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神様は説明好き。

-- …どちらさまでしょう?


口調から自分の親に当たる存在なのだろう事は予想できる。

だがその声が音ではなく自分の内部に直接響いてきた事、声の主が自分の視界には一切映っていない事が不安感を煽る。


『おっとと、警戒しないでおくれよ。

僕は正真正銘君の親さ。もっとも、ある意味ではこの世界のすべての存在の親だけどね』


声はすれども姿は見えぬ名無しの権兵衛さんは、殊更におちゃらけた声色でそう述べたてた。


--まるで神であるかのような物言いですね。


『おぉその通り!僕は俗にいう神ってやつさ!やはり知識だけでもあると話の進みが早くていいね。』



神…。

人類史上多くの集合体、コミュニティで、人類より有能な存在として扱われる、所謂「高位の存在」というやつだ。

もっとも、この声からは大多数のイメージに沿う荘厳さは微塵も伝わらないが…。


-- えっと…あなたが神だと仮定して、ここは神の世界か何かなんですか?

-- 僕にはここに来た経緯も、何もかもわからないんですが…。


『今君が見ているのは君の中さ。君の内面世界とでも言えばいいかな。』


僕の中?ますます意味が解らなくなってきたぞ…。


『ふむ。まぁ混乱するのも当然の事だ。順を追って話そう』


-- 是非お願いします。


『殊勝な態度だ。いいね、実にいい。


まず君についてだが、端的に言うと君は僕が作ったダンジョンのコアだ。

作る時にこことは違う世界の人類が編纂(へんさん)した知識を一揃い埋め込んだから知識だけはあると思うが、君がこの世界に生まれてから数日しかたっていないし、どこからか来たわけでもない。

君は生まれてからずっとここにいる。

君に知識があるのに、それを得た経験や実感が伴っていないのはそのためだ。


つまるところに君自身はダンジョンのコアだが、君が持つ知識はこことは異なる世界に住まう人類のものになっている。

感覚的な違和感はあると思うが、まぁそこはどうにか折り合いをつけてくれ。


次に君を作った理由、僕から見たら目的になるが、一言で言うなら

「この世界に生きるヒトを支えてほしい」

という事に尽きる。


恥ずかしながら僕が作ったこの世界は争いが絶えなくてね…。

今まで何度も王政の国家が建っては、その国勢を維持できずに滅んでいる。

現人類の繁栄手段といったら国家単位の侵略、簒奪(さんだつ)しかない。

このままでは早晩滅んでしまうだろう。


この世界の人類をここまでにするのにも結構な試行回数を重ねててね…。

またあれを繰り返すのは気が進まない。

なんどか平和的繁栄に繋がる知識をもった人間を作っては見たんだが、皆その知識を広める前に死んでしまってうまくいかない。

時間が解決する問題なのかもしれないが、そこまで楽観視できるほど僕はこの世界の人類を信用できないんだ。

神ながら情けない事だがね…。


なので今回は人間ではなくダンジョンコアを作り、更にこことは別の、文明が大いに発展し、小競り合いこそあれど滅亡に至るまでの争いは起きていない、それでいて「歴史的な騒乱の経験は持っている」という稀有な世界の知識を持たせてみたんだ。

ダンジョンコアなら早々死ぬことはないしね。


これが君を作った理由だ。


さて、ここまでで何か質問は?』



-- なぜこの世界の知識を入れていただけなかったんですか?


『理由は大きく二つある。一つは君の容量の問題だ。

ダンジョンコアというものは普通の生物と比べて大きな記憶容量を持つが、君に埋め込んだ世界というのは歴史もさることながら体系化された知識が実に膨大だ。

埋め込むにあたって、君が生まれつき備えた容量の八割強を食いつぶしてしまっている。

僕が要不要を選んで埋め込む事も出来たんだが、あの世界は僕から見ても複雑怪奇な世界でね…。

いつなんどき、どの知識がどこに関係してくるか解ったもんじゃない。

そんな時に知識の不足があっては問題になるだろうと思い、君の記憶容量を圧迫するのを承知で、敢えて取捨選択をせず片っ端から埋め込んだんだ。


もう一つは今の世界の知識を前提としてしまうと、君に埋め込んだ知識と競合してしまい君の人格形成に障害が発生する恐れがあったからだ。

例えば《魔法》という一つの言葉に、この世界と異世界の二つの概念が同時に割り当てられてしまうと混乱を生むだろう?』


-- なるほど…。

-- 「ヒトを支えてほしい」とのことですが、それは強制ですか?

-- 目に入る人類は余さず救えといったような


『いやいや、そんなことはないよ。

死ににくいという理由で君を作ったけども、君にとってまずは保身、自衛が最優先だと思う。

ダンジョンコアは実質不老不死みたいなものだが、反面人類にとっては尽きない資源に等しい。

人類にコア以外すべて潰されて、資源生産機と化してるダンジョンもこの世界には少なくない。

そうなってしまってはもう死んでるようなものだろう?


「ヒトを支えてほしい」というのはあくまで僕の希望だ。君はそれを忘れないでくれればいい。

君以外にも救世主として動ける知識の伝達者は別の形で置こうと思うしね。

君に強制する事と言ったら…そうだな「何があっても人類を見捨てないでほしい」くらいのものかな』


-- わかりました。

-- では次の質問ですが、将来的にヒトの支えになるとして、意思疎通にはどんな方法を取ったらいいんでしょうか?

-- 流石にこのままでは人間とコミュニケーションを取るのも容易ではないと思うのですが…


『ふむ。まぁそれは正論だが、君のようなケースを作ったのは僕も初めてでね。

悪いが提示できる具体的な方法の用意がない。

君の創意工夫に期待するとしか言えないかな。


…そうだな。なら人型のアシスタントを見繕おうか。

独立した自我と欲望を持てる人類に多大なスペックを持たせるのはまずいと思って自重していたが、君の補佐としてならある程度は人間離れしていてもいいだろう。

それでどうだい?』


-- わかりました、配慮に感謝します。それで大丈夫です。

-- 後はダンジョンコアという存在についてもう少し詳しく教えてほしいです。自分の知識にはそんな存在はなかったですし…。


『おっと、それはそうだね、ごめんごめん。あの世界にダンジョンなんて存在は物語の中にしか無いからね。


ダンジョンコアというのは自らの活動のためにダンジョンを生み出し、管理、維持する存在の事だ。

この世界では無機物系の魔物に分類されている、


君のすぐ前に地図のようなものがあるだろう?

それは君の管理化にあるダンジョンを俯瞰視点で映し出したものだ。

場合に応じて君が見たい部分を拡大できるし、どの程度詳しく表示するかも君に都合のいいように調整できるし、君の管理するダンジョンの内部であればどの視点にも一瞬で切り替えることができる。

即ち君にとっての「眼」だ。


ダンジョン内部に関しては、君に見えない部分は無いといっていいね。

その反面君はダンジョンの外を自分で観測することはできないよ、あくまでもダンジョンのコアだからね。』


-- …ダンジョンの範囲というのは何を持って決まるんですか?


『それは君自身、つまりコアから延びる魔力路によって決まるんだ。

ほとんどの生き物には見えないんだが、ダンジョンコアからは細い魔力の管が伸びていて、その管のことを魔力路というんだ。

その視点も魔力路が得た情報から作られているんだよ。』


-- その魔力路というのは僕の意思で広げられるんですか?


『もちろん広げられるよ。魔力路はコア自身の魔力に比例してその規模が決まるんだ。

そしてコアの魔力は魔力路の範囲内で生き物が消費した魔力を吸収する事でどんどん大きくなる。

まさしくダンジョンコアにとっての植物の根のようなものだね。』


-- え?ということは例えば町とかまでその魔力路を伸ばすことも出来るんですか?


『やろうと思えばできるよ。でもおすすめはしないかなぁ…。

土や石なんかの自然物と比べて、人間や動物が手を加えた加工物に後から魔力路を通すのはとても時間がかかるんだ。

地下方向に伸ばすのが一般的だよ。』


-- うーん…。ダンジョンというものについては一応理解できました。それを踏まえたうえで率直な疑問なんですが、まず自分は何をするべきでしょうか?


『ははは、質問がシンプルでいいね!


じゃあまずは君がダンジョンで使役するモンスターのコアを作ろう。使役できるモンスターがあれば出来ることが一気に増えるからね。

ちょうど今君のダンジョン内に野良のゴブリンが入ってきている。そいつを使おう。』

世界観説明って明文化しづらいですよね(疲弊)

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