヤバイ事くらいオレ達でも知っていたぜ」


「そうよ! わたし達も頑張ってお金を稼ごうとしたけど子供だからって相手にしてくれなかったわ」


「そんなにボク達が頼りないの?」


 ここにいる子供達は孤児院(この場所)に思い入れがあるから潰したくないんだろう。それに潰れたら子供達の行く場所も無くなるので存続して欲しいと思った。

 俺は子供達の心を使うようで申し訳ない無かったが、利用した事に後悔は無かった。


「さてとどっちにしようが結果待ちだからそれまで遊びますか!」


「ねぇネリさん。途中のお店で買って来たお肉を食堂に持っていくね」


「あ、はい」


 俺達は今までの疲れを忘れるように子供達と思いっきり遊んだ。

 そして、総合組合で定期会議が開かれてトラムさんの意見は無事通り、孤児院の子供達は見習いとして雇われる事になった。(孤児院への給付金も前と同じ額に戻った)


 ただ、俺達の貸しも全部使い切ったので少し惜しい事をしたかな?と思いながら普通に依頼を受ける。


〈補足〉組合職員の階級

〈支部〉見習い→平社員→副班長→班長→主任→係長→課長→次長→部長→支部長

〈国の首都にある総合組合の本部〉は支部と同じ階級に支部長の上に8人の本部長→トップの最高長が存在している。


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