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開戦初日

本日二話投稿です

《マスター! 先行ゴブリン部隊第一陣、王都正規軍とシルル家の軍旗を視認しました!》


来たか。


-- 相手の反応は?


《隊列を維持したままこちらへ進軍してきます。》


-- こっちの軍旗は立ててるよね?


《はい!軍旗と一緒に、シルル家による侵攻を避難民から聞いた旨を書いた横断幕も掲げてますので、これで進攻の真偽は判別できるかと…あ。》


-- どうした?


《横断幕を視認したと思われる正規軍が急襲してきました…。

第一陣は全滅です。

これは…確定ですね。》


-- あぁ、残念ながら、ね。

-- 噂の新兵器は見られたかい?


《いえ、急襲兵の装備は普通の鋳造剣でした。

特に遠隔攻撃を受けた感覚もありませんでしたし。》


-- ふーむ…。了解。

-- レナ達に声かけて到着予想時間の共有を行う。

-- 第二陣以降の各陣は、会敵後に正規軍を敵軍と判断し、予定していた遅延戦術にかかる様に。


《了解であります。》



----------------------------------



-- まず速報だが、斥候に出しているゴブリンの第一陣が会敵した。

-- こっちの疑念を示した横断幕を視認次第襲い掛かってきたそうだから

-- 避難民の話は本当だったと解釈すべきだろうな。


「予想通りではあるけど確認できたのはいい事ね。

これで容赦なくあの家の奴らを潰せるわ。うふふふふふ」


怖…。


「会敵…ね。一応の確認だが戦果は?」


-- 当方の全滅。ちなみに新兵器とやらが使われた形跡はないそうだ。


「そりゃゴブリン相手には使わんよな。


ただ、逆に言えば『数が多いモンスターの掃討に特別向いた兵器ではない』という解釈もできる。


兵器は一対多で攻撃をばらまくものではなく、一対一以上の効率は出るが、準備に時間が掛かるか、準備は容易いが攻撃力に重きを置いた作りで、かつその運用数に何らかの制限があるのだろう。


もし制限がなく使いたい放題ならゴブリンであろうと使ってきただろうからな。」


確かに。

僕はそこまで考えが及ばなかったが、言われてみればなるほど、彼のいう通りだ。


一対多で攻撃をばらまくものの例としては、炎魔法などによくみられる範囲攻撃のイメージが解りやすい。

魔法的にしろ科学的にしろ、もしそのような兵器が新兵器であるなら数が取り柄のゴブリンには真っ先に使ってきたはずだ。

その方が遥かに効率的なのだから。


-- あと補足情報だが、各斥候部隊によると正規軍の進行が異常に遅いらしい。

-- また、軍中央に台車のようなものを配置し、奴隷に曳かせているようだ。

-- 大きさは大体1.5m四方の立体で、数は10台ほど。

-- 全てに緑の光沢がある布がかかっているらしい。

-- 二人はこの情報に何か心当たりはあるかい?


「うーん…、すまん。俺には無い。」


「私もよ、聞いた事が無いわ。実物を見れば違うかもしれないけれど…」


とするとこれが問題の新兵器である可能性が高いな。

中央にあるという事は遠距離兵器の類か?


-- 今の進み方だと第二陣との会敵は明日になる予定だ。

-- リッチの合流がギリギリ間に合いそうなので遠距離から揺さぶりをかける予定なんだが、二人は何か案があったりするかい?


「私はないわね。軍事に関しては門外漢よ」


お手上げとでも言いたげに首を振るレナ。


「俺からはそうだなぁ。特段これと言うのはないけど、水と火の魔法を使ってほしいかな。

どっちかに対して警戒や回避の素振りがあれば、弱点がわかるかもしれない。

火を避けるなら燃え易い兵器、水を避けるならぬれたらまずい兵器。とかな

具体的な方法はわからねぇけど、火や水の使用は戦争の基本だし。」


-- なるほどね。

-- 了解、伝えておくよ。


-- ところで非戦闘員の避難進捗はどんなもん?


「おおむね順調。と言うところかな。

現状で4割強の避難は済んでる。

避難先の設備に対する不満も今のところはない。


…ほんと、あんたのダンジョンどれだけ広いんだよ」


-- てへぺろ

-- まぁ不平不満が無いなら何よりだ。


「あ、そうだ。今回の件、向こうからこっちの部隊に仕掛けてきたのよね?

それなら王都への連絡はもう走らせちゃうわ。

どうせ向こうもすぐには動けないだろうし。」


-- そうか、王都への報告があったな。忘れてたよ。頼む。


「了解よ」


-- じゃあ会議はここまでという事でいいかな?

-- 明日も各自よろしく。


「言われずともそのつもりよ。」

「右に同じ。」


-- じゃあ解散。

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