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援軍とその正体

 あの後、魔物の回収をある程度終わらせた時に日が落ちかけていたので炊き出しの夜ご飯を貰って食べ、銭湯(仮)に入ってサッパリする。

 そして、自分のテントに帰って来たのでシャルと雑談を始める。


「魔物の死体集めは大体終わったな」


「だね。でも、報酬が少ないのは辛いね」


「確かに今日丸一日働いて貰えた報酬が大銅貨5枚はなかなかしんどい」


 向こうの言い分は飯も泊まれる場所も用意しているからこんだけで良いだろ!とか言っていたので、思わず殴りたくなって来た?

 ただ、ここで問題はあんまり起こしたく無いので我慢するがテントの中で愚痴を言い合う。


「しかも、迎撃戦の報酬は1人銀貨3枚固定なのも腹が立つね」


「まぁな。それに俺達を使いパシリとしか思ってない感が思いっきり出ている」


 前は批判されて可哀想と思った総合組合だが、今回の事はかなりむかついた。

 そのため、俺達はひたすら愚痴を言い合ってストレス解消をはかる。


「ボクが言える事でも無いかもしれないけどもう少し報酬があってもいいよね!」


「だな。このままだとやる気が削がれてこの街は終わりそうだな」


 正直、俺達はさっさとこの街から逃げるが前の戦闘で戦闘職の人達は命をかけて戦っているのにあんな批判をしている住民達もおかしいと思う。


「この街が終わる……。それは辛いけどどうする事も出来ないからね」


「まあ、俺達が出来る事は限られているからな。それよりもそろそろ遅いから寝るか」


「だね」


 流石に眠くなったので自分のベッドで眠り始める。そして、次の日に起きる面倒事にこの時は気づかなかった。


 次の日。俺達が身支度をしてテントから出て適当に歩いていると作戦本部の方から歓声が聞こえて来る。


「何かあったのかな?」

 

「さあ?」


 俺達は頭に?を浮かべながら喋っていると近くの傭兵達が何かを言っていた。


「おい、他の街から援軍が来たんだってな」


「これで助かる!」


 援軍?なんか気になるな。前の時は予算がどうとかでケチっていたのに今更来るか?と思ったが、関わるとややこしい事になりそうと直感で思いこの場は無視して離れる。


 傭兵達の会話を気にしながら周りを歩いているとクレインさんと出会う。


「あ、ユートさんにシャルさん」


「クレインさん、おはようございます」


 俺達はクレインさんに挨拶した後、援軍の事で質問してみる。


「あの、他の傭兵達が援軍とか言っていたのは何ですか?」


「あー、その件ですか」


 クレインさんの表情がニコッとしたので、背筋がヒヤリとしたがシャルは何もないみたいで口を開く。


「援軍がこの街に来てくれたの?」


「えぇ、ガトレスの街から数千人の援軍が来ましたよ。今はリーダー達が作戦本部で話し合いをしています」


 ガトレスの街はグレイスの街よりも大きな街で戦力もそれなりにあるみたいな事を何処かで聞いた記憶がある。

 俺はクレインさんが嬉しそうに話している内容を聞いていると他の組合職員がコチラを見て喋る。


「クレインさん。さっき係長が呼んでましたよ」


「あ、はい、すぐに行きますね。ユートさん、シャルさん、また後で!」


 クレインさんは小走りで他のところに行ったので、俺達は顔を見合わせる。


「どうも引っかかるよね」


「そうだな」


 考えすぎかもしれないけど、この援軍には何かありそうだと気になっているとガンガンと見張り台の鐘が鳴る。


「敵襲!!」


 戦闘職の人達が忙しく走り出したので、俺達も街の外に出て迎撃に向かう。

 そして、援軍の意味がわかるのはもう少し後だった。


 急いで外に出た時にはもう戦闘が始まっていたので、俺達は邪魔にならないところで迎撃を始める。


「使い慣れてない長剣は難しいな」


 前に使っていた長剣はハードアントに折られたので今は拾った物を使っているが使いにくい。

 ただ、武器を持たずに戦うよりはマシなので我慢して迎撃をする。


「援軍……え?」


 援軍の正体、それはボロボロの服を着て切れ味の悪そうな武器を持たれた人達だった。

 それに首輪が付けられていたので俺の想像が正しければ……。


「まさか、()()を使っているのか?」


 シャルが口ずさんだ言葉に俺は思わず振り向いて言葉を発する。


「百歩譲って戦わせるのは良いとして、まともな装備を持たせないと死ににいくだけだぞ!」 


 俺は力任せにガードアントを切り裂き戦うが、奴隷達の断末魔が聞こえて気持ち悪くなる。


「ユート、顔色が悪いよ!」


「当たり前だろ」


 人の断末魔を聞いて気持ちいい人はそんなにいないと思うぞ!と心の中で思いながら斬撃系武術のソニックスライドとアッパーカットを繰り返し使って戦う。


「この……ん、アレはなんだ」


 俺は奴隷達よりもガードアント達の後ろにいる、かなり大きなアリに目が行く。


「なんなんだあれは!」


「大きすぎるわよ!」


 近くにいた傭兵達は思わず腰を抜かしていた。理由はアリの大きさが隣にいるハードアントの軽く数倍のデカさがあったからだ。(仮名、デカアリ)


「ユート、どうしよう」


「俺も逃げたい!」


 あの化け物を見た俺達の戦闘意欲をバキッとへし折るレベルでヤバかった。というか、言葉が出てこない!

 俺はマジで逃げようと思っていたが、指揮をしている人が大声で叫んだ。


「貴様ら、我らが逃げるまで時間を稼げよ!」


 は……、自分達を見捨ててお前達だけ逃げるのか? その言葉が戦闘職の人達の心に刺さった気がした。

 

「ふ、ふざけるな! 上から目線で命令しては負けそうになると自分勝手に逃げるのか!」


 傭兵の1人がブチギレて抗議したが、向こうから帰って来た返答は矢で貫くだった。


「所詮、貴様らは我々の()でしか無いんだよ! 使えない駒は捨てて新しい駒を確保すればいいだけだ」


 ここで俺は確信した。ヤッパリ上の人達は腐っていると! そう思って上の人達を睨むが相手は逃げる準備をしているのと俺達はガードアントの相手に手一杯で何も出来ない。


「このままだとアイツらが逃げるよ」


 本音を言うと誰が味方なのかが分からなくなったので、俺はシャルの方を見て口を開く。


「逃げるぞ!」


「うん!」


 最低限の荷物は手元にあるのでこのまま逃げようとしたが、デカアリがガードアントを持ち上げてコチラにぶん投げて来た。

 そして、壁を超えて街にある司令部の方にガードアントが放り込まれた。


「ヤバイヤバイ!」


 デカアリがガードアントやハードアントを次々放り込むので街の方から怒号や悲鳴が聞こえて来た。


「ここまでガードアント達が増えた理由はあのデカアリのせいか!」


「多分そうだと思う」


 なる程、そうなると女王アリなのか? 俺はガードアントの隙を見ながら逃げる算段をつける。


〈補足〉大量発生スタンビート

 魔物が突然大量発生して近くの村や街に被害を及ぼす事。この事が起きるとかなりの戦力を使わないと鎮圧出来ない。

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