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非日常に振り回される、在り来たりな日々の冒険譚  作者: SUNA
第一章 こんな日々の冒険譚
8/51

6 なかなかに美味しい狩場です ~でも、何か忘れているような……~

 2/26に大部分の修正をさせて頂きました。


内容は変わりませんが、一部文章や表現が変わっている個所は在ります。


 6 なかなかに美味しい狩場です ~でも、何か忘れているような……~


 浅層部は自分にとっては雑魚ばかりなのでそこまで足止めされることも無く順調に進んで、中層部になれば襲ってくる数もモンスターの強さも少しだけ上がるので浅層部ほど簡単には行かないが、それでも手間取る事無く、今も現れた『ガルブラッディマンティス』4体と『ガルアークモレ』3体。先に魔法を使ってくる土竜の上位種3体を先制で弓で仕留め、あとはカマキリの上位種を短剣と蹴りで、カマキリは複数体いても同時に襲ってくるのはせいぜいが2体、カマを振り回す攻撃が主なので同士討ちを避けてかある程度間隔を空けて攻撃してくれるので、懐に入るのも簡単だ。


 そんな調子で中層部を進んでマップを見れば、もう少し先に少し広い場所がありそこに大きめのモンスター『ガルビッグスパイダー』の反応が、そこから先が深層部になる。


 このダンジョンの中ボス級のモンスターの一種で自分の5倍くらいの大きさのある毒蜘蛛。糸噴射による捕縛攻撃と頭部に近い方の4本の脚による斬撃に近い打撃攻撃、あとは毒液の噴射による攻撃を主としている。弱点は現実世界の蜘蛛で言う所の頭胸部の腹側の中央とでも言えばいいのか、まぁ下にもぐって胸の中央に何らかの攻撃をぶつければ結構簡単に倒せる。


 ただ今回の目的は鉱石の採掘なので、そのまま回避して通り抜けてしまうのも有だな。


「主、ワタシ蜘蛛倒す」


「え? ちょ、リア!?」


 なんて考えていたら、リアが目の前に躍り出てそのまま駆けて行った。 


 慌てて追いかければ、子猫姿のまま宙を舞い、襲い来る糸や毒液も華麗に避けてガルビッグスパイダーの頭上にたどり着き、風魔法の鎌鼬のようなもので真っ二つにされ光となって消えた大蜘蛛、予想通りのほぼ瞬殺ですか。


「お疲れ、リア」


「こんなんじゃ、準備運動にもならないよ?」


 確かに、リア様にとってはそうですね。


 まぁずっと自分の肩の上に居るだけでは退屈だろうし、身体を動かせれば適度なガス抜きになって、多少退屈も紛れるだろう。


「なら、ここからの深層部ではリアにもモンスター退治お願いしようかな、でもその前に一旦休憩にいて、食事にしようか」


 丁度場所も広いし、中ボス級は再びPOPする(わく)のに2時間ぐらいの猶予があったはずで、そう提案すれば。


「了解! 主、採掘。ワタシ、ゴミ掃除だね。その前にゴハン!」


「私も少しなら戦闘に参加出来ます。この姿でも、このダンジョンの敵ぐらいは片づけれます」


 嬉しそうなリアと、小人サイズのジルも退屈だったのかここぞとアピールしてくる。


「ありがとう、ならリアとジルにお願いしようか」


 満足そうな2人を横目に、困らなくても気分的に光の魔石で明かりを確保してからその場に簡易料理のキットを用意して、材料のストックから林で採取した野草と木の実でサラダと、以前に狩った鹿肉でステーキとあとはスープを簡単に作ってアイテムボックスの拡張版の空間魔法から取り出したテーブルにセッティング。


 そうしてダンジョンの中とは思えない普通の食事を終えて、現実の22時、あと1時間弱位なら大丈夫かな。


 と言う事でテーブルセットも片付けて、いよいよ深層部に進みますか。


  ◇ ◇ ◇ 


 やって来た深層部。中層部までに比べて敵の襲ってくる頻度も数もレベルも更に上がるので、流石に初心者PTではなかなかに厳しい狩場にはなるだろう。


 でも自分の場合は、襲ってくる敵は基本リアとジルでほぼ瞬殺されるので反則に近いかもしれないが、他に人目もないし、自分は何も気にせずに探索スキルで広域マップ上の大凡の鉱石の位置を確認、その後はその目ぼしい場所に着いたらその場所で更に探索を掛けて目の前の鉱石の場所を掘りながら進んでいる。


 採掘にはちゃんと専用の道具のツルハシでもってその場所を掘る文字通りの採掘スタイルで、一度鑑定した事のある鉱石は鑑別できるので、そのままアイテムボックスに、未鑑定が出た場合は鑑定してから入れるが、このダンジョン内で未鑑定が出る事はまずないぐらいには常連だ。


 そうして採掘をしながら進んで予定の23時少し前、中々に順調で楽しいし、まだまだ広域探索で確認できた鉱石の場所の5分の1も掘れてない、暫くここで採掘生活も悪くないかな。


 何より街には暫く戻りたくはない。


 それとログアウトの為とは言えこのダンジョンの周辺でキャンプするならこのままダンジョンの中でも状況はそこまでは変わらない気もすし、ぶっちゃけ、またここまで来るのに時間を掛けるのも面倒だし、ちょうどいい感じの横穴が目の前にあったりするし、もうここでキャンプでいいんじゃない?


 問題はリアなんだが。


「リア、相談が」


 丁度襲ってきていた『ガルハイドワイパー』の群れを蹴散らし終わったらしいリアに話掛ければ、結構なエンカウント率であったのにも関わらず、疲れた様子の微塵もない普段の子猫姿で悠々と寄って来た。


 魔法が効きやすいのをジルが、打撃が効きやすいのをリアがと分担して狩ってくれていたが、最終的にはほとんどリアが倒していた気がする。


 別にジルがサボっていると言う訳ではなく、単純にリアの方が前に出てどんどん駆逐してしまっただけだ。


「主、相談って何?」


 見た目愛らしいのに、本当に強さとのギャップが半端ないよね?


「いや、外に出るのが面倒になったから、丁度いい横穴もあるし今回はここにキャンプ張ろうかな、なんて。でもそうすると、リアは退屈だろう? どうするかなって、相談」


 するとこてんと首を傾げられた。


「主乗せては無理だけど、ワタシだけならワープ出来るよ? 呼んでくれたら直ぐに主の所にも来れるし、最近はずっと一緒に居たから、忘れちゃった?」


 ……忘れていました。そうでした、聖獣様は本来聖域と呼ばれる場所にいてその場所から余り出る事は少ないが、聖獣の意志で行き来などは自由だとか聞いたな。


 なら自分がログアウトしているこちらの世界での3日程、聖域に帰るなりダンジョンの外に出るなり、自由にできるならいいのか? 


「なら、この横穴をベースキャンプにしてもう少し採掘続けてもいいかな?」


 良いって言ってもらった場合に仮にリアは聖域に帰るとして……これで自分が戻った時に呼ばなかったら……いや戦闘面でお世話になっているからは別にして、実際に呼ばないなんて事はするつもりはないのだが、聖域関係者には出来ればもう少し頻繁に戻って欲しいとか言われてたのを考えると、呼ばない方がいいのかと少し思ってしまったり。


「いいよー! 主の好きにしてくれれば。ワタシが勝手に着いて来てるだけだしね? ふふ、戻った時に呼んでくれなくても勝手に来ちゃうし!」


 読まれたように明るく言い切られたが、それはそれで……いいのか? 


 まぁ、本人がいいならいいのか。余り深く考えると怖いことになるから止めておこう。


「なら、決まりだな」


 襲われる範囲内に敵影はないし、横穴に入ってサクサクっと空間魔法で簡易の小屋を取り出し小屋に物理と魔法防御の結界を張って、念の為横穴の入り口にも同じく結界を張って完了、実に簡単だ。


 その小屋の中は3畳程の本当にベッドと一人用のテーブルセットがあるだけのスペースで、それでも寝るには十分な空間。


 いつものログアウトと同様に外套や他の装備も外してラフな格好になって……恰好とこの部屋だけ見れば本当にダンジョンの中とは思えないが、今更なので気にしないでベッドに入る。


「ジル、リアお休み」


「はい、お休みなさい」


「お休みー、主」


 そのまま目を閉じログアウト。現実でもベッドに入って就寝、明日も定時で上がれたら引き続きあの鉱山で採掘予定、良い鉱石が出るといいな。


  ◇ ◇ ◇


 中々に良質の鉱石を続けて採掘できたこともあり、それから2、3回坑道の入り口を変えつつ、結局1か月程その鉱山ダンジョンに通う日々を繰り返してしまったある日。


「主ー? いい加減飽きない? それに、他との連絡断ったままだけど良かったのー?」


「マスターが楽しそうなので言ってませんでしたが、何度か知り合いから連絡入ってましたね、メールやチャットの受付拒否にしたままでしたでしょう?」


 言われて情報ウィンドウを確認したら、確かに拒否にチェックが入ったままで。


「……もっと早く行って欲しかった。いや、忘れた自分が悪いんだし、この1か月はそれなりに楽しかったんだけどさ、これ、チェック外すの怖いんだけど」


 基本自分はソロだとは言っても知り合いがいない訳でもなく、どちらかと言うと騒がれて迷惑を被ることの多い自分を知って、いろいろ心配してくれたりする自分には勿体ない知り合いで。


 つまりは、これは現在進行形でまた心配を掛けているパターンか。


 恐る恐る拒否に入っていたチェックを外せば……その途端に入ったチャット申請に内心悲鳴が上がる。


 ひぇっ! このタイミングって事は、絶対にここ数日頻繁に連絡くれてたパターンだ。


【クラ――】


【! やっと繋がったか!! クラヒ無事か? また何かに巻き込まれたトラブルか!?】


 名乗る前に捲し立てるような安否確認って、申し訳ないが、本当に心配かけてたんだ。


【ビルド済まない、普通に無事だ。少ーしだけのつもりが、拒否チェックの解除を忘れてただけで……】 


【はぁ。いや、無事ならいいんだ、ログインはフレンド登録で確認出来たのに、連絡が取れないから、また何かに巻き込まれたのかと勝手に思ってただけだ】


 うん、大きな溜息頂いたけど、まぁ1か月連絡とれないのは……いや、よく考えたら1か月って長いのか?


 まぁ、心配かけた事には変わりはないが。


【来週の水曜辺りは暇か? もし良ければ一緒に狩りでもしないかって誘いでもあったんだが……】


 狩りのお誘いか、今日は現実の金曜だから5日後の水曜は、と。


【うん? 来週の水曜辺りは特に予定はないな】


 記憶を頼りに、特に予定も入れてないし、仕事の方も忙しい時期でもない、大口の注文も入ってないので定時上がり出来るだろうと予想を立てる。


【なら、水木で予定空けといてくれ、場所はヴァスザードのフィールド予定で詳しい内容はメールで。あと、そっちの話も聞かせてもらうからな】


【了解】


 久し振りのPT狩りか、感覚を忘れて足を引っ張らなきゃいいけど。


【もう拒否にチェック入れたまま忘れるなよ? じゃあ、またな】


【分かってるよ、またな】


 切れたチャットに1つ溜息。


 別に人付き合いが嫌いと言う訳でもないし、知り合いや野良PTとでの狩りもソロとは違う楽しさがあるから、それはそれで好きなのだが、何分人の居る場所は勝手にトラブルが舞い込むのが面倒で。


 5日後なら数日はこのまま採掘を続けて、3日後に街は経由せずにリアに頼んで直接移動すればいいかな?


「なに~、お説教された?」


「あの面子でしたら、心配させた小言ぐらいでしょう?」


 うん、ジルの当たり。


「お説教より小言に近いかな。プラスで狩りの誘い、来週に……ヴァスザードだからリアには2日前くらいに移動お願い出来ないかな?」


「いいけどー、あの辺ならこのダンジョンから1時間ぐらいだし、前日でもよくない?」


 リアがこう言ってくれるなら、ぎりぎりまで採掘粘ってもいいな。


「そっか、ありがとう。なら火曜にヴァスザードに移動って事で、それまで採掘続けてよう」


「了解。にしても……主、本当に飽きないよね?」


「マスターが楽しいならいいんですけど、正直私はこの景色は飽きました」


 リアはまだ自分で移動が出来るが、ジルは指輪に宿っている分それも無理だから少しだけ申し訳ないが、ジルも良いと言っているしもう少しだけ付き合ってもらおう。



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