始まりの始まり
本日二話投稿です
魔人種の子たちを保護してから3か月ほど経った頃、その事件は何の前触れもなく起きた。
-- 城壁都市が応答しない?
「…ええ、昨晩からトライロ城壁都市の商店やギルドと連絡が取れないらしいのよ。
魔道具を使ってすら。
こっちに支店を構えてるいくつかの商店から調査の陳情が来てるわ。」
-- ゴブリンシャトル便は?
「そっちは今まで通りなの。元々ゴブリンは城壁都市には入れなくて、門番を仲介して
の受け渡ししかしてないから城壁内がどうなっているかまではわからないけど…」
それはおかしい。
連絡途絶で一番に思い浮かぶのは城壁都市が何者かに侵攻されたって状態だけど、
ゴブリンが門番に物を渡せている以上、少なくとも表向きの変化は起きていないって事だ。
にもかかわらず音信不通というのは不自然極まりない。
-- わかった。至急第一、第三部隊に向かわせるよ。
「お願い。なんか嫌な予感がするわ…」
トライロ城壁都市は以前レナの家が管轄していた都市であり、今はそのオルドビス家を取り潰しに追いやった(と思われる)シルル家が管轄している。
そんな彼女の言だ。心してかかる必要があるだろう。
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第一部隊の半分と第三部隊の動員準備を整えていたら
日が沈んでしまった…。
手遅れになってなきゃいいけど。
《ゴブリン各小隊、現在トライロ城壁都市から南に10km地点。異常なしであります。》
《スピリット第一小隊、現在トライロ城壁都市カラ南東ニ15km地点。異常ナシ。
同様ニスピリット第二小隊、現在トライロ城壁都市カラ南西に14km地点。異常ナシ》
トライロ城壁都市はラビリスルーラー領から見て北に位置する。
頻繁に利用する城門は中央門と呼ばれる大きな門で現在ゴブリンの小隊が向かっているが
都市内のスラムなどに出入りする場合は東西の門を使った方が早く、しかも目立たない。
そのため、先行部隊を三方に分ける形で向かわせている。
尚、彼らは既に僕の魔力路エリアからは出てしまっている為、彼らの動きは申告から想像するしかなく、非常にもどかしい。
自力で状況を把握できないというのがここまで歯痒い物とは思わなかった…。
《…マスター、西門、及ビ東門ニ異常アリ。依然距離ハアルガ、木材ヤレンガ
瓦礫ナドデ【都市ノ外カラ】門ガ封鎖サレテイルノガ見テ取レル》
-- !
-- 門周辺に人影は?
《視認できる範囲ニハ一名モナシ。シカシ門周辺ニハ立チ入リヲ抑止スルト思ワレル罠ガ
広範囲ニ敷設サレテイル模様。ソノ罠ノ被害者ト思ワレル遺体ガ多ク確認デキル》
-- …解った。至急第一部隊に合流してくれ。
《了解》
-- 鬼丸!第一部隊の方はどう?
《門まで5kmを切りましたが目立った変化は何も…
ん?》
-- どうした?
《前方より接近する人影あり。それも一人や二人ではありません。》
-- 全小隊迎撃態勢。詳細が判明するまでは念のため敵として対処しろ。
《了解!》
視界が悪いとはいえ平時より飛脚が行き来している道。
距離が詰まるにつれ、徐々に人影の規模が解ってきた。
《観測に合わせて随時更新します。人数は最低値です。
10人…、50…、120…、400…、1300…、2000…、2500…
まだまだ後ろにいますね…。》
-- 2500人以上の人影だと…。
-- それは兵士なのか?
《いえ、違うようです…これは…領民?》
-- なんだって!?
2000人以上の領民の移動なんか聞いた事がないぞ!
と、とにかく状況を把握しないと始まらないし、こっちで収容するにしても
2000人分の住居なんかとてもすぐには用意できない!
-- とりあえず鬼丸はその領民群の代表者にラビリスルーラー領の先行隊である事を説明して状況説明を仰げ!
-- 説明を受けている間、他のゴブリンは領民の先導を行って一刻も早くこっちの領内に迎えるんだ!
-- 平時から行き来してる道とはいえ領外じゃ僕から見えない。危険すぎる!
-- コミュニケーション用の筆記具はあるな?
《勿論であります!了解いたしました!》
-- これは…とんでもないことになってきたぞ。




