*4話 仲間との別れ
チョコンの目の前に現れたのは、ソラが前に送った、魔剣のステータスなどが記載されている写真だった。
「そいつ、ソラが言っている事は本当だぜ」
騒いでいたプレイヤーは黙る。
「この剣の、フォーススキル・・・・・」
「なぁ?これでチーターじゃないってこつぁ、分かってくれたかい?」
女性プレイヤーは頭を縦に振った。
「はい。でも、貴方のせいでエルゲンフォートさんが死んだ事実は揺るぎません。だから、私は貴方、ソラさんが嫌いです。では」
謝罪と別れの意味を込め、頭を下げた。
だが、またも奥に向かおうとする女性を、チョコンは止めた。
「待てよ」
「ごめんなさい。エルゲンフォートさんの死顔を見ていると心苦しいの。勝手だけど、ここを離れます」
「名前を教えてくれ」
女性は溜息をすると、素直なことにその質問に答えた。
「私の名前は、メメ。それじゃ」
メメは、ゆっくりとした足取りで、謎のフィールドの出口らしき場所を目指す。
「困ったことがあったら俺に言えよ!」
チョコンは手を振るが、メメは振り向かず、皆の視線を浴びながら歩いて行った。
その姿が見えなくなると、悲痛の叫び声が轟いた。
「アァァッ!アァーーアアアアッッッ!アァア、アァアアアア」
その叫びを聞く者一人一人は胸を閉められる。
涙を必死に堪えていたのだろう。盛大に泣き喚く声が聞こえる。
この世界で死んでしまったら本当に死んでしまう。蘇生も出来ない。この先、このような体験が自分を襲うかもしれない。そして、この世界から出れないかもしれない不安。それらは、プレイヤー全員の気力を奪っていく。
「なぁ、」
チョコンは皆に問う。メメは悲しさには負けず、ここを離れた。だが、皆はどうだろうか。不安に勝ることは出来るのだろうか。必死に藻掻き、藻掻き苦しみながらでも、もしこの世界から出れなくとも、前を向いて歩んでいけるだけの自信はあるか、と。
その問いには誰一人として答えようとはしなかった。
「ま、良いけどよ。じゃ、俺達も外に出ようぜ」
チョコンはソラに手を伸ばしてきた。だが、その手をソラは、取ろうとしなかった。
「俺はお前とは一緒に行けねぇよ」
トーンが低い。落ち込んでいるのか。だが、チョコンは誘うことを諦めなかった。
「何でだよ。ほら、早く出ようぜ」
「この建物からは出る。だけどお前とは」
「馬鹿なこと言ってんじゃあねぇ。仲間じゃねぇかよ」
ソラは唇を噛み締める。辛い。別れるのがとても辛い。一緒に戦ってきた仲間の一人だからこそ辛い。
「あぁ、ずっと仲間だ。だけどお前は皆を導ける人材だ。お前だけしか導けない。」
「お前にだって皆を導くことは出来る。これで終わりなんて残酷過ぎるだろうが。まず仲間なんだ。切ろうとしても切れねぇんだよ」
皆を導けるような力は無い。助けることすら出来なかった。皆を導けるのはチョコン一人だけだ。
「そうだな。俺達はこれから先も仲間だ」
「それじゃあ、」
「だけど、パーティーは抜けさせてもらう」
これから先も仲間。そう言ってくれて嬉しくて、笑みを溢したのも束の間。パーティーの脱退宣言をされ、愕然とした。
「お、おい、今さっきずっと仲間っつったよな」
「あぁ、だが、仲間とパーティーは別物だ。ここで俺とお前は別れる。お前と俺は別々の道を歩み続けるんだよ」
チョコンは呆然とした。だが、ソラはそんなことは気にせずに、動かずにいた足を動かし、出口の方へ向かった。
その姿を見て、チョコンは最後にこう言った。
「いつか、お前の最高のパーティー作って見せろ!そして後悔させてみろ!お前という存在が脱退する事を簡単に許した、俺をよぉ!」
ソラは後ろは見ず、悲しみを噛み殺し、ゆっくりと歩いて場を去った。