集殺による崩壊
「気づかれた?」
ジュガンは思わず後ろ、シーキューブへと視線を向ける。
『動きが止まったところを見ると、当たりのようだな』
渦の向こう、魔物の視界ごしに見る勇者が言葉を続ける。
『何が目的だ? この世界の魔王にすら勝てない俺を誘い出して何を試している?』
「単なる暇つぶしなんだけど……さて、なんて応えようかな」
シーキューブから好きに使っていい大群を与えられただけのジュガンにとってはその質問に答えるだけの意味を感じなかった。
「応える必要はないよ、とにかくあの勇者を倒して見せてくれそうしたら新型を真っ先に君に支給できるように取り計らおう」
シーキューブは勇者を見つめながらそう言った。
「りょーかい、ってかもう勝ちパターンに入ったでしょ、相手の手札も割れたし、この陣形の本領はここからだ」
魔物がまた動きだす、先ほどと同じ規則的な陣形で、勇者に襲い掛かる。
「虫けらの言葉に応える必要はないか」
エインは、顔を歪めると地面を蹴った。
迫る魔法攻撃をかわし、目の前の肉壁を切り裂き、闇討ちを狙う銀狼を切り伏せる。
崩れた陣形が波のようにうねりすぐに勇者を取り囲む、弓兵の矢が、エインのこめかみに直撃する。
体勢の崩れたエインの右肩と左足に狼が食いつく、その狼ごと空中を弧を描いて飛来する火炎呪文が焼き払った。
「……ッ」
放射雷撃で周囲から襲ってくる魔物を吹き飛ばしたエインは、前方500メール先に雷撃を放った。
敵の遠距離部隊が一部壊滅する。 しかしすぐに全体が流動しその穴が埋まった。
そのタイミングで、エインは手に持った武器を手放しその手を握りしめた。
瞬間発生する超電磁力。
「超雷磁呪文」
勇者の放つ雷呪文は、正と負の電荷を魔力により操ることがその本質にあり、普段は無意識化で行われるそのメカニズムをエインは把握していた。
エインが招来した武器群に帯電した電子が先ほどの遠方の雷撃に引かれ正負に分離され、エインの詠唱と共に強烈な磁力を放つ。 それぞれの武器が帯びる磁力同士が干渉し合い超強力な磁場となってその場を支配した。
金属製の武具を持った敵が武器エリアに引かれ体ごと吹き飛ぶ。 範囲攻撃を警戒して拡散させていた陣形が裏目となり、その混乱は瞬く間に全体に広がった。
「なっ」
ジュガンは目を見開く、目の前で何が起こっているのか正確に把握できない、こんなことは今までの経験で一度もなかった。
(……面白い)
その後ろでシーキューブは口元を釣り上げた。
混乱する敵を素手で屠りながら、重装備をした魔物が集まり切ったところで、エインは極大雷撃を武器群地帯に叩き落した。
壁部隊、軽装部隊がまとめて吹き飛ばされ、ジュガンの軍コンセプトが破壊される。
もはやここまで場を荒らされてしまっては、残った手駒では抗いようがなかった。




