序
内容少し変更したため、少し文章追加しました。(2019/01/20)
私は一人じゃないけど一人だった。
それは生まれてからで、当たり前だった。
当たり前のまま時は進み、表情すら固まった。
当たり前だけど、兄弟が、姉妹が、そうするのが当たり前のように絆を深めるようにしている。
私にはない当たり前がそこにあって。
心の中が暗く澱む。沈む。寒くなる。
祖母はそれでよいと言った。
そのままでよいと。絆など不要で、心の在り方を説き、まっすぐ穢れるなと。
穢れは魔を呼び、魔を集め、魔をつくるから、と――……
私は疲れてしまった。
このまま続くのかと。
そこに私はいなくて、居場所なんてないから欲しくて。
すがって、縋りついたけど無意味だった。
先なんて考えれない。
先なんてなくなればいい。
どうして私はここに在るのか。神にいくら問うても答えてなんかくれない。
闇に溶けてしまいたかった。
だから……
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肌寒く、夜がくるのが早くなる季節。
雪はまだ降らない時期だがだんだんと冷えていく空気を感じながら、雪華は学校からの下校道を歩く。
高校2年の雪華は部活もバイトもしていないが、遅くに帰るようにしていた。
遅くに帰りたいのなら、部活やバイトをする選択肢もあるのは知っていた。
しかし雪華には許されていなかった。
亡き祖母の教えのため、それを守ることが唯一雪華に課せられた責任だった。
その教えのため、家族として当たり前すら許されていなかった。
それが雪華の当たり前なのだ。
ぼんやりと歩く。
家は山の方にあり人気もだんだんとなくなる。
「……?」
いつもの帰宅道で雪華以外に人がいることは、かなり珍しい。
背後の方に人影を感じ、ちらりと見る。
黒い人影がこちらに走ってくる。
走っている体勢もマラソンやジョギングなどではないような、前かがみで何かを持っているように見えた
「(逃げなきゃ)」
一瞬の反応は遅れたが、なりふり構わず帰宅道の進行方向へ逃げる。
がむしゃらに走っているのと、あたりも暗い山道を駆け抜ける。
背後の気配も気にせず。
肌に枝が、葉がかすって傷をつけても気にせず進む。
前も気にしていなかっただろうか。
木々の道がひらけ、見える夜景
浮遊感
背に、全身に走る衝撃――…
どくりどくりと、全身が熱く、息苦しい。
血が流れている様子を、妙に凪いだ心で眺めている。
――これが私の終わり――
そう、やっとこの続く人よりは短く、私にとっては長かった道が終わる。
痛みも消えゆったりと暗闇に意識を沈めた。