魔王考察
さて、どこから話そうか。
そうだな、そもそもなぜ僕たち魔王は存在しているのだと思う?
オルワルド、君の最初の記憶はどこからだい?
……そうだね、みんな大体同じだよ、目を開けたら目の前に大魔王様がいて、僕たちはこの体のままそこに存在していた。
幼年期など存在しないし、それまでの記憶もない、ただ無から突然生まれたのだと思う。
正確には大魔王様が作ったという方が正しいのかな? ただこの辺は新しい魔王が生まれないことと矛盾するから何か条件があるんだとは思うけど。
さてここで一つ疑問がある。 オルワルド、君の序列は7位だけどその上の序列に君はどういった印象を受ける?
ドラゴランス、シルバレイ、ガルウィ、フレムハンマ、皆武力に偏っていると思わないかい?
確かに6位のフレムハンマ1人で序列7位から13位までの魔王が束でかかっても勝てやしないだろうし。
序列こそ上だけど僕の実力もフレムハンマとさして変わらないんだよ。
そういった意味では戦闘能力は重要な要素ではある。
ただね、なぜ大魔王様は武力を優先で序列をつけたのだろう? 僕たちの目的は神殺しだ、そして今の段階では知力の方が明らかにウェイトが高いはずなのに、下位の魔王たちは上位の武力に押さえつけられ検証すらまともに進められていないと思わないかい?
「……ずいぶんと際どい話をなされますな」
研究の試験片や紙が乱雑に散らばる部屋、紫色の木材で作られた机を挟み、オルワルドは向かいに座る男の話の腰を意図的に折った。
「僕がなぜあの勇者に興味を持つかの話だからね」
シーキューブは淡々と言葉を発する。
「……つまり、大魔王様は本気で神殺しをなさるつもりがないと言いたいわけですな?」
「そう思わざる得ない側面もあるという話さ」
「神を殺すうえでやはり最終的には武力が必要になるのではありませんか?」
「もちろんそれは分かっているよ、ただそれは今じゃないし、僕ならもっとうまくやれる」
「……!」
その言葉にオルワルドの目つきが鋭くなった。
「事実だよ、今はあんなちまちま魔物を送って戦う段階ではない。 攻めるなら一斉にまとめて、それまでは息をひそめるべきだ」
「……」
「魔物を送って人間界に攻勢をかける理由は二つ考えられる、一つに上位の魔王たちが好戦的でじっとしていられないからそのガス抜き。 そしてもう一つは神が人々を救うことでその信仰を高めるため」
「なるほど……つまりあなたは、我々など所詮は神の操り人形であると、そういいたいわけですな」
「違うよオルワルド、少なくとも僕達は違う。 今の魔界を本気で変えたいと思っている、あの勇者はその為のサンプルとなりえるんだ」
シーキューブはまっすぐにオルワルドを見つめた。
「……信じられませんな、たかが人間ごときにそんなことが」
「僕も勇者ごときが大勢に影響を与えるとは思っていないよ。所詮家畜の限界などたかが知れている。 ただだからこそ……神の理外がそこにある予感がある」
「それはつまり?」
「まだ答えがあるわけじゃない、ただこの研究の先に僕たちの悲願が待っている気がするのさ」
「……神殺し」
「そう、敵は強大だ。 いかにドラゴランスやシルバレイが強いと言っても敵の底が見えない以上こちらの手札は多い方がいい」
「……」
「僕の望みはあなたと同じだ、そこだけは信じてほしい」
(危険ですな……しかし…)
オルワルドは目の前の男を図るように見つめる、ここで大魔王様の名を伏せるあたり明確に不信であるのが分かる。ありのままを報告し排除も可能だが……
「……今回の話は私が預かりましょう」
オルワルドはそう言って立ち上がった。
「私自身今までの行程に何も思いがないわけではない、ただあなたの命は私が握らせていただく」
「……ありがとう、信じてくれてうれしいよ」
「私も見ていることをゆめゆめ忘れませぬよう」
オルワルドはそれだけ言うとシーキューブの部屋を後にした。
「……」




