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幼馴染の為に魔王を倒して日本へ帰ってきたのに、異世界少女たちが俺の恋人ポジションを狙ってやって来る  作者: 向原 行人
第3章 二人の幼馴染み

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第26話 二人の幼馴染みを救助する元勇者

「なんだっ!? どうして水が盛られているんだ!? 表面張力なんてレベルじゃないぞっ!?」


 水の山に向かって水が集まり、ビート板ごとマリーが引き寄せられていく。


「マリー! 逃げろっ! プールから出るんだっ!」

「そ、そんな事言われてもっ!」


 マリーが使っていたビート板が手から離れ、勢い良く水の山の中へと吸い込まれていった。

 これは……早く脱出しないと、水の中に閉じ込められ、窒息してしまうんじゃないか!?


「マリー、掴まれっ!」

「ソウタッ!」


 何とかマリーに近づき、目一杯手を伸ばす。

 マリーも俺に向かって手を伸ばし、指先が少し触れた所で、


「颯ちゃんっ! 助け……」

「陽菜っ!」


 俺の背後を陽菜の声が通り過ぎて行く。

 気付けば、中心に向かう水の流れが随分と早くなっており、せっかく触れる事が出来たマリーも手を掴めずに吸い込まれてしまった。


「マリーッ!」


 天井にまで届きそうな水の山の中に、陽菜とマリーが閉じ込められている。

 早く外に出さなければ、二人が死んでしまう。

 二人を助け出すために勇者の身体能力で俺が突っ込めば、そのまま突き破る事が出来……いや、流石に無謀過ぎる。

 考えろ。普通、プールの水が山の様な形になったり、人を中に取り込んだりはしない。日本では。

 だが、俺はこういう状況を知っている。ティル・ナ・ノーグで何度か遭遇したスライムが、まさにこのような方法で得物を補足し、溶解して自らの養分とするんだ。

 ただ、ティル・ナ・ノーグに居たスライムも、昆虫や小動物を得物にしていて、こんなに大きなスライムは存在しなかったが。


「ソウターっ!」

「エレン!? どこに行ってたんだ? いや、それよりエレンの召喚魔法で、あの大きなスライムみたいな奴を攻撃出来ないか?」

「うぅ……ごめんなさーい!」

「どうした!?」

「あれ……私が召喚魔法を使って、こんな事になっちゃったの」


 エレンが何を言っているか分からないが、理由はどうあれ、召喚魔法は使えないみたいだ。

 となると、俺が何とかするしかないのだが、スライムは打撃による攻撃が効き難い。

 とはいえ、プールに武器の代わりになりそうな物なんて当然ないし……いや、待てよ。

 勇者の身体能力なら、これが武器代わりになるんじゃないか!?


「くっ……らぁぁぁっ!」


 プールに張られているコースロープの片側を力任せに引きちぎり、そのまま力任せに素早く上下にしならせる。

 すると、スライムの身体を通っていたコースロープの箇所に、剣で斬ったかのような隙間が出来た。

 いける。武器としては異様に長過ぎるけど、何とか使える!

 スライムに近づいてコースロープを引きちぎると、全力で振り回す。

 速く……回転速度をとにかく上げ、マリーや陽菜が居ない場所の水を、スライムの身体を力任せに切り刻む。

 何度かスライムの身体である水を吹き飛ばしていると、山の様に盛りあがっていた水がその形を失い、元のプールへと戻った。


「陽菜! マリー!」


 気を失っている二人を上向きにして、人工呼吸を……戸惑っている場合かっ!

 陽菜の口に空気を送り込み、次はマリーへ。

 人工呼吸を行いながらプールサイドへ二人を上げ、そのまま人工呼吸を続けていると、先に陽菜の意識が戻る。


「颯ちゃん……?」

「陽菜! 良かった! だけど、ちょっと待って居てくれ。まだマリーが!」


 陽菜には悪いが、マリーの意識が戻らないので、暫く人工呼吸を続けていると、ゆっくりと目が開く。

 だが、


「ソウタ、ソウタ、ソウター!」

「ちょ……マリー……んっ! やめっ、マリーってば!」


 せっかく意識が戻ったと思ったら、マリーが両手両足を使って俺にしがみ付き、マリーから何度もキスしてくる。

 しかも陽菜の目の前で。

 いや、だけどこれは人命救助だし、陽菜にもキスしたし、分かってくれるよね?

 何とかマリーを止め、俺から引き剥がすと、


「えっと、颯ちゃん。助けてくれて、ありがとう」

「あぁ……えっと、その、緊急事態だったからさ」

「う、うん。そ、そうだよね。命に関わる事だもんね」


 陽菜が困惑した表情と共に、俺とマリーへ交互に目をやる。

 マリーが何度もキスしてくるから、せっかくの陽菜との初めてのキスなのに、変な空気になったじゃないかっ!

 人工呼吸は仕方が無いとしても、アレは流石にどうかと思う。


「……マリーも無事で良かったな」

「うん。だから、ソウタ。さっきのもう一回して」

「しないっての!」

「どうして? 先にしてくれたのはソウタ。ソウタがウチに、あの気持ち良い感覚を教えた。知ってしまった以上、もう我慢出来ない!」

「……あのな。あれはマリーに意識が無かったから、人工呼吸っていう応急処置を行ったんだよ」

「意識が無かった? ウチが? 水の中だから目を瞑っていたら、いきなり口から息が吹きこまれてきたんだよ。それからソウタの声が聞こえて薄ら目を開けたら、ソウタが口に息を吹きこんできて、この気持ち良いのはソウタと口と口を重ねる事なんだって気付いて……」

「ストーップ! わかった! マリーが目を閉じて居ただけで、気を失っていた訳じゃなかったのは分かったから、この話は終わりにしよう」


 陽菜はともかく、マリーに関しては俺が勝手に勘違いしてキスをしていただけだったと……思わず泣いてしまいそうだ。

 まぁ、陽菜もマリーも大事に至らなくて良かったんだけどさ。


「ソウタ。ところで、エレンは何をしてるの? さっきから仰向けで水に浮かんで、チラチラとソウタを見てるけど」


 マリーに言われてプールに目をやると、溺れた振り? をするエレンが目を閉じて、何かを期待するような顔で待って居た。

 ……とりあえず、放置かな。

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