ダンジョン再建
《主殿。スケルトンコア起動いたしました。どうぞご用命を》
《スピリットコア、起動完了、命令求ム》
スグハから受け取ったスケルトンとスピリットの情報は早速コアとして生成した。
スケルトンは種族的に剣や弓が得意らしいので武士のイメージ、スピリットは幽霊ということで無機質なイメージで生成してみた。
スケルトンは概ね予想通りだったのだが、なぜかスピリットはロボット風味の口調になってしまった。
モンスターコアの人格調整がなかなかうまくいかない…。
鬼丸程すっと出てこなかったので時間が掛かったが、鬼丸が日本語由来なので同じように日本テイストで行こうと思い、スケルトンコアは骨丸、スピリットコアは霧丸と呼ぶ事にした。
■スケルトン
・剣術・弓術・棒術など武器を使用する戦術に関する独自の技能を生まれつき習得済み
・耐久性が低く、長期の近接戦は不利。
・魔法は一切使用できない。
・技能によって戦闘力を稼ぐ特性である為、単純な腕力ではゴブリンにすら届かない。よって土木工事等は不得手。
・骨だけの為、細かい作業もできない。種族としての技能は戦闘に特化している。
・武装は自身の骨を用いるため、製造する必要はないが、骨自体が脆く、数も限りがある。
・生物ではないので毒は効かない。代わりにアンデッドの為、洗礼を受けた水や、僧侶が行う祈りの影響を受ける。
(洗礼を受けた物品は街にある宗教施設で売っているらしい。
よほど名のある僧侶の洗礼や祈りでない限り、効果は塩水が傷にかかる程度の痛みとのこと。)
■スピリット
・基本的に実体はないが、意図的に密度を高くすることで半透明で白濁色の実体になれる。
・実体化していないとき、自身の内側にある5kgくらいまでの無機物を運ぶことができる。
・ダンジョンルーム内であれば好きな大きさに変われるが、一個体がルームをまたぐ事はできない。
・屋外で極端に大きく広がった場合は時間経過で末端から徐々に消滅する。
・恐怖魔法:生物の根源的な恐怖へ働きかけ、原因のない恐怖心を呼び起こす。具体的には、戦闘に集中できなくなる程度の恐怖心を起こす。自身の中にいる生き物であれば同時に何人、何匹にでもかけられる。
・風魔法:空気へ働きかけて風を起こす。行使できる時間に制限はなく、魔力が続く限り維持できるが、攻撃力は全くない。働きかける範囲に応じて時間単位で必要な魔力量が増える。
・治癒魔法:使用する魔力量にもよるが、多ければ死後間もない死体の蘇生もできる。
しかし治癒の代償として「治癒された側が」満足に歩けなくなるほど体力を消耗してしまう上、完治までかかる時間が長く、更に短期間に何度も使うと「治癒された側の」寿命が縮む為、人間社会ではもっと高度な治癒魔法しか使われていない。
うーん…。
こう見ると力仕事も細工仕事もある程度できるゴブリンって結構有能なのではって気がしてくる。
何でもかんでもモンスター頼みになってしまう最初期の選択としてはベストだったのかも。
彼らから話を聞き終わってしばらくすると、真っ暗だった世界が漂白されたかのように白くなっていき、同時にダンジョンマップが戻ってきた。
魔力路が消えてしまっているので、今はまだ自分の周囲数mしか表示されていないが。
-- ふう。またここからか。
-- 心機一転、始めよう。よろしく頼むよ、三人とも。
《《《了解しました。マスター》》》
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まず魔力路がなくなった事による崩落の確認を進めたが、意外なことに損害は小さかった。
ゴブリンの掘進に合わせて補強工事を進めていたのが役に立ったらしい。
包囲殲滅用の大部屋から延びてた9本のダミー通路と、トラップルームの隅が崩落していただけで、他の通路やコアルームは無傷だった。
これは嬉しい誤算だ。
前回の反省点として、モンスター自体の戦闘力が低いままでは、いくら頭数を揃えても抑止力には限界がある。
よって、まずはモンスターの数だけではなく質を上げる必要がある。
そこで手始めに、ゴブリン+スケルトンの遠近混在部隊を作ることにした。
ベストな組み合わせを知る為に、鬼丸と骨丸に人数を変化させて侵入者側と防衛側に分かれて模擬戦を行い、最適な組み合わせを探ってもらう。
その組み合わせを基本単位として、モンスター部隊を作り上げるのだ。
その間、僕は魔力路を伸ばす方向を決めると共に、余っているゴブリンを用いてダンジョンの掘進を進める。
先の敗北を参考に、最低ラインとして、小さな罠部屋が4個連なった複数フロアの構成にする事で、ダンジョン構成を複雑化する。
また、各フロアの最終には大部屋と矢倉を作り、地理的優位を利用して矢を射かけつつ、ゴブリンで包囲殲滅する。
各部屋にはスピリットを配置しており、常に恐怖状態を維持する事で侵入者を弱体化すると共に、罠にかかりやすくなるよう邪魔をしつつ、様々なギミックの動力源になってもらう。
フロア1の大部屋にはゴブリン200体、スケルトン50体を、フロア2の大部屋にはその3倍の数を用意している。
先の侵入者がダンジョン内で魔力をバンバン使っていた為、それを吸い上げた事で僕の魔力量の上限は大きく引き上げられていた。
ゴブリン一体の魔力量から逆算したところ、大体初期の三倍くらいになっているようだ。
また、今まで利便性を考えて入り口付近に配置していた装備の加工部屋は、安全を考えてコアルームから延びる小部屋に移動した。
よって、入り口から見た部屋の順序としては
エントランス
↓
罠部屋×3
↓
大部屋
↓
フロア移動用の縦穴
↓
罠部屋×4
↓
大部屋
↓
フロア移動用の縦穴
↓
コアルーム
↓
装備加工部屋
となる。
これ以外にもう一点新しい試みを盛り込んだのだが、これは試してみないと何とも言えないからなぁ…。
==二週間後==
《マスター!1時の方向からダンジョンに向けて進行する冒険者を確認したであります!》
僕の祈りを真っ向から叩き潰す神様のそういうスタイル。大っ嫌いだよ。
-- もうかよ!早いよ!
-- 人数は!?
《六人組であります。男が5、女1。武器は男がメイス1、弓手1、他の男は長剣です。女は弓手の模様。》
バランスのいい構成だ…。
高威力だが隙が生まれがちなメイスの欠点を、他のメンバーがカバーしている。ように見える。
素人目だが強そうだなぁ…。
-- 目的地はここか?
《そのようであります。進路が全くぶれませんし、会話のところどころに「魔力石」という言葉が出てきているのを斥候が聞いております》
それなら間違いなく目的はここだな…。
多分以前の侵入者から実入りを聞いて来たクチだろう。
まったくもって運がない。
-- ダンジョン内の準備はどう?
《ゴブリン、侵入者到着までには迎撃準備完了の予定であります》
《スケルトン、既に準備完了しております。》
《スピリット、右二同ジク。》
-- よし、練度は十分とは言えないが最低限の準備はできてる。
-- 迎撃にかかるぞ
《《《了解!》》》