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確信の発露

 扉を開けると、その先には激怒したルドルの姿があった。


 その口は怒りに震え、エインの後ろにランがいることを確認した彼は、エインの胸倉を掴み上げた。


「俺の許可なく妹を連れ出してどういうつもりだ!?」


 怒鳴るルドルを、エインは冷静に見つめる。


「元気そうで何よりだ、てっきり怒る気力もないと思っていた」


「――ッ」


 その悪びれない様子にルドルは拳を振り上げる。


「なぁルドル、お前は何を怒っているんだ? 俺は外で偶然見かけたランを保護しただけだぞ?」


「……ッ」


 状況は確かにそうだろう、意識の崩壊した妹がふらふらと外に飛び出しそのまま行方不明になる。それを外回りをしていたエインが偶然見つけて家に連れ戻した。


 たったそれだけの事ではある、だがルドルはこの一連の流れにどこか思惑の気配を感じたのだった、状況とこの言葉があらかじめ用意されていた気がしてならなかった。


 ルドルは逡巡の後苦虫をかみつぶしたように顔を歪めると、振り払うように掴んだ手を払う。


「これからは気をつけろよ、まぁ外に出たからってランをどうにか出来る奴はいないと思うが」


 皴になった服を直しながらエインが言った。


「……ああ、感謝する、エインまだそこにいろ、話がある」


 そう言ってルドルはランの手を引くと、自室まで誘導する。


「……」


 エインは腕を組み、その様子を見送った。


 ランを自室で寝かしつけたルドルは玄関に立つエインの前に立つと、一度大きく息を吐き、意を決して口を開いた。


「勇者連合が解散した」


「らしいな、まぁあれだけ腐り果ててれば時間の問題だった」


「……お前のやったことを責めるつもりはない、確かにあの連中は腐っていたし、信仰心のかけらもなかった」


「……だが?」


 エインは挑発的に先を促す。その先を言葉を予見したように。


 その態度に顔を顰めながらルドルは言葉を続ける。


「……だが、あの組織に対して……お前は恩義があったはずだ。なぜあんなことをした? もっと穏便に済ます方法があったんじゃないか?」


「確かに恩義はあるが、それはあくまで俺の為に死んでくれた英霊に対してのみだ、あの私欲に目がくらんだ連中じゃない」


「……あの組織は、その英霊の一人が心血を注いで作り上げたものなんだぞ」


「……」


 エインは目を細めた。


 ルドルがカナにこだわっているのは明らかだった。 それは恋慕なのか罪悪なのか、それとも別の何かかあるいはすべてか、はっきりした事は分からないが少なくともその拘りは今のエインにとって何の役にも立たないのは確かだった。


「お前の気持ちはわからないでもない、俺だって継続のための案は出した、だが奴らの答えは勇者に対して呪をかけての洗脳だ、もはや連中には当初の志すらなかったよ」


「……それでも、お前ならもっとうまくまとめることができたんじゃないか? なぜあんな短絡的な方法をとった?」


 ルドルは引かない、継続に拘るあまり他の事が見えていないようだった。


 勇者に呪をかけた事実は『それでも』で切り返せる事ではないはずなのに。


 しかしエイン自身一度は魔王討伐を投げた身である、その前提でルドルにできる償いがあるとするなら、それはあの組織を守る事しかなかったことはエインにも理解できた。


 この策がなければ、エイン自身ここまで強硬には動かなかっただろう。


「もっと重要なことができたからだ」


「重要? それはなんだ?」


「魔王どもを殺す方法を思いついた、ここ数日の外出はその裏付けさ、途中ランに会ったのは幸運だったよ」


「……!」


 エインの事も無げな言葉にルドルは目を瞠る。


「本当か? 勝算は?」


「六割弱、まぁ今までゼロだったのを考えれば挑む分には十分だろ?」


「……そうか」


 ルドルは小さくそう呟くと、静かに拳を握った。


 もしこれがなされるなら、散っていった命にもやっと本当の意味で報いることができると、胸の内から熱いものがあふれてくるのを感じていた。


「ルドル、教会を通して何人か会議に参加してほしい人材がいる、頼めるか?」


「ああ、もちろんだ、そういう事ならいくらでも手を貸す、俺に出来る事なら何でも言ってくれ」


「助かる。 会議は三日後、城の大会議室だ、詳しい時間と人員は城の参謀大臣と話した後に伝える、たのんだぞ」


 エインはそういうとルドルの肩を叩き、ルドル宅を後にした。


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