プロローグ
異世界転移、この事が現実で本当に起こるとは思ってもいなかった……。
ーー
ガヤガヤとした騒音やガチャガチャした金属音が聞こえ、俺は騒がしいと思い目を開ける。
するとレンガをメインとした建物に剣や盾などの武器を持った人達……歴史の教科書に掲載されているような服を着た人達が歩いていた。
「ここは何処かの街なのか?」
俺がいる場所は大通りの広場みたいな場所のベンチの上で、昨日は現代日本の自分の家で寝だはずなので今の光景に戸惑い、周りを通りかかる人からは変な人を見る目をされていた。
なので、俺は周りを見ながら1人でブツブツ呟く。
「異世界転生? いや、凡人の俺が選ばれる可能性は低いよな……。そうなると夢や幻になるのか?」
アニメみたいに神様とかが出て来てチート上げます。や王家とかに召喚されたわけでもなく、街の大通りに召喚されるのは全くの意味不明である。
「でもまあ、動かないと情報は集まらないから動くか……」
俺はしぶしぶベンチから立ち上がって街の繁華街ぽいところに向かって歩き始める。
街を歩いて周りの人の服装を見ながら改めて自分の服装をみるとなんで変な目で見られていたのかが分かった。
何故わかったのかというと、俺がが着ている服は前世に来ていたジャージの上下にスニーカーで周りとはかけ離れていたからである。
「ただ、いい加減何とかしたいよな」
俺は思わず小声で呟くと近くで服屋みたいなお店を発見したので、そこに近づいて品物を見ようとした時に客引きをしていた妙齢の女性と目が合う。
「ねぇ貴方、この辺では見た事のない服を着ているわね」
「……そうですか?」
興味深々なおば……おねえさんを尻目に店の中に入って売り物の服を見ていると、
「服を探しているのかしら? 見たところグレイスの街に来たばかりの旅人ね」
来たばっかりか目を覚まして少ししか経っていませんが……。とは流石に言えないので無言で頷いくと、お姉さんは一つコチラを下から上に視線をずらした後に口を開く。
「ねえ、その服をわたしに売ってくれないかしら?もちろん、代わりの服と銀貨10枚との交換でいいからさ」
この世界で銀貨10枚はどれくらいの価値があるかわからないが、代わりの服が手に入るのは大きいので俺は頼み込む。
「それでお願いします」
俺はお姉さん(ここ重要)が持って来た服を交換してもらい、着替えた後におまけの銀貨10枚を貰って服屋から出る。
茶色のシャツに灰色のジャケット、黒色のズボンに着替えた俺はどうするか悩んでいると、
「この世界の文字はアルファベットに見えるのは気のせいか?」
街をフラフラと歩いているとアルファベットで総合組合と書かれた大きな建物があったので中に入り、建物の中を見ると傭兵部門や商業部門、職人部門なといろんな部門の案内図があった。
ただ、初めての俺にはどこに行けばいいのか分からなかったので入り口近くで立ち尽くしていると、近くの制服みたいな服を着た青年に声をかけられる。
「おはようございます。今日は総合組合・グレイズ支部にどう言った御用でしょうか?」
「あ、はい。この街に仕事を探しに来たのですが田舎の出なので立ち尽くしていた状態です」
この状況で前の世界から来ましたとか言ったら精神科送りとかになりそうなので、適当に嘘をついて誤魔化すと相手は俺の言葉を聞いて優しく返答してくれた。
「それなら組合登録をした方がいいですね。組合登録で自分の適正職業が出るのでその職場で仕事を選んだらいいと思いますよ」
「ふむふむ、ありがとうございます」
俺は青年に組合登録をする場所に案内して貰い、受付の人に俺が書いた書類と鑑定に必要な指紋を提出する。
「えっと、ユートさんですね。では鑑定するので少しお待ちください」
「はい、よろしくお願いします」
俺の本名は月城優斗なのでユートの名前だけ書いて苗字は書かないようにしたのは正解だったみたいで、受付の若いお姉さんは書類を確認してから裏に持っていった。
そして、近くの椅子に座って待っているとお姉さんがカードぽい物を持ってきて受付のところから俺の名前を呼んだ。
「ユートさん、貴方は当たりを引きましたね」
「……当たり?」
「はい。ユートさんの適正職業は上位職の上位剣士です」
お姉さんがテンションを上げて口にした上位剣士と言われてもピンと来ないかったので、俺は少し悩んでから質問してしてみる。
「あの、上位剣士はどれくらいの強さなのですか?」
「それは、職業的に言えば当たりでユートさんの上位剣士ならかなりいいところに就職できると思いますよ」
……いいところか。まあ、それなら色々やりようはありそうなので俺は一礼してからカードを受け取って受付から離れる。
カードを受け取ったが、俺自身は上位剣士がどれくらい強さなのかがわからないので考えながら、一応自衛の為に総合組合の近くにある武具屋に入って安物の長剣を買う。(銀貨5枚)
最初にこの長剣を見て最初は絶対に重いしこんな物を持っていたら警察に捕まると思ったが、周りの人も身につけていたので気にせずに持ってみると意外と普通に持てた。
「重さ的には金属バットに近いな」
でも、今は長剣を持った時に重さを気にしても仕方ないので最終的に無視して総合組合で聞いた情報を元に使う物を買い集める。
「リュック、水筒、ナイフ、携帯食料、他にも色々か」
残り4枚の銀貨を2枚にまで削って最低限の物を買い集め、安いところで昼ごはんを食べた後に街の外に向かう。
街の外に出て、少し遠くの平原に到着した。
「この辺には雑魚が生息しているんだよな」
俺は周りを見ると新人ぽい新しい装備を来た傭兵達がツノが生えたウサギみたいな魔物を追いかけては息が切れてへばっている姿を見て、その光景を見ながら適当に歩いているとウサギよりも長いツノをしたシカ?みたいなモンスターを見つける。
「組合の説明では職業の恩恵を受けられるが、技術は磨くしかないとか言っていたよな」
武術と呼ばれる高威力のスキルみたいな物も存在していて、俺も使えるみたいなので感覚でやってみる。
「よく分からないがやってみるか」
長剣を腰から引き抜き、頭の中で思い浮かんだスキルである斬撃系武術・ソニックスライドをやってみる。
もちろん、普通は思っただけでは何もできないが、ソニックスライドとを頭の中で使うと思うと体が勝手に動きシカ?の首を長剣で切り裂いた。
「うわぁ、血がめっちゃ出ているな」
俺は首から上が無くなったシカを足から持ち、血抜きした後に用意した素材袋の中に放り込む。
そして、これを2回程繰り返して持ち運べる重さがギリギリになったので総合組合に向かい売却する。
売却した合計。
シカ、本名はホーンディア、討伐報酬は1匹・大銅貨5枚。
素材は銀貨3枚。
倒したのは3匹なので、銀貨1枚と大銅貨5枚+銀貨9枚の合計銀貨10枚と大銅貨5枚。
〈補足〉お金のレート。銅貨1枚=100円くらい
銅貨10枚=大銅貨1枚、大銅貨10枚=銀貨1枚、銀貨10枚=大銀貨1枚、大銀貨10枚=金貨1枚、金貨10枚=大金貨1枚、大金貨10枚=白金貨1枚